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複合毒性 (化学物質)

Combined toxicities of chemicals

化学物質の複合毒性に関するニュース

人工化学物質の薄い混合スープの中で生きる水生生物の未来
-複合毒性の生態リスク評価の必要性- 大嶋雄治 (九大院農)

 化学物質の生態系への影響評価は十分だろうか?: 現在、私たちは1万を超える種類の化学物質を日常的に使い生活しているが、快適で効率的な近代生活は化学物質によって支えられていると言っても過言ではない。しかし、使い終わった化学物質は分解しながらも環境中に流れ出し、川から海に到達して底質に蓄積している。事実、水環境中から重金属、有機金属、POPs、内分泌かく乱物質、界面活性剤、人工香料、フッ素系脂肪酸、医薬品等様々な物質が検出されており、水生生物は複合的に暴露されている。Wormら1)は水圏における生物種数は減少し続けており21世紀半ばには漁業が成り立たなくなると予測しているが、その原因として乱獲、環境破壊そして化学物質による汚染の影響をあげている。

 化学物質はほぼ相加的もしくはそれ以上の複合毒性を発現する: 化学物質の影響は単独の毒性で評価すれば十分評価できるのであろうか? Deneerら2)は49種類の化学物質についてオオミジンコ(Daphnia magna)に対するEC50を調べ、その1/400の濃度で49種を混合すると、相加的に作用してほぼEC50の1/8の毒性値を示すことを証明した。我々はメダカ胚—ナノインジェクション法を用いて3種医薬品等(ジクロフェナック、トリクロサン、カルバマゼピン)が相加的に毒性を発現することを証明している。

 さらに、我々はオオミジンコを用いて3種類の農薬(ダイアジノン、フェニトロチオン、ベンチオカーブ)について、1/5EC50、2/5EC50、4/5EC50の濃度を組み合わせて合計64通りの暴露試験を3回繰り返し行った。その結果をモデル解析した結果、ダイアジノン−フェニトロチオン、ダイアジノン−ベンチオカーブ、および3種の複合では相乗的に、しかしフェニトロチオン−ベンチオカーブ複合では拮抗的に作用することを示した (Tanoue, 投稿準備中)。またメダカ胚—ナノインジェクション法を用いてTBTとPCBsの複合毒性の最小作用濃度(LOEC)を調べた。その結果TBT単独では胚発生時に奇形を起こすLOECは160 pg/eggであり、PCBsでは250 pg/ eggの投与でも胚発生に影響は認められなかった。しかし、奇形を引き起こすLOECは7.5+15 pg-TBT+PCBs/ eggと劇的に毒性が高まることを明らかにした(Kim, 投稿準備中)。この様に複数の化学物質と混合すれば、ほとんどの場合相加的もしくはそれ以上に毒性が強まることが数々の研究で証明されている。

 生態系における化学物質の複合リスクはどのくらいか?: 以上述べたように化学物質の低濃度域における複合作用は明らかであり、ほとんどの場合相加的もしくはそれ以上に作用すると考えられる。しかしその水圏生態系への影響評価と対策は殆どなされていない。現在、化学物質の生態リスクが最大無影響濃度(NOEC)/予想環境濃度(PEC)の値が1を超えた場合、その影響が推測される。それでは生態系に対する複合毒性のリスクはどの位だろうか。試みに化学物質約200種の環境リスク初期評価の結果 (http://wwwsoc.nii.ac.jp/jec/ecinfo/risuku.htm)をもとに、公共水域(淡水域)について化学物質が相加的に作用すると仮定してNOEC/PEC値の総和を求めてみた。その結果NOEC/PEC値の総和は農薬を除くと253以上(農薬を含むと56,678以上)となった。この値から単純に結論を下すことはできないが水生態系に対する化学物質の複合毒性のリスクは相当に高いと予見される。

 水生態系の未来:新規化学物質は今後も増え続けると予想され、水生生物が低濃度ではあるが多様な化学物質を含んだ薄い混合スープの中で生きて行かねばならないことは想像に難くない。しかし水圏生態系への複合毒性のリスクを評価しないかぎりWormら1)の予想はより現実のものとなるかもしれない。今、化学物質の複合毒性を考慮した新しい取り組みが必要である。

1) Worm et al (2005) Science 314:787-790 2) Deneer et al (1988) Aquat Toxicol 12:33-38.

