微生物由来のエンドグリコシダーゼを用いたバイオ医薬品糖タンパク質の糖鎖改変・分析技術の開発

 バイオ医薬品とは哺乳類や微生物などを宿主として、遺伝子工学的手法により生産された組換えタンパク質であり、抗リウマチ薬などの新薬に占める割合は年々増加しています。バイオ医薬品の多くが糖タンパク質であり、その糖鎖構造の不均一性により生じる立体構造変化や非天然型の糖鎖構造による副作用のリスクが潜在しています。そこでバイオ医薬品の糖鎖構造を迅速・安価に構造決定する技術や、糖鎖構造を均一へと改変する技術の開発が望まれています。均一な糖鎖構造を有する糖タンパク質を合成する方法として、 (1)化学合成により糖鎖を付加した糖タンパク質を生産する、(2)合成された糖タンパク質の糖鎖を酵素的にすげ替える、等の方法が検討されています。我々は糖タンパク質の糖鎖をエンド型に遊離するエンド-β-N-アセチルグルコサミニダーゼ(ENGase)に加水分解活性のみならず、糖鎖を転移する活性が存在することを見いだし、本酵素による糖鎖のリモデリングが可能であることを報告しました(Takegawa et al, J Biol Chem 1995)。しかしながらバテクリア由来のENGase (Endo-A)は、マンノースのみからなる高マンノース型糖鎖には作用できるが、ヒトなどの高等動物に普遍的に見られる複合型糖鎖には作用できませんでした。



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 そこで我々はデータベースを検索した結果、キノコ由来のENGase (Endo-CC)が存在することを見つけ、本酵素が複合型糖鎖にも作用&糖鎖転移できることを明らかにしました(Eshima et al, PLOS ONE, 2015)。本酵素を用いてバイオ医薬品などのヘテロな糖鎖構造を持った糖タンパク質を均一糖鎖へとすげ替える技術の確立を目指しています。




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最近の発表論文


Higuchi Y, Mori K, Suyama A, Huang Y, Tashiro K, Kuhara S, Takegawa K:

Draft genome sequence of Bacillus clausii AKU0647, a strain that produces endo-β-N-acetylglucosaminidase A.

Genome Announc. In press (2016)


Eshima Y, Higuchi Y, Kinoshita T, Nakakita S, Takegawa K:

Transglycosylation activity of glycosynthase mutants of endo-β-N-acetylglucosaminidase from Coprinopsis cinerea.

PLOS ONE 10(7):e0132859 (2015)