センターについて

(トピック)R5年度概算要求におけるミッション:昆虫食科学分野と昆虫DX分野の新設

昆虫科学・新産業創生研究センター(Insect Science and Creative Entomology Center)は九州大学の昆虫科学を統合し、新たな「知」の創造により、現代社会が抱える生物多様性の喪失や昆虫媒介感染症の拡大に向き合うべく平成30年4月に開設されました。
特に、現代社会が抱える、昆虫に関する3つの大きな問題
地球規模の生物多様性の喪失に、科学的な根拠を基盤に対応できる学術基盤の欠如
新興感染症を含む昆虫媒介感染症に取り組む人材、教育システムの枯渇
大学発の独創的な昆虫技術シーズの効率的な産業化・社会還元システムの不備
を解決すべく、本センターに昆虫分類環境・衛生昆虫学新産業創生の3ユニットを設置しました。
これらの研究を基盤として生物多様性の根幹を成す昆虫相の分類学の高度化と異分野融合による複合化を推進し、地球生態系の構造と機能を包括的に理解し、その一員としての人類の幸福に貢献できる世界的な研究教育拠点の構築を目的としています。

昆虫分類ユニット
九州大学では、長い歴史の中で一貫して昆虫分類学の研究を行っており、その過程で蓄積された昆虫標本の収蔵数はアジア最大級です。本ユニットは、環境ゲノム・生物多様性ゲノム解析を可能とする昆虫バイオインフォマティクス分野を含み、これまでの形態に基づく分類・同定とDNAバーコーディングや膨大な塩基配列情報などの情報基盤を融合した昆虫分類学の高度化を推し進めています。またビッグデータの活用と情報検索サービスの整備により、多検体解析が可能な多様な昆虫種の同定技術の開発や、標本に付随する昆虫生物相の現在・過去・未来の情報を抽出し、昆虫が関わる諸問題の診断などを行います。
 
【研究内容】
・形態・分子情報に基づく昆虫の分類と生物多様性解明
・標本データの効率的抽出法の確立による昆虫コレクションの高付加価値化
・昆虫標本に付随する新たなリソースの発掘

環境・衛生昆虫学ユニット
戦後我が国では公衆衛生環境の向上とともに衛生害虫による被害が減少してきました。一方、近年ではインバウンドの促進や温暖化の影響を受け、様々な外来生物・病原体の侵入とそれらの国内定着・生息域の拡大が進んできており、新たな問題に直面しています。とりわけデング熱やSFTSなど、蚊やマダニなどの吸血性節足動物が媒介する新興・再興感染症は顕著にそのリスクが顕在化しており、課題解決が急務です。本ユニットは衛生昆虫類がもたらす諸問題について、新規病原体の分離と同定、媒介昆虫ならびに病原体の機能解析、衛生害虫の防除法の確立を目指して研究を行っています。

【研究内容】
・衛生昆虫媒介性ウイルスの探索と分離
・衛生昆虫ならびに保有ウイルスの機能解析
・衛生昆虫の効果的防除法の開発

新産業創生ユニット
九州大学で100年近くにわたって収集し維持し続けてきた世界最高水準のカイコのバイオリソースを基に、昆虫工場によるバイオマテリアル生産技術に基づく産業タンパク質の高度利用と昆虫生物資源の産業利用に関する研究を行なっています。本ユニットはまた、経・工・医・薬と農の異分野融合・産学連携拠点を目指し、センターで実施されている様々な昆虫の研究を基に開発された科学技術の社会実装・商業化の促進を担っています。

【研究内容】
・昆虫工場を利用した有用物質の生産のための技術開発
・バイオリソースとしてのカイコの系統整備と体系的育種
・センターで開発された昆虫科学技術の社会実装、商業化の促進