第29回日本歯科薬物療法学会

「フコイダンによる口腔白板症および口腔扁平苔癬の治療経験」

第29回日本歯科薬物療法学会

【目的】
フコイダンは褐藻類フコース硫酸含有多糖であり、血管凝固阻止作用、抗高脂血症、抗癌作用、抗アレルギー作用などの生理活性を持つことが報告されている。特に抗癌性機能食品のひとつとして癌の補完代替医療において注目されており、培養正常細胞には毒性を示さず、癌細胞に特異的にアポトーシスを誘導すること、腫瘍免疫の活性化を誘導するといった基礎的な報告がなされている。一方、白板症、扁平苔癬などの前癌病変、前癌状態に対する効果については、報告をみない。今回我々は、口腔白板症、口腔扁平苔癬を対象として、フコイダン摂取による治療効果についての検討を行ったのでその効果について報告する。

【方法】
2008年9月から2009年1月まで昭和大学歯科病院口腔外科を受診した口腔白板症、口腔扁平苔癬のうち、通常行われるステロイド軟膏塗布による治療を行い、奏功しない病例に対し、研究の趣旨、治療法とその効果について十分説明した上で、同意が得られた20症例を対象とした。フコイダンの投与法は、120mg/dayを30日間投与し、病変の大きさや形の変化をみると共に、「食べ物がしみる」「痛い」「違和感がある」などの症状の変化を観察した。

【結果】
性別は男性4名、女性16名、年齢は44才~84才で平均68.9才であった。疾患別には口腔白板症5名、口腔扁平苔癬15名で、投与後に確認した臨床症状において接触痛の減少や病変の縮小、白斑の薄化を認めた症例は9例、そのうち1例は右頬粘膜の白斑消失を認め、1例では発赤および接触痛の消失を認めた。全例での治療効果判定は著効2例(10%)、有効7例(35%)、無効11例(55%)で有効率45%であった。白斑消失を認めた1例に関しては、フコイダン投与を1ヶ月行ったのち、定期的に外来で経過観察を行っているが症状の再発は認めていない。

【考察】
フコイダン内服が、難治性粘膜疾患20症例中、9症例に効果を示したことで、前癌病変、前癌状態への新しい補完代替医療になる可能性が示唆された。

※昭和大学歯学部 顎口腔疾患制御外科学教室の研究結果です。

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