生物多様性・生態系と食料生産・感染症対策のトレードオフを解消するための昆虫科学共創拠点 生物多様性・生態系と食料生産・感染症対策のトレードオフを解消するための昆虫科学共創拠点

Concept

「生物多様性」「人間活動」
調和を目指す地域共創拠点

本研究は、生物多様性と人間活動の間に生じるコンフリクトの解消を目的としています。九州地域においても、開発が進んだ地域と豊かな生物多様性が残された地域が共存しています。生物多様性は人間活動に対して正負両面の影響をもたらすため、生物多様性を活用しつつ、人間活動を促進する最適なバランスを探求します。
我々は、快適で健康的な生活環境を維持しながら、環境への配慮が経済的合理性とも両立する社会の実現を目指します。このビジョンの達成に向け、産官学が連携し、地域と協働しながら、昆虫を活用した持続可能な食料生産、医薬品開発、感染症予防、生態系保全など、新たなアプローチを提案してまいります。

Vision

あらゆる学びがある拠点による
⽣物多様性の適切な理解と利⽤を
実現する社会

Message

代表メッセージ

本プロジェクトは、環境・食・健康といった現代社会が抱える課題解決と、新たな産学官連携を共創します。

このたび、JST「共創の場形成支援プログラム(育成型)」において、「生物多様性・生態系と食料生産・感染症対策のトレードオフを解消するための昆虫科学共創拠点」が採択されました。本プロジェクトは、昆虫科学を基軸に、環境・食・健康といった現代社会が抱える複雑な課題の解決に挑む、新たな産学官連携の共創の場です。生物多様性は人類にとって大きな恩恵をもたらす一方で、感染症や農業被害のリスクも内包しています。これらのトレードオフを解消し、持続可能な社会を築くには、部分的な対策ではなく、「人・動物・環境」を一体として捉える“ワンヘルス”の視点が不可欠です。本拠点では、昆虫相を「環境健全性」の評価指標と位置づけ、その科学的知見をもとに食料・医薬・感染症対策・資源循環など多様な分野へ応用していきます。本プロジェクトの拠点となる福岡県では、全国に先駆けて「ワンヘルス推進条例」を制定し、人・動物・環境の健全性を一体で捉える取り組みを進めています。一方で、畜産業の飼料依存や産業廃棄物処理、外来生物・感染症リスクの増加といった地域特有の課題にも直面しており、科学的根拠に基づいた新たな対応策が求められています。本拠点では、こうした地域の実情に即した解決策を、学術と行政、産業が連携して共創し、地域から社会全体への実装へとつなげていきます。九州大学は、国内最大規模の昆虫科学研究体制を誇り、これまでにも大学発ベンチャーや産業応用を推進してきました。本プロジェクトでは、福岡県をはじめとする自治体や企業との連携を強化し、社会実装を見据えた具体的な成果創出を目指します。本拠点が、多様な人々のWell-beingを支える実践の場となるよう、全力で取り組んでまいります。

Kusakabe Takahiro

農学研究院 資源生物科学部門 教授
日下部 宜宏

Organization

組織体制

組織体制 組織体制

研究開発課題

Assignment

  • 研究開発課題1

    媒介感染症の制圧

    媒介感染症は虫によって広がる伝染病で、野生動物・家畜・人に深刻な影響をもたらしています。媒介感染症阻止のためには、媒介昆虫を殺すことが重要ですが、殺虫剤の濫用は周辺生態系に負荷を与えます。本研究課題では、生態系や都市環境に対して低負荷な防除法の開発を進め、地域住民の健康や畜産業の安定に寄与する研究を進めていきます。

    リーダー藤田 龍介

  • 研究開発課題2

    生物多様性を理解するための
    指標昆虫の選定と
    環境評価法の開発

    この課題では、昆虫を指標生物として活用し、生物多様性と(自然)環境の健全度を質的・量的に評価できる手法を開発します。指標昆虫を環境のヘルスメーターとして生物多様性や環境の保全に役立てることが目的です。市民にも使える汎用性の高い指標種から希少な自然を保全するための指標種を選抜し、生態系における機能、面積、希少性、戦略的重要性など、を考慮した統合化多様性評価スコアの算出法を提案します。

    リーダー上野 高敏

  • 研究開発課題3

    昆虫DXを活用した
    研究課題間の連携

    本研究では、デジタル技術を活用し、革新的な社会実装の実現を目指します。課題1では、総合的病害虫管理(IPM)に基づき、予察・モニタリング作業の自動化と低コスト化を目的に、深層学習による病害虫画像認識アプリを開発します。課題2では、生物間相互作用を定量化し、生態系ネットワークを可視化することで、環境に適した指標種を科学的に選定し、実用的かつ汎用性の高い評価手法の構築を目指します。

    リーダー紙谷 聡志

  • 研究開発課題4

    昆虫科学による持続可能な
    食料生産と健康増進

    地球規模の課題である食料生産と感染症対策は、生物多様性や生態系への影響と常に背中合わせです。私たちは、昆虫の持つ多様な機能性と適応力に着目し、資源循環型の食料システムの構築と、経口ワクチンなど新たな公衆衛生技術の開発を進めています。昆虫科学を軸に、医・農・環境の専門領域と連携し、持続可能で強靭な社会を創る拠点を目指します。

    リーダー日下部 宜宏

  • 研究開発課題5

    昆虫資源の産業資源への転換

    本課題では、これまで十分に活用されてこなかった昆虫の潜在的能力に着目し、未活用な昆虫資源の可能性を引き出し、社会実装に向けたオープンサイエンス・パイプラインの構築を目指します。産学連携により機能性分子の探索から実用化までを一貫して進め、環境・食・健康分野への貢献と新産業の創出を図ります。

    リーダー李 在萬