蚊による感染症

媒介感染症の状況 (2025年8月14日 更新)
こちらの情報は、WHOや厚生労働省、各種文献などの情報を整理して解説しているものです。

 COVID-19パンデミックの直前の2019年に、世界的な感染拡大が発生しました。コロナ禍においてはやや減少しましたが、2023年以降は再び感染拡大が進んでいます。2024年、2025年は南北アメリカおよび東南アジア、南太平洋諸国で猛威をふるっています。日本でのアウトブレイクは2014年以降発生していませんが、現在の空港検疫等におけるデング熱患者数は当時を超えており、国内侵入リスクは極めて高い状況となっています。 日本の輸入症例のうち、感染推定地域で最も多いのは東南アジア諸国となっています。これは、現地における流行度合いの高さと、日本からの訪問件数が多いことが理由となっています。

 海外旅行後、発症前などの状態で空港検疫を通り抜け、その後、蚊が多く、人が集まるような場所 (野外イベント会場など) を訪れて吸血された場合、国内における感染症アウトブレイクが発生する、というストーリーが考えられます。デングのアウトブレイクが発生した場合、発生直後で場所が特定できていれば、蚊の殲滅によって封じ込めが可能です。しかし、ひとたび感染拡大が進んでしまうと対応は困難になります。日本での主要なデングウイルス媒介者はヒトスジシマカであり、冬には成虫がいなくなるため、たとえ流行が起こったとしても一冬越せば流行は収まると想定されます。

 チクングニヤ熱は2018–2020年のタイにおける大規模アウトブレイクを皮切りに、カンボジア、インド、パキスタンなどで大規模な感染流行が発生し、2025年には中国広東省でも大規模なアウトブレイクが発生しています。我が国における発生リスクはデング熱と同様のメカニズムで説明され、流行地での感染者の帰国、訪日によって国内に持ち込まれ、その後ヒトスジシマカに吸血されることで感染が広がるおそれがあります。近年アジア各国で流行が拡大していることから、国内での流行リスクは高くなっていると言えます。デング熱、チクングニヤ熱共に感染から発症まで数日から1週間ほどの潜伏期間があるため、流行地域で蚊に刺された場合、感染しているかも、と気に留めておくことが重要です。

 日本脳炎は古くから日本に存在する蚊媒介感染症ですが、現在はアジア全域で流行しています。豚やイノシシが主要なキャリアーになっており、コガタアカイエカなどのイエカ類によって媒介され、特に九州では蔓延が激しい状況となっています。幸い、現行のワクチンの効果が非常に高く、人での罹患リスクは小さくなっていますが、いくつか留意すべき点があります。1つ目は、ワクチンを接種していても30年ほど経過するとおよそ半数の人で抗体がなくなっていってしまう点です。2つ目は義務接種対象外となっていた期間があることです。1997–2010年生まれの人、なかでも2002–2009年生まれの人は未接種となっている人もいます。日本脳炎の感染リスクは水田と養豚場が近くにあるところで高くなるため、このような特徴のある地域に住んでいる人、あるいは働いている人は、適切なワクチン接種による予防をすることを推奨します。

 日本脳炎にはI〜Vの5つの遺伝子型があり、現行のワクチンはこのうちI〜IV型に高い効果があります。一方、これまでマイナーだったV型が2018年以降、韓国などで多く見られるようになってきており、流行型のスイッチング (genotype shift) が起きる可能性があります。問題となるのは、このV型については現行ワクチンの効果が限定的であると見られていることで、今後の動向注視と対策が必要となってきます。

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