栄養化学 研究室史

(1)栄養化学講座の創設  大正11年2月農学部に農芸化学科の設置が決まり、農芸化学第2(家畜栄養学)講座を起源とし、昭和19年4月農芸化学科の改組にあたり、第3講座(食品化学)が動物栄養・食品化学について講義・研究することとなった。その後、京都繊維専門学校教授岩田久敬が迎えられて昭和23年に第3講座担当教授(栄養化学初代教授)に就任した。岩田教授からの歴史が、現在の本研究室の性格の起源である。

(2)栄養化学研究室の発展期  昭和40年食糧化学工学科が新設され、栄養化学研究室はここに所属することとなった。同年4月新学科に新設された食品製造工学研究室の教授として稲神助教授が昇任し、同年12月菅野道廣助手が助教授に昇任された。本研究室が農芸化学科時代に教授になられた和田正太(2代目教授)は必須脂肪酸の効果に対する栄養化学的研究ならびに脂質の代謝調節について大学院生知念功(琉球大学名誉教授)、長修司(前福岡女子大学教授)、今泉勝己(前九州大学理事・副学長、九州大学名誉教授、現久留米工業大学・学長)、柳田晃良(佐賀大学名誉教授・現西九州大学教授)らを指導し注目すべき成績を上げた。とくに油脂中の必須脂肪酸の栄養作用がそのグリセリド構造により異なることを明らかにした研究は、脂質の栄養作用を分子レベルにまでおし進めたものとして高く評価されている。昭和51年に、和田教授が定年退官された後,昭和52年に菅野助教授が教授に昇任された(3代目教授)。菅野教授は「脂質代謝の栄養的調節」を大命題とする研究をこの期に活性化するために,本学医学部循環器内科と米国カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部で5年にわたり脂質代謝の機能について研鑽を積んだ今泉勝己を助教授として招聘し、昭和53年に赴任した。富士川助手が昭和51年比治山女子短期大学に教授として転出し,井手隆(現十文字女子大学教授)が助手に採用された。井手助手は肝臓灌流実験を行い、肝臓脂質代謝で多くの業績を上げた。さらに、昭和55年に池田郁男(現東北大学教授)が助手に採用された。池田助手はステロール吸収機構について多くの業績を上げた。昭和61年、井手助手は農林水産省食品総合研究所主任研究員として転出した。平成4年菅野教授は食糧化学教授の教授に移られ、今泉助教授が昇任された(4代目教授)。さらに、池田助手が助教授に昇任し、雪印乳業株式会社より窄野昌信(現宮崎大学教授)が助手として採用された。

(3)近年の栄養化学研究室  今泉教授時代は、動脈硬化症発症を抑制する食品の探索および分子栄養学分野で大きな業績を上げた。平成8年に窄野助手は宮崎大学助教授として転出した。同年、国立健康・栄養研究所より、佐藤匡央を助手として採用した。平成17年、池田助教授は東北大学教授に転出し、同年佐藤助手が助教授に昇任した。今泉教授は平成17年農学研究院長・学府長・学部長に選出され、平成22年に農学研究院は退職され、九州大学理事・副学長に就任した。平成22年に国立健康・栄養研究所より、城内文吾を助教として採用した。その後、平成28年4月に佐藤准教授が教授に昇任された(5代目教授)。城内助教は令和2年、長崎県立大学准教授に転出し、同年、食糧化学分野でポスドクをしていた田中愛健を助教として採用した。現在の研究室は菅野・今泉教授から続く、「脂質代謝の食品による調節」をテーマとして生理学、分子生物学および疫学の新規手法を導入し、研究を行っている。令和4年7月現在、佐藤教授、田中助教、事務補助員1名、博士課程学生2名、修士課程学生9名、研究生1名および学部4年生3名の総勢17名で、日々、教育および研究に精進し、あらゆる人々がより健康になるために、人類の福祉に貢献するために邁進している。

   九州大学農学部生物資源環境学科食糧化学工学分野 創立100周年記念誌 一部改変
                                (2022.7.1現在)



研究室所在地など

  • 〒819-0395
    福岡県福岡市西区元岡744
     九州大学 ウエスト5号館6階
    管理者: 田中 愛健