九州大学大学院農学研究院
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農業生産学(Agriculture Production)ユニット

本ユニットは、作物生産の増大と安定的供給を目指す農業生物資源分野と、病虫害の専門家を集結した植物保護管理分野からなり、時限でプロジェクトオリエンティドの研究を行い、同時に内外の若手研究者の育成を行う。両分野は、現在ベトナム国ハノイ農業大学で進行中の「地球規模課題対応型国際科学技術協力課題[JST-JICA](平成22―27年度):ベトナム北部中山間地に適応した作物品種開発プロジェクト」に集中し、ここで得られた成果をモンスーンアジア引いてはアフリカに波及する。また、ハノイ農業大学に設立した植物育種ならびに作物栽培の実験室および実験圃場は九州大学サテライトラボラトリーとして位置づけ、長期的事業展開を図る。

  • 農業生物資源分野(Agro-biological Resources)

    我が国のイネ科学は基幹作物の育成と実験作物としての利用に貢献してきたが,学術的な成果が必ずしも国際的な実用場面に活かされていないのが現状である。本分野では、多様な社会・自然環境を有するベトナム北部を対象地域として、効率的育種法の確立と自国産の高収量・抵抗性品種の開発を行い、栽培技術体系の確立ならびに新品種の波及・普及までの一貫したシステムを構築し、該当地域の食糧自給率向上を実現するとともに、技術シーズの世界各地の稲作地域への波及を目指す。具体的には、イネゲノム情報を最大限に利用して、有用遺伝子資源の探索・同定、マーカー情報の整備を行い、高速ジェノタイピングによる次世代型イネ育種法を確立する。マーカー情報の整備された有用遺伝子(高収量性、病虫害抵抗性等)については、世代促進と高速ジェノタイピングを併用して有用遺伝子のピラミディングを行い、新品種を迅速に開発する。さらには、ベトナム研究機関と協力して、新品種を基盤とする栽培体系を確立して、新品種の波及・普及を行う。

  • 植物保護管理分野(Plant Protection)

    作物の減収や品質の劣化を招く害虫や植物病原体の防除は主に化学農薬に依存しているが、化学農薬の頻繁な利用は、人や家畜、その他の生物への直接的な悪影響だけでなく、生物濃縮や環境への残留により生態系バランスを破壊する。また、化学農薬の多用は対象病害虫の農薬に対する抵抗性の獲得や、天敵類の減少を引き起こすため対象でない昆虫の害虫化を招くことになる。こうして農薬への依存度を高めてきた歴史への反省がある一方、植物は自身が病害虫に対する化学的、物理的防御を持つだけでなく、天敵や共生微生物などの他の関連生物を利用して病害虫から防御しており、土や他の栽培環境や遺伝要因の改良により病害虫抵抗性が向上する可能性が近年明らかになりつつある。そこで、植物保護管理分野では、生物保護管理学、植物病理学、植物遺伝育種学が連携し、ベトナムのハノイ農業大学、ノンラム大学、カントー大学のスタッフとともに、植物が本来持つ病害虫抵抗能力を最大限に生かしつつ、環境にやさしく、持続的な病害虫防除技術の開発を目指す。現在、ベトナムで行っているココヤシの害虫キムネクロナガハムシをはじめとする侵入害虫の生物的防除、やイネとイネ白葉枯れ病、イネとウンカ等の植物抵抗性と植物病原体や害虫の感受性の分子遺伝学およびそれを応用した病虫害抵抗性品種の作出を継続して行う。また、上記3研究分野の連携による、難防除病害である昆虫が媒介する植物病原体の伝播機構の解明、植物病原体と害虫に対する作物の交差抵抗性の生理的メカニズムの解明、植物―害虫―天敵の3者系において植物が天敵昆虫を誘引する機構の遺伝子解明等を行い、新たなる防除技術の開発を目指す。