What's New 当研究室での最近の出来事をまとめました。
論文関連
・論文No.2012-8 分裂酵母のスフィンゴ糖脂質の主成分はMIPCで出芽酵母のM(IP)2Cとは異なります。これはMIPCからM(IP)2Cを合成するIpt1という酵素が分裂酵母には存在しないことに起因します。では分裂酵母でこのIpt1を発現させたらどうなるかというのがこの論文です。分裂酵母にIpt1を発現させると確かに分裂酵母でもM(IP)2Cが合成されますが、生育が極度に阻害されてしまいます。このことから分裂酵母にとってM(IP)2Cは毒であり、これを感知して細胞から排除するシステムが存在することを明らかにしました。いちおう中瀬さんがこの研究室で書いた最後の論文になると思います。残していった論文になっていない多くの仕事は後輩たちが引き継いでいきます。(Hudelot-Noellat Nuits-Saint-George 1er Cru - Les Murgers 2004)
・論文No.2012-9 TIGGに分裂酵母のガラクトース糖鎖に関する総説を書きました。TIGGは英語と日本語の両方で総説を書かないといけません。これが意外と大変な作業で、いちおう最初は英語で書いたものを日本語に訳すのですが、日本語が思いつかない表現もあり戸惑っておりました。英語は選択枝が少ないので良いのですが(?)日本語だと例えば[polar head group]って日本語で何や?とか悩む箇所が多くありました。辞書で調べると、「ヘッド基; 頭部基; ヘッドグループ; 頭頂基; 先端基; 先頭基; 頭状基; 頭基」とあり、訳のわからないことに・・。なかなか日本語で書く論文は難しいです。(Chateau Beauregard 2004)
・論文No.2012-10 分裂酵母はグリセロールを唯一の炭素源として生育できません。しかしグリセロールに少量のエタノールを添加すると生育できることは古くから知られており、グリエタ培地と呼ばれています。そこでグリセロール代謝の最初の遺伝子であるgld1+遺伝子(論文No.2010-12)の発現に着目して研究を行いました。その結果、gld1+遺伝子はエタノールの添加により劇的に発現誘導することがわかりました。興味深いことにgld1+遺伝子はエタノールだけでなく、1-プロパノールにも誘導されることがわかり、これらの化合物を認識するセンサーが存在することが示唆される結果となりました。メタノール資化性酵母がなぜメタノールに誘導されるのかも実は詳細は不明であり、分裂酵母のエタノール/プロパノール誘導機構も大変興味深いものです(分裂酵母gld1+はメタノールには誘導されません)。なぜ分裂酵母はグリエタ培地に生育できるのかという古くからの疑問の一端を明らかにできたと思っています。(Chateau Haut-Carles 2001)
・論文No.2012-14 分裂酵母の糖鎖には出芽酵母とは異なり、大量のガラクトースが付加される。これまでの私達の研究で分裂酵母のα1,2-ガラクトース転移酵素が分裂酵母ゲノムに7つ存在することを報告している(論文2011-2)。しかし7つの遺伝子全てを破壊した株でまだガラクトースが付加されていることがわかった。そこで分裂酵母ゲノムを検索したところ、まだ機能未知な糖転移酵素が3つ見つかったので、今回はα1,2-ガラクトース転移酵素7つとこの遺伝子3つを破壊した10重破壊株(!)を破壊したところ、全てのガラクトース付加が消失したことを証明した。この結果からこれら3つの遺伝子が新規なα1,3-ガラクトース転移酵素をコードしていることを明らかにすることができた。今年ついにインパクトファクターが5を割ってしまったJBC(2011年度4.773)に酵母合同シンポジウムで話しをしたその日にアクセプトになり本当に嬉しかったです。大橋君おめでとうございます(Vosne-Romanee Les Hautes Mauzieres Domaine Robert Arnoux 2001)。
