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2025/06/15

Co-Design Camp イベントレポート

はじめに

6月14日(土)、15日(日)に休暇村志賀島にて、JST共創の場(育成型)に採択された九州大学主導のプロジェクト人・動物・環境が健やかな関係を築くための昆虫科学共創拠点(申請時の「生物多様性・生態系と食料生産・感染症対策のトレードオフを解消するための昆虫科学共創拠点」から変更)の合宿型プログラム「Co-Design Camp -昆虫を起点に、未来をともに描く2日間- 」を実施しました。本キャンプでは、拠点運営機構メンバーはもちろん、参画企業、行政機関や研究者など、日本全域から多様な関係者が一堂に会し、現状の課題整理や拠点ビジョン、今後の方向性について本音で語り合いました。以下、当日の様子をご紹介します。

 

まず初めに、本拠点プロジェクトリーダーである九州大学大学院農学研究院長の日下部宜宏教授から、拠点概要の説明が行われました。
この拠点では、大きく分けて以下2つの未来社会像を描いています。

 

1.快適で健康的な環境が整備された社会
病気を運ぶ虫(媒介昆虫)の対策や、清潔な環境づくりを通じて、誰もが安心して暮らせる社会。
2.環境への配慮が経済的にも成り立つ社会
自然を守る活動が「費用ばかりかかる」のではなく、「経済的なメリットも生み出す」ような仕組みを作り、環境と経済が両立する社会。

これらの未来を実現するために、本プロジェクトでは、以下4つの主要な課題解決に焦点を当てています。
環境の健全性を評価する方法の確立
「この環境はどれくらい健康なのか?」を客観的に測れるようにします。これにより、環境改善の効果を目に見える形にし、適切な対策を立てられるようにします。
生物多様性の「負の側面」の軽減
デング熱を運ぶ蚊や、家畜の病気を媒介するハエなど、人間や動物に害を及ぼす昆虫(害虫)による悪影響を減らします。
生物多様性の「正の側面」の深化
昆虫が持つ良い面(例えば、カブトムシの幼虫が未利用資源を食べ物に変える力や、カイコが感染症の研究に役立つ力など)をさらに引き出し、食料生産や健康増進に役立てます。
環境整備と経済的合理性の確保
環境保全活動が経済的にもメリットがあることを証明し、企業や地域が積極的に環境保護に取り組めるようにします。

これらの課題解決に向けて、具体的には、以下6つの研究開発課題が進められています。
1.環境に配慮した媒介感染症対策
2.指標昆虫の選定と環境評価法の開発
3.科学的知見を社会実装するためのデジタル・トランスフォーメーション
4.バイオリソース・バイオ技術による食料生産と健康増進
5.都市開発デザインと生物多様性管理の調和推進
6.生物多様性保全活動の経済的合理化

福岡県からの話題提供〜福岡県におけるワンヘルスの取組〜

次に、本プロジェクトの副プロジェクトリーダーである、福岡県保健医療介護部ワンヘルス総合推進課の宮嵜敬介課長より、福岡県におけるワンヘルスの取組についての説明をいただきました。
「ワンヘルス」とは、人と動物の健康と環境の健全性を一つ(One)として一体的にもっていこうとする考え方で、福岡県では様々な取組が行われています。特に、ワンヘルスに関する条例を設置するなど、日本国内初の取り組みとして注目されています。

その後は、各研究開発課題リーダーからの発表が行われました。

 

研究開発課題1:環境に配慮した媒介感染症対策

 

研究開発課題1は、九州大学の藤田龍介先生がリーダーを務め、「環境に配慮しながら、病気を運ぶ虫(害虫)を徹底的に対策する」ことを目指しています。最終的には、「人、動物、そして環境がみんな健康になる」ことを目標にしています。
このプロジェクトの背景には、衛生害虫対策は技術があっても導出が進まない場面が多く、「需要はあるが、受容が足りない」現状があります。つまり、技術だけあっても、実際に使う人がいなかったり、継続できなかったりする壁があります。この研究は、「本気で対策すれば、害虫は必ず減らせる!」ということを具体的に示し、この課題を解決しようとしています。具体的には、以下3つの大きな目標に取り組んでいます。

 

