セミナー

昆虫科学・新産業創生研究センター 第 3回セミナー

日時
2020年3月17日(火)15:00-17:00 (講演 15:00 -16:30 + 総合討論) ※2/20コロナウイルスの感染防止対策として、中止となりました。
会場 九州大学農学部 (伊都キャンパス) ウエスト5号館 327室
講演者 坪田拓也 先生(農研機構)
演題 カイコのゲノム編集技術の高度化とその利用
要旨
ゲノム編集は、遺伝子を自在に改変できる技術であり、近年様々な生物でその利用が急速に広まっている。ゲノム編集には、Zinc Finger Nuclease (ZFN)、Transcription Activator-Like Effector Nuclease (TALEN)、Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats (CRISPR)/CRISPR associated protein (Cas) 9の3つの基盤技術があり、我々はこれらの技術がカイコでも利用可能であることを明らかにするとともに、その高度化に向けて取り組んできた。カイコでは、これらの基盤技術のうちTALENが最も有効であり、TALENにより様々な遺伝子のノックアウトを効率よく行うことができる。また、プラスミドや短いオリゴDNAをカイコゲノム中の狙った位置に挿入することも、TALENを用いることで可能である。CRISPR/Cas9については、その利用の簡便さからカイコ以外の生物で爆発的に利用が広まっており、カイコでも高度利用を行うための技術開発を我々は進めている。ゲノム編集は、基礎研究だけでなく産業応用のために利用することも可能で、ゲノム編集カイコを用いて有用物質生産の生産量の向上を目指す取り組みが進められている。そのための足がかりとして、我々はフィブロインL鎖遺伝子座へノックインを起こすことに成功した。本講演では、カイコにおけるゲノム編集技術の開発およびその高度化についての現状を紹介するとともに、ゲノム編集を用いた今後の研究の方向性について議論したい。

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昆虫科学・新産業創生研究センター 第 2 回セミナー

日時 2019年10月15日(火)16:30-18:00 (講演 16:30 -17:30 + 総合討論)
会場 九州大学伊都キャンパス イースト 1 号館 E-C-202
講演者 北條賢 先生(関西学院大学)
演題 シジミチョウとアリの共生:その維持メカニズムと進化
要旨
約 6000 種からなるシジミチョウ科の約 75%は、幼虫にアリと相利共生の関係にある。 シジミチョウの幼虫は、体表面に多数の特殊な外分泌腺を持ち、アリに糖とアミノ酸が富 んだ蜜報酬を提供し、その代わりにアリは寄生虫や捕食者から幼虫を保護する。また、一 部のシジミチョウ種では幼虫がアリの巣に侵入し、巣内の資源を搾取する寄生性が進化し ている。一般的に、蜜報酬と防衛を交換する相利共生においてはシジミチョウとアリの間 には利害の対立が存在すると考えられている。シジミチョウがアリに提供する蜜報酬には 少なからずコストがかかるため、シジミチョウはより少ない蜜報酬でアリを誘引する方が 適応的である。一方、アリは質や量がより良い蜜報酬を提供するシジミチョウを防衛する ことで高い利益を得ることができる。そのため、シジミチョウ科に広く見られるアリとの 相利共生は、このような利害対立が何らかの方法で解消されることで維持されていると考 えられる。本講演ではムラサキシジミ Narathura japonica とアミメアリ Pristomyrmex punctatus の相利共生を題材に、アリがどのようにしてシジミチョウに協力するか否かの 意思決定を行なっているのか、さらにはシジミチョウ側がどのようにアリからの防衛サー ビスの安定化をはかっているかを経験的に調べた結果を報告する。シジミチョウとアリの 相利共生がいかに維持されているかそのメカニズムを紹介するとともに、シジミチョウと アリの共生系の進化についても議論したい。

昆虫科学・新産業創成研究センター 第1回セミナー

日時 2019年10月7日 (月) 15:00-17:00(講演15:00-16:00 + 総合討論)
会場 九州大学農学部 (伊都キャンパス) ウエスト5号館 327室
講演者 宮川世志幸 先生 (日本医科大学)
演題「遺伝子治療ベクターの最前線とその生産技術における昆虫工場の可能性」
要旨
現在、遺伝子治療は、治療遺伝子の運び屋であるウイルスベクターの安全性が飛躍的に向上し、実用段階に入っている。世界各国で遺伝子治療用製剤の開発が本格化し、活発に臨床研究が進められている。当初、遺伝子治療の対象疾患は特定の単一遺伝子疾患のみであったが、現在では遺伝子治療技術の発展に加え、疾患研究・ゲノム科学の進歩も相成り、対象疾患も多因子遺伝性疾患を含む複雑な疾患にまで広がりを見せている。対象疾患が多様化したことに伴い、治療遺伝子の運搬役であるウイルスベクターには、複数の治療遺伝子同時発現、治療遺伝子の厳密な発現量の調節、組織標的化といった、より高度な遺伝子発現の制御が要求される。我々の研究部では、そのようなアンメットニーズに対応するためにアデノ随伴ウイルス(AAV)と単純ヘルペスウイルス(HSV)を用いた遺伝子治療ベクターを中心に研究開発を進めている。AAVベクターは、その高い遺伝子導入効率と安全性から現在広く遺伝子治療ベクターとして利用されており、既に臨床応用が進んでいる。一方、HSVベクターはその高い遺伝子導入効率に加え、遺伝子搭載許容量が極めて大きいことから、今後多様化が予想される治療遺伝子発現系のニーズに対して幅広く応えることができる担体として期待されている。本講演の前半では、我々が開発を進める遺伝子治療ベクターシステムを中心に、最新の遺伝子治療研究の動向を概説する。後半では、ウイルスベクターの生産・精製法の話題を提供する。世界各国で遺伝子治療の臨床開発が活発化する中で、遺伝子治療用ウイルスベクターの安定供給できる効率的な生産・精製技術の整備が急務である。ここでは、ベクター製造技術開発における我々の取り組みを紹介するとともに、その中で昆虫タンパク質発現系がどのように応用できるか、その可能性を論ずる。