糸状菌が生産するガラクトフラノース含有糖鎖の生合成および分解に関わる酵素類の解析

 Aspergillus属など一部の糸状菌の糖鎖の末端やガラクトマンナンの側鎖にはガラクトフラノース(Galf)が結合しています。β-D-ガラクトフラノシダーゼ(Galf-ase)はこのGalfのグリコシド結合を加水分解して、遊離させることができる酵素であり、糖鎖中のGalfの機能及び構造解析を行うために重要です。これまで、本酵素は精製に関する報告はあるが、遺伝子の同定までには至ってはいませんでした。そこで我々はGalf-aseを産生する放線菌(Streptomyces属)を単離し、そのゲノム配列を決定して本酵素の同定に成功しました。本酵素はGlycoside Hydrolase Family (GHファミリー)でGH2に属する酵素で、これまで機能未知とされてきた酵素でした。GH2ファミリーに属する本酵素遺伝子のホモログはグラム陽性細菌から、糸状菌まで広く存在することが明らかになり、その機能解析を行なっています。


 これらの研究を通じて、タンパク質のデータベースに存在する機能未知のグリコシダーゼが非常にたくさんあることがわかってきました。そこで我々は、糖鎖構造や機能解析に役立つ可能性のある機能未知のグリコシダーゼの基質特異性を明らかにすることも試みています。




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最近の発表論文


Matsunaga E, Higuchi Y, Mori K, Tashiro K, Kuhara S, Takegawa K:

Draft genome sequence of Streptomyces sp. JHA19, a strain that possesses β-D-galactofuranosidase activity.

Genome Announc. 3(5):e01171-01175 (2015)


Matsunaga E, Higuchi Y, Mori K, Yairo N, Oka T, Shinohara S, Tashiro K, Izumi M, Kuhara S, Takegawa K:

Identification and characterization of a novel galactofuranose-specific β-D-galactofuranosidase from Streptomyces species.

PLOS ONE 10(9):e0137230 (2015)


Komachi Y, Hatakeyama S, Motomatsu H, Futagami T, Kinzjakina K, Sorbado P, Ekino K, Takegawa K, Goto M, Nomura Y, and Oka T:

GfsA encodes a novel galactofuranosyltransferase involved in biosynthesis of galactofuranose antigen of O-glycan in Aspergillus nidulans and A. fumigatus.

Mol Microbiol 90(5), 1054-1073 (2013)