①「人の健康を守る害虫対策」
都市部でデング熱のような海外からの感染症が広がるのを防ぐため、蚊を効率的に減らす方法を開発します。

「動物の健康を守る害虫対策」
家畜の間で広がる鳥インフルエンザや豚熱(豚コレラ)、最近国内で発生した牛の「ランピースキン病」など、農家に大きな被害をもたらす病気を運ぶハエやマダニを対策します。単一の技術に頼らず、様々な駆除方法を組み合わせることで、経済的で環境に負担の少ない対策を考えます。農家の方々の協力を得るために、協力してくれた農家さんを表彰する仕組み(インセンティブ)も検討し、社会全体で対策を進めることを目指します。
「害虫対策の成果を社会で使えるようにする」
害虫がいつ、どこで発生するかを予測するシステムを作ったり、対策が環境にどれくらいの良い影響を与えるかを評価したりします。さらに、害虫リスクを減らすような都市のデザイン開発も進め、科学的な知見が実際に社会で役立つように、デジタル技術も活用します。

この研究は、「環境に配慮しつつ、経済的にも無理なく、そして何よりも効果的に害虫を対策できる」ことを証明することで、病気から人や動物を守り、より健康で安全な社会を実現することを目指しています。

研究開発課題2:指標昆虫の選定と環境評価法の開発

 

研究開発課題2は、九州大学の上野高敏先生がリーダーを務め、「指標昆虫(特定の環境に住む虫)を使って、自然の豊かさ(生物多様性)を目に見える形にする」ことを目指しています。これまで、自然の豊かさを評価するのは専門家でなければ難しく、その結果も一般の人にはピンとこないことがほとんどでした。そのため、「環境のために何か活動しても、本当に効果があったのか分からない」「どれくらい良くなったのかが見えないから、モチベーションが続かない」という課題がありました。そこで、このプロジェクトでは、私たちが健康状態を測るのに体重計や体脂肪計を使うように、昆虫を「環境のヘルスメーター」として活用しようと考えています。そうすることで以下の効果が得られます。

 

①誰でも効果が「見える」ことで、活動が加速する
 例えば、企業の環境活動や自治体の緑化プロジェクトが、実際にどれだけ地域の生物多様性を高めたのか、特定の虫の数を数えるだけで、目に見える形でわかるようになります。数字で「良くなった!」と実感できれば、活動のモチベーションが維持され、次は何をすればもっと良くなるのか、という具体的な次のアクションにも繋がりやすくなります。

②市民も参加して、環境を「自分ごと」に
 スマホを使って身近な昆虫を調べる、といった簡単な方法を開発することで、専門家でなくても誰でも環境の変化を「見える化」できるようになります。例えば、ホタルの数を数えることで、地域の水辺の環境がどう変化しているのかが分かり、自分たちの活動が環境に良い影響を与えていることを実感できます。こうして、環境問題が「自分ごと」になり、もっと多くの人が環境保全に積極的に関わるようになります。

この研究は、ただ単に生物多様性を守るだけでなく、「環境の現状が数字やグラフでわかる」ようにすることで、関わる人々のモチベーションを高め、具体的な改善行動を促し、最終的には「人と自然が深くつながり、誰もが環境の変化を実感できる未来」を実現することを目指しています。

 

研究開発課題3:科学的知見を社会実装するためのデジタル・トランスフォーメーション

 

研究開発課題3は、九州大学の紙谷聡志先生がリーダーを務め、「昆虫とAIの力を合わせて、これまでの昆虫科学の知見を社会で役立つ形にする(デジタル・トランスフォーメーション)」ことを目指しています。
これまでの昆虫の研究は、専門家が膨大な時間と労力をかけてデータを集め、分析する地道な作業が中心でした。昆虫の種類は非常に多く、一つ一つを識別したり、その生態を詳細に調べたりするのは、並大抵のことではありません。そのため、せっかく素晴らしい研究成果が出ても、それが世の中に広く知られたり、具体的な社会問題の解決に活用されたりするまでには、大きな壁がありました。このプロジェクトの目的は、この「研究成果の社会実装の難しさ」をAIなどのデジタル技術で乗り越えることです。具体的には、以下の点に焦点を当てています。

 

