Kyushu University
Genome Chemistry & Engineering Lab.

Your Journey into Genome Engineering Starts Here

研究内容
  • カスタム核酸結合タンパク質の開発




  •  様々な生物のゲノム情報が明らかになり、その利用による研究技術の開発、医療への応用、有用農作物の開発、などが盛んに行われています。 しかし、多くの生物において、ゲノム中の目的遺伝子のみを選択的に破壊するジーンターゲッティング法は確立しておらず、ゲノム情報の利用に大きな制限がかかっていました。
     近年、設計可能な人工制限酵素(人工ヌクレアーゼ)を用いて、ゲノム上の特定の遺伝子を破壊したり、標識遺伝子を導入するゲノム編集技術が注目されています。 同一の技術体系によって、植物、微生物、動物を含む全ての生物種のゲノムが改変できるため、基礎研究および様々な生物系産業での利用が期待されています。 約40年前に制限酵素の発見が遺伝子工学という新分野を創出しましたが、ゲノム編集技術は同等の技術がゲノムレベルで登場したと言っても良く、新しい分野の開拓が期待されます。

     ゲノム編集には核酸と配列特異的に結合する核酸結合モジュールが必須です。現在、DNA結合モジュールとして、ジンクフィンガー、TALE、CRIPSR/Casが利用されており、 それぞれの核酸結合モジュールの比較検討が進められています。しかし、ゲノム編集技術はいまだ萌芽期であり、新たな核酸結合モジュールの発見が期待されています。

     植物オルガネラ遺伝子発現に働くPPR(pentatricopeptide repeat)蛋白質はそれぞれが異なる配列に作用するDNAまたはRNA結合蛋白質として働くことが知られています。 最近、これまでに研究されてきたRNA結合に働く数十個のPPR蛋白質とその結合配列のデータを基にしたコンピュータ解析により、PPR蛋白質のRNA認識コードを解読しました。
     その結果、PPRモチーフとRNA塩基が一対一の対応関係で結合すること、特定の3箇所のアミノ酸の組み合わせで結合塩基が決定すること、 結合塩基がプログラム化可能であること、を明らかにしました(下図)。また、解読したRNA結合コードがDNA結合に働くPPR蛋白質にも適用できることを見いだしました。
    PPR code

     PPR蛋白質の核酸認識コードの解明により、意図するRNAまたはDNA配列に特異的に結合する蛋白質を開発できるようになりました。 PPR蛋白質は、同じプラットフォームでDNAまたはRNAの両方の核酸に対応可能なモジュールであり、既知のゲノム編集用核酸結合モジュールにない特徴の1つです。 また、TALEで知られるTを認識するゼロモチーフのようなものはPPRには見当たらず、完全に自由な配列選択性を有しています。

     DNAを標的としたゲノム編集は、国際的に大きな注目を集めている新技術です。DNA結合型PPRを核酸結合モジュールに用いた日本発のゲノム編集技術の創出が期待されます。 さらに、RNA結合型PPRを用いて、RNAを切断したり、特定の塩基を置換する編集技術、特定のRNAの局在を見る可視化技術、などの革新的なRNA操作技術の創出も期待されます。