抗生物質12種類の藻類 (セレナストラム) の成長に対する複合毒性を調べた論文

用いた抗生物質の単独の毒性は triclosan (0.0018) > triclocarban (0.054) > roxithromycin (0.056) > clarithromycin (0.062) > tylosin (0.20) > tetracycline (2.25) > chlortetracycline (3.49) > norfloxacin (5.64) > sulfamethoxazole (7.50) > ciprofloxacin (20.22)> sulfamethazine (31.26) > trimethoprim (137.78 uM)であった。

2種の混合(binary)試験では1例(Triclocarban + norfloxacin )だけantagonisticであり、他はadditive もしくはsynergisticであった。また、12種類全ての混合物で総合毒性が0.2 Toxic Unit (1 Toxic unit = EC50)で有意な成長阻害が見られたという結果でした。現場では2種以上の混合ですので、それをどの様に評価してゆくか。TEQを拡大した全ての化学物質の総合毒性値を導入すべきだと私は思います。

Yang, L.H., Ying, G.G., Su, H.C., Stauber, J.L., Adams, M.S., Binet, M.T., 2008. Growth-inhibiting effects of 12 antibacterial agents and their mixtures on the freshwater microalga Pseudokirchneriella subcapitata. Environmental toxicology and chemistry / SETAC 27, 1201-1208.

複合毒性を大腸菌レポータージーンアッセイで評価した論文

14種のストレスプロモーターーbeta galactosidaseを組み込んだ大腸菌を作成し、それにDNA damage Oxidative stress, Oxidative stress–Heavy metal toxicity , Oxidative stress–Energy depletion の作用を示す種々の薬剤を単独またはbinaryで暴露して、その発現変動をモデル解析したものです。その結果、CA(concentration additive)、IA(indivpendent action)その他のモデルに帰結された。というものだと思います。つまり、遺伝子レベルでも複合作用は明らかである。しかしその統一的モデル化は困難だと読み取りました。

なおイントロの以下の部分は涙が出そうになりました。
"Real-life exposure scenarios of ecosystems and humans to toxicants almost exclusively involve mixtures of chemicals. Nonetheless, until recently, traditional ecotoxicology has concentrated on obtaining a better understanding of the mechanisms underlying the bioavailability of single compounds and their toxic effects on organismsin the mixture."

Dardenne, F., Nobels, I., De Coen, W., Blust, R., 2008. Mixture toxicity and gene inductions: can we predict the outcome? Environmental toxicology and chemistry / SETAC 27, 509-518.

複合毒性のリスク評価を毒性当量と結合させた方法 The probabilistic ecological risk assessment-toxicequivalent (PERA-TE) combination approach で行った研究

2種類(作用が同じ農薬、作用が異なる農薬)をミジンコに対して複合暴露しています。その結果、作用が同じ農薬および作用が異なる農薬の複合暴露は相加的であったと結論しています。また本方法は作用の異なる農薬の複合暴露の相互作用を証明するのに有用だとしています。ダイオキシン類は毒性当量でリスク評価をしているので、同じことです。今話題の農薬も含め低濃度複合毒性のリスク評価を日本でも初めなければいけませんね。

George TK, Liber K. (2007) Laboratory investigation of the toxicity and interaction of pesticide mixtures in Daphnia magna. Archives of environmental contamination and toxicology 52:64-72.

化学物質の複合暴露が代謝酵素活性に及ぼす影響が幾つか報告されています。

benzo(a)pyrene とtributyltinの複合暴露によるBPA代謝物CYP1A系およびグルタチオンによるグルタチオンーラジカル除去系の研究が一連があります。両者の投与量により、とくにグルタチオン抱合酵素が誘導したり阻害したりする様です。グルタチオン関係を汚染のバイオマーカーとして用いる場合よく考える必要があるでしょう。また腹腔内投与ばかりなので水からの暴露実験が欲しい所です。

[1] Wu YQ, Wang CG, Wang Y, Zhao Y, Chen YX, Zuo ZH. (2007) Antioxidant responses to benzo[a]pyrene, tributyltin and their mixture in the spleen of Sebasticus marmoratus. Journal of environmental sciences (China) 19:1129-1135.

[2] Ribeiro CA, Padros J, Domingos FX, Akaishi FM, Pelletier E. (2007) Histopathological evidence of antagonistic effects of tributyltin on benzo[a]pyrene toxicity in the Arctic charr (Salvelinus alpinus). The Science of the total environment 372:549-553.

[3] Wang C, Zhao Y, Zheng R, Ding X, Wei W, Zuo Z, Chen Y. (2006) Effects of tributyltin, benzo[a]pyrene, and their mixture on antioxidant defense systems in Sebastiscus marmoratus. Ecotoxicology and environmental safety 65:381-387.

[4] Wang CG, Zheng RH, Ding X, Zuo ZH, Zhao Y, Chen YX. (2005) Effect of tributyltin, benzo[a]pyrene, and their mixture on the hepatic monooxygenase system in Sebastiscus marmoratus. Bulletin of environmental contamination and toxicology 75:1214-1219.

