平成22年度食品開発学特論

 

■1月21日(月)3限目 (13:00-14:30) 4号館110教室

松野 潔 氏

味の素株式会社 バイオ・ファイン事業本部 
バイオ・ファイン研究所 プロセス開発研究所 
プロセス開発研究室 発酵グループ 専任課長

「アミノ酸・核酸発酵技術開発」

 本講義で は、まず味の素(株)の会社概要について説明が行われた。即ち、味の素(株)の三つの主要分野(食品、バイオ・ファイン、医療・健康)の事業内容と主要な 製品の紹介である。特に、講師の松野氏が所属するバイオ・ファイン分野が関わる製品として、医療用アミノ酸、飼料用アミノ酸(スレオニン)が世界シェアの 60%を占めること、ペプチド系甘味料(アスパルテーム)、機能性食品、化粧品、絶縁フィルムなどへも事業が展開されていることについて話があった。
次に、味の素(株)が創業時から生産販売しているアミノ酸系旨味成分(グルタミン酸)と核酸系旨味成分(イノシン酸およびグアノシン酸)が旨味成分として重要であることの説明が行われた。アミノ酸生産販売は味の素(株)の主力事業であり、これらの生産には発酵法が不可欠であり、その発酵工程に関しては 詳細な解説が行われた。また、それぞれの生産にはそれぞれ適した菌株の育種が必要であることが説明された。

最後に、松野氏が深く関わっている核酸(イノシン酸)製造工程に関して詳細な説明があった。イノシン酸はリン酸基を含んでいて、細胞膜を通過すること (菌体外に放出されること)が困難であり、発酵工程では細胞内蓄積が障害となる。従って、イノシンを発酵法で生産後、酵素法でイノシン酸への変換が行わなければ合成できないことについて説明があった。次に、その酵素法では、Morganella morganii菌由来酵素を利用し、変異導入により改変することで、イノシン酸への変換効率が高められることが解説された。また、イノシンに関してはBacillus subtilis菌の代謝系酵素遺伝子を欠損させることにより、代謝経路を操作し、生産性を高める方法について解説が行われた。
 本講義は、海外でのポスドク経験3年半、味の素(株)入社後の海外勤務経験4年を通じて得られた豊かな国際性を基に行われた「企業における基礎研究」に ついて詳細に紹介されたものであり、本学府大学院生が企業等に就職後に取り組む「グローバルに展開する企業における研究」をイメージさせるためにも、極めて高い教育効果があったと推察される。


講義風景     

     

     

講義資料(PDF)

 

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