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家畜・家禽 の腺性下垂体に関する研究

 下垂体は動物の成長、繁殖、恒常性の維持などに関わる様々なホルモンを生産/分泌する重要な内分泌器官の一つ です。胚発生期に口蓋上皮の陥入によって生 じるラトケ嚢に由来する腺性下垂体には、ホルモンがパッケージングされた分泌顆粒を持つホルモン分泌細胞の他に 分泌顆粒を持たない細胞が存在しており、そ れらの細胞は形態学的な特徴から濾胞星状細胞(FS細胞)と呼ばれています(Vila-Porcile, 1972)。この細胞の特徴として、多くの動物種でS100タンパク質に免疫陽性反応を示すことが知られて お り、FS細胞を同定する際には多くの場合 S100タンパク質が特異的なマーカーとして用いられています。しかし、全ての動物種においてS100タンパク 質がFS細胞の汎用的なマーカーとして有効 なわけではなく、一部の動物ではS100タンパク質がFS細胞ではなく内分泌細胞に対し陽性反応を示したり、 MHCクラスII分子やGFAP、ケラチンな どのタンパク質との共発現を示すFS細胞の存在も報告されています。

 S100タンパク質は最初ウシの脳組織より分離されたタンパク質であるため、神経由来の細胞に発現するタ ンパ ク質であることが予想されますが、S100タンパク質以外のタンパク質を発現するFS細胞の存在はその細胞の起 源に関する考察を複雑なものにしています。

 当研究室におけるニワトリの腺性下垂体を用いたこれまでの研究により、ニワトリのFS細胞ではS100タンパ ク質よりもサイトケラチンがより有効なマー カーとして利用できることを見出しました。FS細胞の役割については実験動物を用いた研究により多くの事例が報 告されてきましたが、鳥類における研究は極 めて少ない状況です。当研究室ではニワトリをモデル動物として鳥類の腺性下垂体FS細胞の機能について検討を行 うことで、この細胞の役割や進化的な位置付けを明らかにすることを目指しています。

FS細胞のレーザー顕微鏡写真

ニワトリ腺性下垂体のパラフィン切片において蛍光二重免疫染色を行ったサイトケラチン陽性FS細胞 (赤)と基底膜成分であるラミニン(緑)の三次元構築像.黄色は両者の共発現部位を示す.


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