マダニによる感染症

媒介感染症の状況 (2025年8月14日 更新)
こちらの情報は、WHOや厚生労働省、各種文献などの情報を整理して解説しているものです。

 重症熱性血小板減少症候群 (SFTS) は、野生動物で維持され、マダニの吸血により媒介されるウイルス感染症です. 国内では2013年に最初の感染報告がありましたが、実際にはそれより以前から国内に存在している感染症になります。
 人での感染事例は九州や四国など西日本で多く、発見からの10年ほどは東日本では報告されていませんでした。 しかし、野生動物の調査では東北地方を含めた本州以南で広くウイルスが存在していることが示されており、関東地方や北海道でも患者の報告がなされるようになってきました。感染地域は年々広がっているため、今後は全国で注意が必要な感染症になります。
 感染リスクが高くなるのは、イノシシやシカなどの野生動物が近くにいる中山間地域で、マダニが多くいる農地周辺の草地や緑地といった場所になります。
 感染すると高齢者で重篤化しやすいですが、若年層でも重症化事例が報告されているため、油断のできない感染症です。治療薬として2024年にアビガン錠 (ファビピラビル) が承認され、投与により致死率の低下が期待されますが、それでも死亡に至ることもある感染症であることに留意してください。
 伴侶動物 (ペット) である犬や猫も感染することがあり、特に猫では高い感受性を示します。感染猫では血液や体液中に大量のウイルスが放出されるため、飼い主や獣医師は引っかき傷や噛みつき、粘膜への飛沫接触に警戒が必要です。実際に、感染動物から人への感染事例や死亡事例があります。

 オズウイルス (Oz virus) は2013年に愛媛県で捕獲されたタカサゴキララマダニから初めて見つかったウイルスで、動物実験などから病原性が高いことが示唆されていました。その後2023年には人での感染事例が報告されています。野生動物の抗体調査の結果から、オズウイルスは関東以西に広く分布していると考えられています。人や動物における病理についてはまだ不明な点が多いですが、SFTS同様、マダニ咬傷後の感染症として留意が必要なものとなっています。

 エゾウイルスは2019年に北海道でマダニ咬傷のある患者から発見、分離された新規ウイルスで、過去の保管検体の調査も含めて2014年以降に7件の感染事例があることが判明しています。感染事例では発熱や血小板減少など、一部SFTSと似た臨床所見を示すことから、鑑別が重要になります。感染事例場所は北海道の広い範囲に広がっており、また海外では中国北部の黒龍江省でも感染報告があります
 主要な媒介マダニ種は北海道などの寒冷地や高山地域に分布するシュルツェマダニと見られています。しかし、他のマダニ種からもウイルス遺伝子が見つかっていること、シュルツェマダニは本州以南でも分布していることから、北海道以外の地域での感染機会の可能性は想定しておく必要はあると思われます。

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