①昆虫の情報を「見える化」し、誰もが使えるデータにする
AIを使って、昆虫の画像や音などから種類を識別したり、数を数えたりするシステムを開発します。これにより、専門家でなくても簡単に昆虫のデータを集められるようになり、これまで把握しきれなかった大量の情報を効率的に収集・分析できるようになります。

②「昆虫DX(デジタル・トランスフォーメーション)」で、社会の課題を解決する
例えば、害虫の発生をAIで予測し、農作物への被害を未然に防ぐシステムを開発します。また、益虫(人間に役立つ虫)の活動をモニタリングし、農業生産性の向上に役立てることも可能です。さらに、環境の変化を示す「指標昆虫」のデータを自動で収集・分析することで、地域の環境の状態をリアルタイムで把握し、より効果的な環境保全策を立てられるようになります。

この研究を通じて、昆虫に関する「専門的な知見」と「最新のデジタル技術」を融合させ、これまで手間がかかりすぎてできなかったこと、見えなかったことを「見える化」し、昆虫の力を借りて、より豊かで健康な社会を実現することを目指しています。これにより、環境問題、食料問題、健康問題など、様々な社会課題の解決に貢献することが期待されています。

研究開発課題4:バイオリソース・バイオ技術による食料生産と健康増進

 

研究開発課題4は、九州大学の李在萬先生がリーダーを務め、「昆虫などの生物資源(バイオリソース)や、それらを活用する技術(バイオ技術)を使って、食料をもっと生産し、私たちの健康を増進する」ことを目指しています。
現在の世界は、人口増加に伴う「タンパク質危機」に直面しており、将来的に食料が不足する懸念があります。また、新たな感染症が次々と現れ、人と動物の健康に大きな影響を与えています。このプロジェクトは、これらの喫緊の課題に対し、昆虫が持つ秘められた力を活用することで、革新的な解決策を見つけようとしています。具体的なテーマは以下の3つです。

 

①「地域で使われていない資源を、高品質な昆虫飼料に変える」
これまでは捨てられていた、あるいは利用価値が低いとされてきた地域の生物資源(例えば、食品廃棄物や農業残渣など)を、昆虫に食べさせることで、高品質で環境に優しい昆虫飼料を開発します。これにより、食料廃棄物の削減にも貢献し、持続可能な食料生産システムを構築します。

②「食と健康をつなぐ、昆虫由来の特別な成分を探し、価値のある食材を作る」
世の中の種の約6割が昆虫であると言われています。その中から昆虫が持つ特別な成分(機能性成分)を見つけ出し、それらを人の健康維持や増進に役立つ食品やサプリメントとして開発します。

「新しいタイプのワクチンで、感染症から身を守る」
多くの感染症は、人だけでなく動物にも広がり、国境を越えて拡大します。特に、インフルエンザや豚熱(豚コレラ)、さらには人獣共通感染症など、複雑な感染症への対応が求められています。このテーマでは、昆虫の技術を使って、注射ではなく口や鼻から摂取できる新しいタイプのワクチン(経口・経鼻ワクチン)の開発を目指します。これにより、広範囲の感染症に効果的に対応し、人や動物の健康を守ることを目指します。

この研究は、昆虫が持つ多様な可能性を最大限に引き出し、食料の安定供給、健康寿命の延伸、そして感染症対策という、私たちが直面する地球規模の課題を解決し、より持続可能で健康な社会を実現することを目指しています。
 

研究開発課題6:生物多様性保全活動の経済的合理化

研究開発課題6は、九州大学の中石知晃先生がリーダーを務め、「生物多様性を守る活動が、経済的にもちゃんと成り立つようにする」ことを目指しています。
私たちが自然を守るために何か活動をしようとするとき、多くの場合は「費用がかかる」「経済的なメリットが見えにくい」という課題に直面します。そのため、いくら環境に良くても、なかなか活動が広まらなかったり、継続できなかったりすることがあります。このプロジェクトは、この「環境保全活動と経済的なメリットを結びつける難しさ」を解決しようとしています。具体的には、以下の3つのテーマで研究を進めます。
①「生物多様性の価値を、お金に換算して見える化する」
これまで数値化が難しかった「生物多様性の豊かさ」を、昆虫などの指標を使って具体的な経済的な価値として評価するモデルを作ります。例えば、「この森にはこれだけの珍しい昆虫がいて、それが地域にもたらす観光収入はこれくらいだ」といった形で、自然の豊かさがどれだけの経済的なメリットを持っているかを「見える化」します。

