平成21年度後期「食品開発学特論」

 22年1月15日(金) 3限目 13:00-14:30  4号館110教室

 川副 剛之 氏 
 キッコーマン株式会社 生産本部在籍 平成食品工業出向 中野台工場工場長


■「調味料業界における開発現場」

 本講義では、講師が、現在関わっている調味料業界における開発の基礎とその現場について講義が行われた。まず、調味料業界の勢力図について説明され、調味料という食品の事業は、食品の味の基本となることから、大きく成長もしないが、衰退することも少ない安定した産業で有ることが示された。さらに調味料の開発には、全く新しい視点での製品開発も有るが、実際には、現在の製品の改良が主体であり、これが主力製品の安定した販売につながり、企業が安定し、新しい事業や新製品開発の研究を推進する土台ともなっていることが示された。食品開発の手順としては、どんな種類の食品でも大きく違いは無いが、コンセプト作成→試作→品質保証→生産試験→製品となるが、この中で製品開発のためには調合を微妙にコントロールする必要が有り、分析技術が重要であること、開発のスピードも要求されることから社内においては、様々な部署との連携を取るために、社内におけるコミュニケーションも重要であることが講師の経験として話された。また、実際に、開発失敗例も示され、基礎研究としては論文発表につながったが、実際には、自社の営業力では販売できる範囲の製品では無かったことや基礎研究に時間がかかり、開発の流れに乗ることができなかったことなどが失敗の原因であったと解説された。新製品の販売には、商品説明などの営業支援も必要となるのでプレゼンテーション能力も開発技術者には重要であること、また、実際に製品化するとなると、コストパフォーマンスが重要で、コストダウンのためには原料の性質だけでなく流通経路など経済学的な知識も必要であることも示された。  本講義の内容は、身近でありながら奥の深い調味料の開発を例として、食品開発の現場を理解させるなど大学の教員ではできない講義内容であり、食品産業界を目指す学生にとって教育効果の高いものであった。

講義風景

講義資料