研究室紹介
「家畜生体機構学」とは?九州大学名誉教授 加藤嘉太郎博士の著書のひとつに家畜の外貌の解剖と生理を扱った「家畜生体機構」があります。本書は養賢堂版=畜産大系・全31編の うちの第2編ですが、 この本の「はじめのことば」において「生体機構」は編集者・鈴木章氏発案の表題で、解剖と生理を統括した名称として紹介されており (1958年12月)、これが「生体機構」という語の最初の出典と思われます。また、同じく加藤博士の著書である「家畜 の解剖と生 理」 (養賢堂)においても、「家畜生体機構」は解剖学と生理学を扱っているものの、両者のいずれでもないという意味を強調したものとして 紹介されており、以後 「家畜生体機構学」という名称が広く用いられています。 家畜生体機構学分野では、現在主に以下のような研究をしています。
詳細は、研究内容のページへ
沿 革
(1) 初代及び第2代教授(大正10年~昭和16年)期
家畜生体機構学分野の前身は、九州帝国大学農学部の創設より2年後の大正10年(1921年)4月、農学科内に新設された畜産学講座で
ある。同年9月、東京帝国大学久保健磨助教授が講座担当の助教授として着任し、実質的な発足をした。久保助教授は大正
11年 (1922年)4月、初代教授
に昇任し、同時に盛岡高等農林学校丹下正治教授を助教授として迎えた。大正12年(1923年)5月、農学部に新たに畜産学第二講座が設立されたことに
伴って、本講座は畜産学第一講座と改称された。なお、丹下助教授は、昭和2年(1927年)5月、新設された畜産学第二
講座(後の畜 産学第一講座)の初代教
授に就任することになった。昭和15年(1940年)3月、久保教授は停年退官となり、同年10月、北京大学農学院教授として出向中であった佐々木清綱助
教授が帰国し、本講座の第2代教授に就任した。この半年間の教授空白期間に講座名の改称が行われ、第一、第二の呼称が逆
転し、本講座 は新たに畜産学第二講
座と呼ばれるに至り、これが平成12年(2000年)の大学院重点化に伴う改組まで60年間続くことになった。佐々木教授は、わずか8ヶ月後の昭和16年
(1941年)6 月、東京帝国大学教授として転出した。
(2) 第3代及び第4代教授(昭和17年~昭和44年)期 佐々木教授の後任として宮崎高等農林学校橋本重郎教授が昭和17年
(1942年)5月、第3代教授に就任した。昭和21年(1946年)9月、橋本教授の下に東京帝国大学加藤嘉太郎助教授が助教授として
着任した。昭和
22年(1947年)11月、橋本教授は、新設の東北大学農学部家畜繁殖学講座(畜産学第一講座)教授として転出した。なお、見上晋一岩
手大学名誉教授は
橋本教授在任中の昭和22年に卒業している。橋本教授の後を受けて昭和23年(1948年)3月、加藤助教授が第4代教授に昇任した。加
藤教授は、家畜解
剖学を専門とするので、家畜飼養学や品種学を講義内容とする助教授として昭和27年(1952年)4月、岡山大学農学部岡本正夫助教授を
迎えた。加藤教授
は在任中、家畜下垂体の機能組織学に関する研究を精力的に行い、その門下から著名な家畜解剖学者を数多く輩出した。例えば、名誉教授に
なった主な門下生と
して石橋武彦(京都大学)、松尾信一(信州大学)、苅田淳(神戸大学)、仙波輝彦(鹿児島大学)、兼松重任(岩手大学)、椎野昌隆(和歌
山県立医科大
学)、高原薺(九州大学)、園田立信(宮崎大学)、岩元久雄(九州大学)の各氏が上げられる。また、家畜解剖学に関する著書も多数執筆
し、中でも「家畜比
較解剖学図説」(養賢堂)は名著として殊に有名であり、畜産学のみならず獣医学教育用の教科書として今日でも広く利用され続けている。昭
和44年 (1969年)3月、加藤教授は、停年退官した。
(3) 第5代~第7代教授(昭和50年~平成19年)期 加藤教授の退官後、しばらく教授不在の時期が続いたが、昭和50年