②「環境への影響を、サプライチェーン全体で評価する」
 私たちが商品を買うとき、その商品が作られ、運ばれ、消費されるまでの全過程(サプライチェーン)で、どれだけ環境に影響を与えているかを計算するモデルを開発します。特に、生物多様性への影響(生物多様性フットプリント)を測ることで、企業がより環境に配慮した製品づくりやビジネスモデルを構築する際の指針を提供します。

③「経済的にもお得な生物多様性保全モデルを、福岡で実際に試す」
上記の2つの研究成果を基に、「環境を守ること」が「経済的なメリット」にもつながる具体的なモデルを、福岡県内で実証します。例えば、自治体が行う環境イベントが、どれくらいの費用でどれくらいの経済効果(観光客増加、地域活性化など)を生み出したかを分析し、費用対効果の高い環境保全活動の例を社会に示します。これにより、「環境に良いことは、お金も稼げる」という成功事例を作り、他の地域や企業にも広がるようにすることを目指します。

この研究は、「環境を守る活動は、お金がかかるだけ」というこれまでの常識を覆し、「環境にも優しく、経済的にも賢い」という両立を実現することで、持続可能な社会づくりを加速させることを目的としています。
 

研究内容発表(農研機構:坪田拓也・富田秀一郎氏、山口大学:度会先生、熊本大学:米島先生)

 研究開発課題と連携を行う他研究機関の研究内容報告を受け、今後の拠点におけるさらなる可能性を探りました。まず、農研機構の坪田拓也氏、山口大学の度会雅久先生からは、それぞれ「カイコ」をテーマとした研究内容の発表がありました。どちらの発表も、カイコが持つユニークな特性や、それを活用する最先端の技術が、私たちの社会に貢献する可能性が示されました。
農研機構の坪田氏らからは、「カイコの遺伝子組み換え技術」についての発表がありました。農研機構のカイコ基盤技術開発グループは、カイコの卵に直接DNAを注入する独自の技術を持っており、これが最大の強みとなっています。この技術により、安定して狙い通りの遺伝子組み換えカイコを作り出すことができます。
山口大学の度会先生からは、「カイコを病気の研究に使い、細菌が体に感染する仕組みを詳しく調べる」という内容についての発表がありました。これまでの感染症研究は、主にマウスなどの動物実験に頼っていましたが、カイコを使うことで、より効率的で倫理的な研究が可能になります。
 両発表を通じて、カイコが単なる「絹糸を作る虫」にとどまらない、非常に多様な可能性を秘めた生物であることが示されました。感染症研究の新しいモデルとしての活用、そして遺伝子組み換え技術による機能性物質生産のプラットフォームとしての可能性は、人や動物の健康、そして持続可能な社会の実現に大きく貢献することが期待されます。

 

 また、2日目の冒頭に、熊本大学の米島万有子先生から「蚊の研究:地理的視点からのアプローチと、プラネタリーヘルスへの貢献」という内容についての発表がありました。この研究は、デング熱などの感染症を媒介する「蚊」に焦点を当て、「人間」「病原体」「蚊」の三者がどのように存在し、相互作用しているのかを地理的な視点から解き明かすことを目指しています。現在の蚊の発生状況は、経験則や感覚で語られることが多く、「蚊が多い・少ない」という曖昧な情報に留まっています。この研究では、これを「見える化(数値化・可視化)」することで、より正確な蚊の生息状況を把握し、効果的な対策に繋げようとしています。この研究は、科学的なデータに基づいて蚊の生態を深く理解し、人間と自然が共生できるような、より健康的で安全な都市環境の実現に貢献しようとしています。

 

総合討論の主な内容

2日目の総合討論では、1日目の各研究発表を受けて、本研究拠点のビジョンや研究開発課題について、多角的な視点から活発な意見交換が行われました。参加者は5つのグループに分かれ、今後の拠点運営と研究推進に向けた重要な論点が提起されました。

 