・論文No2013-2 分裂酵母が構成的に凝集する変異株gsf1の研究を行なっている過程で、たまたま島根大学の川向先生の取得されたsam2という変異株の原因遺伝子がgsf1遺伝子と同じことがわかり、共同研究として論文を書きました。なんとかFEMS Yeast Resにアクセプトされることができました。松沢君もいよいよ3月で研究室を離れますので、それまでにできるだけ多くの仕事をまとめて卒業して欲しいと思っています。アクセプトされたお礼に松沢君には実家の愛知、香川と福岡のスーパーで買ったカップ麺約70個をプレゼントしました(笑)(Chateau Gloria 2006)。
・論文No2013-3 修士2年の頼経君の書いた分裂酵母のピルビン酸転移酵素Pvg1に関する論文がFEBS Lettersにアクセプトになりました。修士学生の仕事で論文を私が書いて投稿することはあっても、学生本人が書いて投稿するというのは、最近の就職活動に追われる修士課程の学生さんでは時間的にきわめてまれで、彼がいかに優秀であったかを示しています。頼経君の仕事ぶりは極めて「B型」的な進め方で、良く興味深い実験結果を持ってくるので私が「なんでこの実験したの?」と聞き返す場面が多いです。この刺激こそが私が「B型」的な人(主に血液型B型とAB型の人に多いですが、必ずしも血液型がそうだとは限りません)と研究をするのが楽しみな理由です。でも彼が上司だったらいやかな(笑)。残念ながら頼経君は就職してしまいますが、まだまだ彼の残した面白い結果はありますので、これからPvg1に関する論文を頑張って書きたいと思っています(Caymus Vineyards Cabernet Sauvignon 2010)。
・論文No2013-5 分裂酵母のgld1+遺伝子の発現はエタノールや1-プロパノールで誘導されることを前の論文で松沢君は見つけていました(論文No.2012-10)。そこでこのプロモーター領域を利用して新しい分裂酵母の発現ベクターの構築ができないかと検討したのがこの論文です。結果としては、大変良い発現系ができたのではないかと思っています。分裂酵母で最も良く利用されているプラスミドはpREPというチアミン誘導型のものですが、発現に12時間以上かかるのが最も大きな問題点でした。それが今回のgld1プロモータープラスミドでは発現までに30分以内という大変早い時間に誘導可能です。今後、皆さんに使ってもらおうと思っています。この論文が松沢君の九大での最後の論文になります。本当にお疲れ様でした。また楽しく研究ができて感謝しています。ありがとうございました(Bianco Breg Anfora Gravner 2002)。
・論文No2013-6 分裂酵母の遺伝子を生育や物質生産能を落とさないで削除してやろうと試みた結果に関する論文がNucleic Acid Researchにアクセプトになりました。大腸菌などの原核生物とは違い、必須遺伝子が隙間なく続いている分裂酵母で大規模に遺伝子を削除するというのは至難の業で、本論文では第1および第2染色体の末端領域を約200キロほど削除しました。大変な作業を丁寧にこなしていった佐々木さんの努力の成果が実った論文だと思います。佐々木さん、おめでとうございます!
