また、蓄積しているほんの一部のRNAのみが翻訳されることから、葉緑体ではRNAレベルでの加工、翻訳のレベルで最終的な蛋白質合成量、 すなわち遺伝子発現量、が決定されます。
PPR蛋白質がオルガネラ遺伝子の発現を調節することで胚発生、光合成機能、配偶子形成、ストレス応答などの 多様な植物高次生命現象に関わっていることが徐々に明らかになって来ました。 それぞれのPPR蛋白質は異なるRNA分子に結合し、RNAの切断、スプライシング、編集、安定化、翻訳などの 多様なRNAプロセシングを担うことから、遺伝子特異的なRNA機能調節因子であると考えられています。
PPR蛋白質の核酸認識コードの解読により、植物に含まれる数百個のPPRタンパク質がどの遺伝子に結合するのか、ある程度予測できるようになりました。 また、任意のRNAまたはDNA配列に結合するカスタムPPR蛋白質の開発が可能になりました。医療、農林水産業などの様々な生物系産業への利用が期待されます。
しかし、PPR蛋白質の分子機能に関する研究はまだ始まったばかりで、多くの疑問点が残されています。PPR蛋白質がどのように働くのか? なぜ、植物のみでこのような蛋白質が必要になってきたのか?どのように増えてきたのか? これらの研究を通して、植物の核とオルガネラの相互協調(対立)関係の謎に迫るために、さらに研究を発展させています。