1. ビジョンと「ワンヘルス」の明確化
  • 「拠点ビジョンが、具体的に何を伝えたいのか分かりにくい」「高校生や次世代がワクワクするような表現ではない」といった意見が複数上がりました。プロジェクトリーダーをはじめ、拠点運営機構メンバー一同、当初の「生物多様性・生態系と食料生産・感染症対策のトレードオフを解消する」という硬い表現から「人・動物・環境が健やかな関係を築く」に変更したものの、さらなる改善が必要であると認識を共有しました。
  • 特に「ワンヘルス」(人・動物・環境の健康を一体と捉える考え方)については、定義や重要性が一般に伝わりにくいとの指摘が多くありました。その中で、指標昆虫を用いた生物多様性の「見える化」は、ワンヘルスの課題解決の鍵となり、ひいては昆虫科学の重要性を社会に示すことにつながると期待する意見が多く出されました。
  • ビジョンを表現する際には、「昆虫」ではなく「虫(ムシ)」といった親しみやすい表現や、「共生」「虫で困らない社会」といった分かりやすいメッセージが望ましいのではないかとの意見がありました。
2. 研究開発課題の連携と範囲
  • 各研究開発課題がそれぞれ独立して見えがちであるため、デジタル・トランスフォーメーション(DX)やワンヘルスといった共通のテーマを「横串」として、課題間の連携を強化すべきとの意見がありました。
  • 研究の地理的範囲について、福岡県内に限定するのか、九州全体に広げるのかという意見や、東北大学など既存の生物多様性関連拠点との役割分担や差別化の必要性についての意見が出されました。
3. 社会実装と経済的合理性の追求
  • 「社会実装をどこまで目指すのか」という点は重要な論点となり、特に経済学を専門とする中石先生の研究分野(生物多様性保全活動の経済的合理化)に対する重要性が強調されました。
  • 「昆虫の多様性が本当に人間の幸福度につながるのか」「生物多様性によって子どもが外で遊べなくなるような害虫を増やすのでは」といった、社会ビジョンに対する率直な疑問も出されました。
  • 最も重要な課題の一つとして、「環境保全活動が経済的にもメリットを生み出し、持続可能なお金の仕組みを作る」必要性が強く認識されました。これは、将来的に補助金などに頼らずに活動が継続できることに直結し、非常に重要であると位置付けられました。
   →「多様性に配慮した」という価値を、どのように、企業の活動や商品に反映させ、具体的な利益(インセンティブ)につなげるかが大きな課題。
   →具体的なアイデアでは、企業のESG(環境・社会・ガバナンス)評価や、銀行・証券の融資条件に生物多様性のスコアリングを組み込んでもらうこと、さらにはエンターテイメントやイベント、企業の採用活動にも寄与する機会創出などが提案されました。
   →「規制型」ではなく「優遇型」の仕組み(例:自治体と連携して生物多様性に取組むことでの補助金優遇など)が望ましいとの意見が出されました。
4. 次世代への教育とアウトリーチ
  • 「若年層への意識付けが不足している」「ワクワク感が足りない」という指摘から、高校生などの若い世代が環境問題や関連した昆虫科学に興味を持つような教育やアウトリーチ活動の重要性が必要との意見が出されました。座学だけでなく、体験を通じて学べる機会を増やすことなどが求められるとの意見がありました。
  • 多様なステークホルダーが集まる拠点の特性を活かして、音声コンテンツや特定のプラットフォームを構築し、情報を多角的に発信するビジネスモデルの可能性についても議論されました。

今後に向けて

全体討議を通して、本研究拠点が目指す「人・動物・環境の健やかな関係づくり」の実現には、ビジョンのさらなる明確化と、各研究開発課題の横断的な連携が不可欠であることが再確認されました。特に、生物多様性保全活動の経済的合理性をいかに追求し、社会全体を巻き込む持続可能なお金の仕組みを構築するかについては、その後の長期的な活動継続における最大の鍵であるという認識が共有されました。
今後は、拠点に参画する多様なステークホルダーそれぞれの可能性を、連携と共創を通じてともに見出しながら、より豊かで持続可能な社会の実現を目指し、本格型拠点への昇格に向けて研究開発を加速させていく方針です。