学会関連
・2012年9月 9月4日から7日まで京都大学の宇治キャンパスで酵母遺伝学フォーラム及び酵母合同シンポジウムが開催され、竹川・松沢・頼経・富永で宇治に行ってきました。今回は本当に多くの人と話をすることができ、有意義な学会でした。特に酵母合同シンポジウムは素晴らしい内容で本当に素晴らしいプログラムでした。阪井先生はじめ運営委員の先生に感謝します。竹川はシンポジウムの最後のセッションで話しをしましたが、質疑応答で柳田先生に面白いと言われて舞い上がってしまいました。数年前の酵母合同シンポジウムでは私の発表の時に寝ておられましたから、今回はちゃんと聞いてもらおうと必死で発表したかいがありました(演者の方からはよく見える)。シンポジウムの帰りの電車で柳田先生と一緒でしたので、これまでの先生への思いを正直に話して20年間もやもやしたものが晴れて本当にすっきりしました。それだけでも貴重な体験でした。
・2012月9月 9月17日から鹿児島で開催された糖質学会に竹川が参加して来ました。また1年振りに会う先生も多く、色々と情報交換をして来ました。ここで書いておきますが、酵母合同シンポから糖質シンポまでで100人くらいに聞かれましたが私は病気ではないですので(笑)。前回鹿児島で糖質シンポジウムが行われ参加したのは第16回(1994年)ですので、なんと18年前ということになります。その時はアメリカから帰国したてでエンドグリコシダーゼの転移について発表しました。珍しく門脇さんも糖質シンポに参加され、手元に山本先生と門脇さんと桜島で一緒に撮った写真があり懐かしいです。しかし新幹線が開通してからは博多ー鹿児島間は1時間半ほどですので、本当にあっという間に鹿児島に行けるので驚きです。
・2012年9月 27日からまた鹿児島で開催された農芸化学会の支部大会に行ってきました。今回は4年生全員初めて発表しました。伊東信先生からあなたの研究室の卒論中間発表を聞いているようだった、と言われてしまいました。申し訳ありません。29日の一般講演の時にはちょうど台風が通過するところで先週の糖質学会の時も台風が来ており、たぶん伊東先生が台風を呼んでいるのではないかと思われます(再現性あり)。これからもどんどん発表できるように頑張って欲しいです。
・2012年11月 16日から17日に山口で開催された第30回イーストワークショップに参加しました。今回は3年生も参加して当研究室から12題のポスター発表を行いました。学部学生の部で当研究室の落石君が最優秀ポスター賞を受賞することができました。おめでとうございます。
・2012年12月 1日に別府大学で開催された第19回日本生物工学会九州支部大分大会に参加しました。当研究室からは修士2年の5人と博士の松沢君が発表を行いました。幸い博士課程の部で松沢君が優秀賞を獲得することができました。松沢君おめでとうございます。
・2013年1月 香川で開催されたかがわ糖質バイオフォーラム、複合糖質・糖鎖研究会で発表を行いました。香川大学から福岡へ移って5年目になりますが、なんとか香川県のお役に立てればといつも思っています。研究会の後で基調講演をしていただいた水産大学の高橋先生と飲む機会があり、色々と勉強になりました。研究会を主催していただいた自然免疫応用技研の杣先生、稲川さん、河内さんには感謝いたします。
・2013年1月 農芸化学会の西日本支部例会が九州大学であり、当研究室博士学生の松沢君が支部奨励賞(学生)に選ばれ表彰式と受賞講演を行いました。先月の生物工学会についで賞をいただき、本当にうれしく思っています。松沢君本当に良かったね。
その他
・論文がアクセプトされたらお祝いにお酒を飲む、というのはモチベーションを高めるのに効果的ですよね(最近はいつも飲んでますけど・・)。論文の内容、アクセプトされたジャーナル、誰の仕事かなどをふまえて、どのお酒を飲むのか考えるのが楽しみです。これから飲んだお酒も一緒に載せておこうと思います。
・2012年6月 徳島大学の疾患プロテオゲノム研究センターの片桐先生が乳がんに関する研究について話しをしていただきました。乳がんの基礎的な知識から最新の知見まで、本当に興味深い内容でした。後の飲み会では寝てしまい、片桐さんすいませんでした。
・2012年7月 研究室旅行で長崎に行ってきました。今年のハイライトは軍艦島を訪れたことです。軍艦島はその名の通り、軍艦のような形を島全体がしているのですが、1975年以降は無人島となっています。現在世界遺産の登録を目指しているようで島に着く前の説明が大変長く、私はその時点で船酔いしておりました(涙)。天候に恵まれた(?)こともあり、本当に暑い中での旅行でした。いよいよ4年生は大学院の試験勉強に入ります。頑張って欲しいものです。
・2012年8月 福岡県酒造組合の主催で「福岡県酒類鑑評会」の審査員として久留米に行って来ました。一日目は清酒、二日目は焼酎の市販酒について利き酒をして金賞と知事賞の選考を行いました。清酒ではすごく気に入ったお酒もあり、最後に思わず飲んでしまいました(笑)。焼酎の方は中には40度を超えるアルコールのものもあり、利くのが大変でした。完全ブラインドでの鑑評会でしたので、現時点ではどのお酒が受賞したかはわかりません。9月6日にホテルオークラで受賞したお酒のお披露目があるのですが、私は残念ながら酵母合同シンポジウムで出席することができません。おそらく新聞報道もされると思いますので、さっそく購入してみます。
・2012年8月 8月20日から22日まで大学院の試験がありました。今年は九大農学部内部の学生が7名、学外の学生が3名の計10名が発酵化学研究室を志望しました。今年は割りと早く9月上旬に結果がわかるので、どきどきしています。試験後はダメだという学生もいれば大丈夫でしょうという学生もおり、大変興味深いです。私は最近何事も悲観的に捉える傾向があるので楽観的な学生さんにあやかりたいものです。
・2012年9月 4日に大学院の合格発表がありました。今年は枠いっぱいの8名が合格しました(学内7名、学外1名)。本当に、本当に嬉しかったです。これからもよろしく!