[5] Morcillo Y, Janer G, O'Hara SC, Livingstone DR, Porte C. (2004) Interaction of tributyltin with hepatic cytochrome P450 and uridine diphosphate-glucuronosyl transferase systems of fish: in vitro studies. Environmental toxicology and chemistry / SETAC 23:990-996.

[6] Padros J, Pelletier E, Ribeiro CO. (2003) Metabolic interactions between low doses of benzo[a]pyrene and tributyltin in arctic charr (Salvelinus alpinus): a long-term in vivo study. Toxicology and applied pharmacology 192:45-55.

TBTとPCB複合暴露の行動への影響の論文

(暴露濃度が高く暴露が短いのが残念ですが)著者らは、TBTとPCBを水からコイに複合暴露しその行動 と、グルタチオン抱合酵素活性を調べています。 TBT (4 µg/L ), PCB (10 µg/L ), 複合 (PCB: 5 µg/L + TBT: 2 µg/L).その結果、コイの遊泳速度は、昼間はTBTでPCB区で35%低下し、夜はPCB: 47%, TBT: 39%,PCB/TBT: 33%増加するとあり、複合相乗作用だと結論しています。

Katja Schmidt, Georg B.O. Staaks, Stephan Pflugmacher, Christian E.W. Steinberg. Impact of PCB mixture (Aroclor 1254) and TBT and a mixture of both on swimming behavior, body growth and enzymatic biotransformation activities (GST) of young carp (Cyprinus carpio). Aquatic Toxicology 71 (2005) 49–59

3種類の農薬(atrazine, fipronil, imidacloprid)のGlass shrimp (淡水性エビ) 幼生に対する複合毒性を調べた論文

atrazinは毒性がなく,fipronil の毒性は 96-h LC50 of 0.68 mg/L , imidacloprid の毒性 96-h LC50 of 308.8 mg/Lであった。複合暴露の結果 fipronil + atrazineとimidacloprid + atrazine はそれぞれfipronil ,imidacloprid単独の毒性と差がなかった。しかし,fipronil+imidacloprid は相加毒性を示し,さらに,atrazine+ fipronil + imidacloprid は相加毒性以上の毒性を示した。

Key, P., Chung, K., Siewicki, T., Fulton, M., 2007. Toxicity of three pesticides individually and in mixture to larval grass shrimp (Palaemonetes pugio). Ecotoxicol Environ Saf.

複合毒性に関する再現性の検証をした論文

ただ私の力およばず私が十分に理解して皆様に内容をお伝えすることができません。複合毒性実験には繰り返しの実験が必要であることを述べていると思います。デンマークは複合研究が盛ん?かも。申し訳ない・・・・・図がどうもわからん・・・・とです。

Cedergreen N, Kudsk P, Mathiassen SK, Sorensen H, Streibig JC. 2007. Reproducibility of binary-mixture toxicity studies. Environ Toxicol Chem 26(1):149-56.

ウキクサを用いて6種類の農薬の2種混合毒性試験を行い、その色素量をバイオマーカーとして用いて、concentration addition (CA)およびindependent action (IA)モデルで評価した論文

結果として、色素量を用いた場合いくつかの複合区でその毒性と一致しなかった。またCAモデルが適当であるとしています。 農薬の複合毒性をHPで否定したり、複合作用自体が殆ど話題にものぼらない我が国とは違い、ヨーロッパでは着実に評価手法の検討が進んでいます。

Cedergreen N, Abbaspoor M, Sorensen H, Streibig JC. 2007. Is mixture toxicity measured on a biomarker indicative of what happens on a population level? A study with Lemna minor. Ecotoxicol Environ Saf.

農業では多くの種類の農薬を使い (30万トン/1998,農薬辞典2001)、それは程度の差はあれ環境中に流出しています。日本における現状を簡単に調べた文を付けます。最近農薬を減らす方向で農水省が指導しているので、今後ある程度の改善が期待できます。ご参考までに

