前川 裕美Hiromi MAEKAWA
講師/農学研究院附属国際農業教育・研究推進センター 教育ユニット
前川 裕美Hiromi MAEKAWA
講師/農学研究院附属国際農業教育・研究推進センター 教育ユニット
真核微生物の中でも酵母は、アルコール発酵を利用した酒類やパンなどの製造や物質生産などで産業的に有用な微生物です。同時に、真核生物のモデルとして、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeと分裂酵母Schizosaccharomyces pombeを中心に研究が進められ、細胞周期や蛋白質輸送などの様々な生命現象の解明に大きく貢献してきました。一方、酵母は少なくとも1000種以上存在しており、系統的に離れた種を対象にした研究から、様々な酵母種の特徴や進化の理解が深まると期待できます。
当グループはSaccharomyces cerevisiaeとは進化的距離があるメタノール資化酵母Ogataea polymorphaを研究対象として、細胞分裂や有性生殖をコントロールする分子機構を明らかにする研究を行なっています。
出芽酵母S. cerevisiaeは栄養増殖中に2つの接合型(a型、α 型)を変換する分子機構を持っており、接合型変換により生じたa型とα型細胞間で接合するため通常二倍体です。このように、同じ株の細胞間で接合できる性質はホモタリズムと呼ばれ、一部の酵母に見られます。O. polymorphaもホモタリックですが、通常は一倍体で栄養増殖し、栄養飢餓下でのみ接合し、続けて胞子形成を行います。私達は、O. polymorphaの生活環の制御の研究を行い、この酵母は栄養増殖中は同じ接合型を維持するが、栄養飢餓になるとFlip-flop型の新しい分子機構を用いて接合型を変換することを明らかにしました。このFlip-flop型と呼ばれる接合型変換の分子機構を明らかにしようとしています。
酵母の細胞分裂では、動物における中心体と機能的に相同な細胞内構造であるスピンドル極体(Spindle Pole Body, SPB)が主な微小管形成の中心であり、間期において細胞核の配置を決めたり、分裂期において細胞核を娘細胞へ分配する役割を果たしています。また、SPBには分裂期進行を制御するシグナル伝達因子が集まっており、細胞周期制御にも重要です。私たちは、O. polymorphaでは、SPBの複製サイクルが特徴的な制御を受けており、間期の細胞質では微小管形成が少ないことを明らかにしました。現在は、O. polymorphaのSPBサイクルの特徴が、分裂期進行の制御に影響しているかを明らかにする研究を行なっています。
講師
前川 裕美MAEKAWA Hiromi
九州大学 農学研究院 真核細胞微生物学研究室
〒819-0395
福岡市西区元岡744ウエスト5号館680号室