・2012年10月 新しい3年生が研究室にやってきました。今年は少なめで3名の男子です。早く研究室に馴染んで実験をできるようになってくれれば幸いです。
・2012年10月 13日の土曜日に発酵化学研究室のセミナーとOB会を開催いたしました。当日は関東や中部などからも卒業生が参加され、大変楽しい懇親会を行うことができました。多くの出席者から毎年開催して欲しいとの要望がありましたので、ぜひ卒業生が集まる会を企画させていただきます。現在の学生さんも大変刺激を受けたようで何よりです。

・2012年10月 19日に福岡国税局および酒造組合の主催する「お酒の講座」を開催しました。今回の講師は昨年に引き続き喜多屋の木下社長に担当していただきました。事前の打ち合わせの際に、お酒造りについて詳しくお話下さい、とお願いしたこともあり、今回は本当に麹造りがいかに酒質に影響を及ぼすのかよく理解できました。学生さんにも木下さんの酒造りに対する熱意が伝わったのではないかと思っています。木下さん、ありがとうございました。
・2012年2月 1日に松沢君の博士学生請求講演会を行いました。後は教授会待ちですが、無事に博士の学位を出すことができてホッとしています。結果的に松沢君は卒業するまでに15報の学術論文を出すことができそう(今14報)です。その内、彼がファーストオーサーなのが12報という驚異的な数の論文を仕上げたことになります。修士・学部の学生さんの面倒も見てくれて本当に助かりました。研究室にとっては彼が4月から産総研に行くのは本当に残念ですが、沈みそうな船の船長は皆に外で生き残ってもらうことを強く願うばかりです。Sauve qui puet!!
・2012年2月 14日ー15日に修士論文発表会がありました。当研究室の5名の学生が発表を行いました。皆大きな問題もなく発表を終えることができ、安心しました。残り少ない研究室での生活ですが、しっかりと実験をまとめて卒業してくれればと思っています。お疲れ様でした。
・2012年2月 28日の卒業論文発表会がありました。当研究室の6名の学生が発表を行い、なんとなく(?)質問にも答えることができました。今年の学生さんは全員大学院に進学しますので、大学院では自主的に研究を進めていくことを願っています。
・ 2013年3月 当研究室の博士学生の松沢君と修士学生の頼経君が平成24年度の生物資源環境科学府賞を受賞することができました!!彼らの実験の進め方や時間の使い方は研究室の学生さんに大変に刺激になったと思います。後輩たちもぜひ頑張って下さいね!
・2013年3月 26日に卒業式がありました。今年の修士2年の学生さんは私が九大に移ってから初めてのクラス主任だったこともあり、実地見学などに一緒に行ったり本当に仲良く過ごしました。彼らが卒業してしまうのが本当に寂しく、今はどよ〜んとしています。また4月になれば新しい学生さんが入ってきて元気が出ると思います。