(1975年)3月、岡本助教授が第5代教授に、同年7月、家畜生体機構学を専門とする高原齊助手が助教授に昇任した。岡本教授は、昭和
55年(1980
年)3月に停年退官した後、近畿大学附属九州短期大学学長として私学教育にも貢献した。なお、尾野喜孝佐賀大学教授は昭和50年、田畑正
志九州大学教授は
昭和54年に卒業している。昭和55年(1980年)8月、高原助教授が第6代教授に昇任した。当時、畜産学科内の教育内容の再編整備が
行われ、昭和42
年(1967年)4月に設置された飼料学講座が、家畜飼養管理学の教育を担当することになったので、これ以降、本講座は家畜解剖学あるい
は家畜生体機構学
に関する教育研究を専念することになった。これに伴い、家畜生体機構学を専門とする岩元久雄助手が昭和56年(1981年)6月、助教授
に昇任した。高原
教授の在任期間中、同講座は骨格筋の組織化学的研究を精力的に行い、その研究業績が高く評価され、平成7年度概算要求項目で、施設整備費
補助金が賦与され
た。ここに共焦点レーザー顕微鏡を中心とする細胞内化学物質定性定量システムの導入が実現することになった。
平成9年(1997年)3月、高原教授は停年退官した。同年4月、岩元助教授が第7代教授に昇任し、平成10年 (1998年)1 月、動 物組織学を専門と する鹿児島大学田畑正志助手が助教授として着任した。また、平成12年(2000年)4月、九州大学の大学院重点化に伴う改組により、畜 産学第二講座の名 称は、家畜生体機構学分野に改称された。岩元教授は、その在任期間中、食肉中のコラーゲン線維の構造的特性を形態学的に解明する研究を中 心として数多くの 研究業績を残した。また同時に、当時としては最新鋭のアルゴンイオン-ガス-レーザー発振方式の共焦点レーザー走査顕微鏡を用いて培養骨 格筋細胞のカルシ ウムイオン-イメージング解析研究が精力的に行われた。 (4) 第8代教授(平成19年~令和3年)期
平成19年(2007年)3月、岩元教授は定年退職し、同年4月、田畑助教授が第8代教
授に昇任した。平成22年(2010年)2月、家畜生体機構学を専門とする西村正太郎助教が准教授に昇任した。その後、田畑教授は平成24年度文部科学
省若手人材育成費補助金及び九州大学テニュアトラック制教員支援事業を得、平成25年(2013年)2
月、安田女子大学川端二功助教がテニュアトラック助教として採用された。一方、細胞内化学物質定性定量システムは平成21年度(2009年度)補正予算に
より機器更新された。この補助金により導
入された主要機器は、共焦点レーザー走査顕微鏡、蛍光倒立顕微鏡、蛍光生物顕微鏡を含む光学顕微鏡システム、トランス・イルミネー
ター、リアルタイム
定量PCRシステム、マイクロ吸光・蛍光光度計を含む分子細胞生物学用システム、顕微鏡用培養装置、超純水製造装置、クリーンベンチを含む組織細
胞培養システム等である。さらに、平成24年度文部科学省若手人材育成費補助金の支援により、パッチクランプ用システム
や生体(呼 気)ガス解析用質量分析
システムを含む動物生理学的解析用研究機器の導入を図り、動物個体を含む組織細胞の機能研究も可能となった。これら数多くの研究機器は研
究室教職員・学生
のみならず、農学研究院の研究者にも広く利用された。また、平成21年度補正予算では、教育用施設整備費補助金も同時に賦与され、高
性能の生物顕微鏡
及び実体顕微鏡を導入し、学生実習に用いられている。平成30年(2018年)8月、川端助教は弘前大学農学生命科学部准教授として転出した。
令和4年(2022年)3月、田畑教授は定年退職した。 [百周年事業 寄稿文より]
(4) 第9代教授(令和4年~)期令和4年10月に鳥取大学農学部共同獣医学科の保坂善真教授が教授に着任した。 Copyright (C)
2014 九州大学大学院農学研究院 資源生物科学部門 動物・海洋生物科学講座 家畜生体機構学分野
All Rights Reserved. |