海藻成分フコイダンの免疫調節機能

宮﨑義之1,2,菊永泰子2,中溝公次3,立花宏文2,山田耕路2
(1NPO フコイダン研究所,2九大院農院・食糧化学,3株式会社ヴェントゥーノ)

フコイダンは、モズク、ワカメおよびコンブなどの褐藻類に含まれる細胞間粘質多糖(ヌメリ成分)であり、乾燥や傷害、病原体の侵入から海藻体を保護する役割を担っています。1913 年にキリン教授(スウェーデン・ウプサラ大学)によって学術的に分類され、フコースを主成分とする高分子多糖類の総称として定義されています。すでに知られているフコイダンのはたらきは、血液が固まることの阻害、血圧や血中コレステロールの低下、ピロリ菌の定着の阻害、および皮膚の老化防止など多岐にわたります。

フコイダンの働きとして最も広く知られる抗がん作用は1970年代から繰り返し検討され、がん細胞の細胞死(アポトーシス)の誘導やがん細胞の増殖・転移の抑制、および腫瘍部分での血管新生の抑制などに働くことが報告されています。食物繊維の一種であるフコイダンは腸から吸収されにくいため、血液中に吸収されて作用するのではなく、腸内に留まりながら免疫機構を活性化させ、間接的に腫瘍に対する効果を発揮するものと考えられています。その根拠として、フコイダンを摂取するとマクロファージや樹状細胞などの自然免疫に関連する細胞の働きが活性化することが明らかになっています。

このことから、免疫細胞の働きによって実現する感染に対する免疫力の向上にフコイダンが効果的に作用する可能性は高く、実際に、マウスを使った感染実験ではフコイダンの摂取によって病原体の蔓延が抑制され、細胞の働きによる免疫力の向上を示唆する結果が報告されています。

・病原菌に感染した細胞やがん細胞を直接攻撃する細胞性免疫
・病原細菌のような抗原に適応した抗体が作用する液性免疫
・異物の排除に働いた結果として起こる炎症応答

これらは免疫機構の3主軸であると共に、互いにバランスを保つ関係にあり、いずれかの免疫応答が活性化しすぎると、アレルギーなどの免疫疾患を発症させる要因となります。喘息や腸炎などのマウスを使用した試験では、フコイダンが免疫疾患の病態の緩和に効果を発揮する可能性を示しています。

以上、フコイダンには効率的で適正な免疫反応を導く有効な機能があると考えられ、現在、そのメカニズムの更なる解明に向けて検討を進めています。

キーワード

  • マクロファージ 細菌などの異物を捕食する白血球の一種。抗原を提示することで、体内の免疫バランスを調節する特定のT細胞を活性化する役割を持っています。
  • 樹状細胞 免疫において司令塔の役割を担う細胞。細菌など体内に侵入してきた異物を捕食し、免疫反応を引き起こさせる抗原を提示する働きを持っています。
  • 細胞性免疫 リンパ球などの免疫細胞が直接、細菌などの異物を攻撃する免疫反応。
  • 液性免疫 病原細菌などの抗原に対して、その抗原に適応した抗体を産生し、抗原の増殖を阻止する免疫。抗体が血液中にあるため、液性(体液性)と呼ばれる。
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