九州大学大学院農学研究院
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改革計画の実施内容

農学研究院の中期計画には、研究面では、「知財との連携、地域の研究機関との連携はほぼ達成されているが、国際的な連携が今後は重要である。」とし、具体的には、「アジアや国内の研究機関との学術研究交流を推進し、産学官共同研究を介して研究成果の社会還元を図る。」を挙げている。また、教育の国際化に関しては、「国際プログラム・プロジェクト等への積極的な参画や現地体験型教育等の実施により、学生の国際交流を推進する。」ことを実施目標としている。
九州大学大学院農学研究院および熱帯農学研究センターでは、過去20年近くにわたり、アジアを中心とした国際化を推進する教育・研究の取り組みを行ってきた(図1参照)。

図1 九州大学農学研究院とASEAN諸国との国際協力

とりわけ、東南アジア(ASEAN)の多くの大学とは結びつきが強く、外国人留学生のための「九州大学大学院生物資源環境科学府国際開発研究特別コース(以下、特別コース)」は、平成6年に開設され、17年間の歴史を持ち、すでに修士課程、博士後期課程合計、199名の修了者を世界に輩出し、最近5年間の外国人留学生のうち、ASEANからの留学生は、修士課程で平均63%、博士後期課程で平均34%を占める。ASEANの中でも、ベトナムからの留学生が最も多く、特別コースに入学した外国人留学生中、ベトナムからの留学生は最近5年間で、修士課程の30.4%、博士後期課程の11.1%を占める。研究面においても、ベトナムとの共同・協力研究は研究室レベルも含めて非常に盛んで、ベトナムへの農学研究院教員の派遣回数は、過去5年間で合計77件にのぼる。特に、現在進行中のビッグプロジェクトとしては、地球規模課題対応国際科学技術協力事業「ベトナム北部中山間地域の作物開発」(平成22―27年度、JST-JICA)、アジア・アフリカ学術基盤形成事業「東南アジア新興国流域圏における水環境統合管理ツール」(平成24―26年度、JSPS)等がある。
人類が直面する地球規模の課題には、「90〜100億の人口を支える食糧生産を行いながら地球生態系を維持すること」、「貧困の緩和」、「平和と安全の強化」、「開発途上国と先進国の双方における人類の健康の増進」等が挙げられ、これらは農学系と深く関わる課題で、農学系に対する期待は重要かつ多様なものとなっている。これらの地球規模諸課題解決に対する大学が果たす役割としては、「これらの問題を解決する方法の探求」と「長期的な展望のもとに相互互恵の立場から国際標準や国際的なルール作りを主導できるリーダー育成」が重要であり、さらには、今日の地球規模で複雑な問題を解決するためには、大学には「より協同的で国際的かつ学際的なアプローチ」が、農学系の個々には「知識の境界を押し広げる努力」が要求される。
国際派の指導的な専門家を養成するためには、実践的なグローバル教育を追及すべきで、、コミュニケーションを通して行う実体験の教育の場を整備充実し、地球をキャンパスとした大学院教育を展開することが求められる。このような実体験型の農学国際教育は、外国の多くの農学系大学では実践されており、その成果は国際理解力のみならず自国の農業や農学を見直し改善する能力を育てることにもなっている。

このような背景を踏まえ、より一層の実践的なグローバル教育・研究の活性化を推進するために、次の3つの活性化改革を実施する。

  1. 農学研究院の附属施設として、国際農業教育・研究推進機構を設置する。詳細
    機構内の組織は、①農業生産学(Agriculture Production)ユニット、②熱帯微生物学(Tropical Microbiology)ユニット、③生産基盤環境保全(Agro-production and Environmental Conservation)ユニット、④農業農村開発経済学(Agricultural and Rural Development Economics)ユニット、⑤国際交流推進(International Relations)ユニットの構成とする。
  2. 熱帯農学研究センターの内部組織を、現在の2部門から、熱帯作物・環境部門、地水・環境保全部門、国際開発部門の3部門とし、一部の教員は、上記機構の生産基盤環境保全ユニット、農業農村開発経済学ユニットと国際交流推進ユニットに参画する。詳細
  3. 機構を中心としたアグリバイオグローバル教育・研究の強化、推進のために、海外サテライトキャンパスを学術交流協定等を締結しているASEANの大学内に設置する。その第一弾として、ベトナム・ハノイ農業大学内に九州大学大学院農学研究院ベトナムサテライトキャンパスを設置する。詳細

以上、上記1~3の改革構想の全体像は、図3のようにまとめられる。

図3 実践的なグローバル教育・研究の活性化を推進するための農学研究院、熱帯農学研究センター活性化改革構想