これまでの報告で水田由来の農薬がその外に流出することが知られている。Inoueら(1)は、水田で用いられた8種の農薬について、河川でその水中濃度と懸濁態の濃度を比較した結果、降雨時に流出する水田由来の懸濁態粒子に高濃度の農薬が吸着していると述べている。Watanabeら(2)は水田で使用されるmefenacetについて、動態モデル(PCPF-1)を作成している。  水田等で使用された農薬は、河川水に混入して系外へ流出することが報告されている。Tanabeら(3)は1996年4月から8月の間、信濃川でその農薬を調べた結果、合計53種類の農薬が検出され、その濃度はisoprothiolaneで最大8200 ng/Lに達したことを報告している。Sudoら(4)は7種農薬の農薬について琵琶湖の流入および流出河川で調べた結果、その流域で散布された農薬の1.3-2.9%のmolinate, 5.4-10.0%のsimetryn, 0.6-1.3%のoxadiazon, 0.2-0.9%のthiobencarb, 1.8-6.6% のisoprothiolane, 0.3-2.1% のdiazinonが琵琶湖に流れ込んでいるとしている。Nakanoら(5)は、霞ヶ浦周辺で散布された農薬の流出率を調べた結果、除草剤の 8.2-22.4%が流出されるとしている。加えて系外に流出した農薬は生物に影響を与えることが報告されている。茨城県の河川において、経時的に水に含まれる農薬の濃度を調べると同時に、数種生物に対する毒性を調べた。その結果、複数の農薬が検出されており、その濃度に比例して藻類の生長が阻害されたと報告している (6)。菅谷ら(7,8)は、ヌカエビやドブガイを持ちい河川中の農薬の毒性を評価している。KikuchiらはD.magnaを用いて東京の河川の毒性と有機リン剤の濃度を比較し、相関があることを報告している9)。

1) Inoue T, Ebise S, Numabe A, Nagafuchi O, Matsui Y. (2002). Runoff characteristics of particulate pesticides in a river from paddy fields. Water Sci Technol 45:121-6.

2) Watanabe H, Takagi K, Vu SH. (2006). Simulation of mefenacet concentrations in paddy fields by an improved PCPF-1 model. Pest Manag Sci 62:20-9.

3) Tanabe A, Mitobe H, Kawata K, Yasuhara A, Shibamoto T. (2001). Seasonal and spatial studies on pesticide residues in surface waters of the Shinano river in Japan. J Agric Food Chem 49:3847-52.

4) Sudo M, Kunimatsu T, Okubo T. (2002). Concentration and loading of pesticide residues in Lake Biwa basin (Japan). Water Res 36:315-29.

5) Nakano Y, Miyazaki A, Yoshida T, Ono K, Inoue T. (2004). A study on pesticide runoff from paddy fields to a river in rural region--1: field survey of pesticide runoff in the Kozakura River, Japan. Water Res 38:3017-22.

6) Ishihara S, Horio T, Kobara Y, Ishii Y (2000). Effect of several herbidides in algal production. Society of Environmental Toxicology and Chemistry 22nd Annual Meeting Abstract.

7) 菅谷芳雄, 高木博夫, 鈴木一隆. (1999). ヌカエビ(Paratya compressa improvisa)の行動変化を用いた河川水中の有害化学物質の監視手法. 環境毒性学会誌 2:87-96.

8) 菅谷芳雄, 畠山成久. (1999). 農薬汚染河川水中での淡水産二枚貝ドブガイ(Anodonta woodiana japonica)の成長速度の季節変動. 環境毒性学会誌 2:77-86.

9) M. Kikuchi, Y. Sasaki, M. Wakabayashi, (2000), Screening of Organophosphate Insecticide Pollution in Water by Using Daphnia magna, Ecotoxicology and Environmental Safety, 47, 239-245.

トリブチルスズによる魚類のオス化

これまで、ヒラメおよびzebrafishでその性分化時期にトリブチルスズ(TBT)を暴露するとオス化が起こることがShimasakaiら(2003)およびMcAllister and Kime(2003)の研究により報告された。SantosらはzebrafishにTBTを暴露するとオスの数が増加するが、TBTと同時にエストロゲンであるethinylestradiolを複合暴露するとオス化の作用を抑えることを報告している。(Santos et al., 2006)。

  • ヒラメがTBTでオス化した論文
    Shimasaki Y, Kitano T, Oshima Y, Inoue S, Imada N, Honjo T. 2003. Tributyltin causes masculinization in fish. Environ Toxicol Chem 22(1):141-4.
  • zebrafishでオス化した論文
    McAllister BG, Kime DE. 2003. Early life exposure to environmental levels of the aromatase inhibitor tributyltin causes masculinisation and irreversible sperm damage in zebrafish (Danio rerio). Aquat Toxicol 65(3):309-16.
  • TBTの作用をethinylestradiolが抑えることを示した論文
    Santos MM, Micael J, Carvalho AP, Morabito R, Booy P, Massanisso P, Lamoree M, Reis-Henriques MA. 2006. Estrogens counteract the masculinizing effect of tributyltin in zebrafish. Comp Biochem Physiol C Toxicol Pharmacol 142(1-2):151-5.

低濃度の化学物質(0.0025毒性単位)49種類をミジンコに複合暴露すると合計0.16毒性単位となる。

49種化学物質の複合毒性:相加性の証明。

Deneer et al., The joint acute toxicity to Daphnia magna of industrial organic chemicals at low concentrations 1988. Aquatic toxicology, 12, 30-38.