骨格筋形成の新常識〜間質が支える筋増殖、分化、発達の理論

骨格筋間質におけるホルモンや糖鎖の具体的な機能とメカニズムの解明に取り組んでいます。

骨格筋間質に分布する間葉系前駆細胞(MPC)を中心とした筋組織恒常性維持機構の解明を目指しています。MPCと筋衛星細胞間の相互作用メカニズムの解析を基軸として、MPCが分泌する生理活性因子の網羅的同定と機能解析を実施しています。加えて、各種ホルモンや成長因子によるMPCの遺伝子発現制御機構についても分子レベルでの詳細な検討を行っています。

MPCは筋線維芽細胞や脂肪細胞への多分化能を有しており、その分化運命決定において糖鎖修飾が重要な制御因子として機能することが明らかになってきました。本研究では、この知見を発展させ、糖鎖を標的とした骨格筋の質的・量的改善戦略の開発を進めています。

また、MPCの機能に影響を与える生理学的因子として、年齢、性別、環境条件に着目した多角的解析を展開しています。加齢に伴うMPC分化能の経時的変化、性ホルモンによるMPC応答性の性差、運動習慣や栄養状態といった環境因子がMPCの糖鎖パターンおよび分泌因子プロファイルに及ぼす影響を系統的に解析することで、個体間の機能的差異を規定する分子基盤の解明を目指しています。

 

ミニ臓器(オルガノイド)で大きな謎を解く

オルガノイド技術を応用し、複雑な生体メカニズムの解明に挑戦しています。


夏場におけるウシの受胎率低下は畜産業界の深刻な課題であり、近年その傾向は特に顕著です。また、栄養状態やストレスが骨格筋に与える影響の詳細なメカニズムも未解明です。従来、実験のための子宮摘出やその反応の直接観察は技術的・倫理的に困難でした。

本研究では、子宮上皮細胞と子宮間質細胞を体外で三次元培養し、生体内環境を模倣した子宮オルガノイド(ミニ子宮)を構築しています。培養環境(温度、pH、ホルモン濃度等)を制御することで体内環境を再現し、オルガノイドの生理学的応答を詳細に解析します。これにより、受胎率低下の根本的原因を分子レベルで解明し、家畜の生産性向上に貢献することを目指しています。

さらに、骨格筋オルガノイドも開発し、筋発達に有効な栄養素の同定、ストレスや飲酒が筋組織に与える影響の解明、骨格筋内脂肪蓄積の分子機構の解析に取り組んでいます。生殖器官と骨格筋の代謝メカニズムを統合的に解析することで、動物の健康と生産性の包括的理解を目指しています。

オスひよこ問題に終止符を

現在、孵化直後に処分されている採卵鶏のオスひよこ。動物福祉と経済効率の両立を可能にし「オスひよこ問題」の解決を目指します。

現在、採卵鶏のオスひよこは孵化直後に処分される現状があります。これはオスひよこが卵を産まず、肉用鶏に比べて成長速度が遅く、気性が荒く飼育しにくいなどの特徴から、経済価値が低いとされているためで、動物福祉の観点から極めて深刻な問題です。孵化途中に胚の性別を判定するIn-ovo sexing技術の開発が進められていますが、様々な障壁があり広く普及するに至っていません。肉質改善を目的とした肉用鶏への外科的去勢も実施されていますが、麻酔管理の困難による術後の高い死亡率や、精巣が腹腔深部にあることによるアプローチの難しさなどの課題があります。

そこで私たちは、免疫去勢製剤の家禽への応用可能性を検討しています。免疫去勢製剤が発育特性や肉質に与える変化、健康への影響を詳細に調査するとともに、最適な接種時期や接種量を検証しています。免疫去勢製剤が生体に及ぼす生理学的変化のメカニズムを解明し、最適な接種プロトコルを確立することで、家禽独自の去勢製剤開発とオスひよこの有効活用を目指しています。

また、採卵鶏では、明るい環境下で活発に動くためエネルギー消費量が増加する一方、暗い環境下では消費量を節約(体重が増加)することが知られています。飼育環境の暗期を長時間設定し運動量を抑制することで、タンパク質の同化を促進し、産肉性の改善が期待されます。

免疫去勢製剤、光線管理技術などの技術応用により、発育特性や肉質の改善、行動変化の観察、最適な処理プロトコルの確立などについて詳細な検証を行い、これまで廃棄されてきたオスひよこを有効活用した持続可能な養鶏業の実現を目指しています。

共同研究・連携(企業・自治体のみなさまへ)

家畜生体機構学分野では、企業や自治体との共同研究を積極的に推進し、大学での基礎研究成果を実社会に還元することを重視しています。民間企業の技術開発ニーズと地方自治体の地域課題解決に対して、学術的知見を活用した実践的なソリューションの提供を目指しています。

当分野の強みと特色
私たちの研究分野は、形態学的解析を得意としています。百聞は一見にしかず。生命現象をカタチとして捉えたい方、インパクトのある写真が必要な方への支援も行っています。
また、スタッフに獣医師免許所有者がおり、動物のハンドリングに長けています。細胞生物学的手法を駆使した基礎研究から、畜産現場での実用技術開発まで、幅広い研究領域をカバーしています。分子レベルから個体レベルまでの多階層解析技術、長年にわたる家禽生理学の専門知識、動物福祉と生産性を両立させる技術開発力を強みとしています。

お問い合わせ
共同研究や技術相談、受託研究にご関心のある企業・自治体の皆様は、電子メールでお気軽にお問い合わせください。具体的な研究テーマや技術的課題についてのご相談から、長期的な研究協力まで、幅広いご要望にお応えいたします。

大学院生・学生・研究生を募集しています

大学院からの入学希望の方へ

当分野では、学外からの大学院生を積極的に受け入れています。研究室訪問では、詳しい研究内容や実際の研究環境、学生の活動状況など、ホームページでは伝わりきらない現場の様子を直接ご覧いただけます。
大学院受験をお考えの方は、事前に指導予定教員との面談が必須となります。研究テーマや方向性について相互理解を深めるためにも、必ず研究室訪問にお越しください。ご希望の方はお気軽にご連絡ください。

修士課程は8月入試で募集定員が満たされることが多く、1月の追加試験(二次試験)が実施されない場合があります。進学をお考えの方は、早めの準備をお勧めします

働きながら博士号取得を目指す社会人の方のご相談も歓迎します。過去にも社会人学生の受け入れ実績がございますので、お気軽にお問い合わせください。

学部の配属希望の方へ
当分野では、学部生の研究室配属を歓迎しています。
研究室見学では、詳細な研究内容、実際の研究設備や環境、在学生の研究活動や日常の様子など、ホームページだけではお伝えしきれない研究室の実態をご覧いただけます。
配属希望の方は、事前に教員との面談を実施しています。研究テーマへの関心や今後の研究の方向性について十分に話し合うことは、充実した研究室生活を送る上で非常に重要です。ぜひ研究室見学の機会を活用してください。見学をご希望の方は、メールで遠慮なくご連絡ください。

九州大学農学部1・2年生の方へ
当分野は動物生産科学コース内のアニマルサイエンス分野に設置されています。入室までには複数の選択段階があります。
将来の進路がまだ明確でない方でも、畜産分野や動物科学など、動物(特に哺乳類や鳥類)の研究に関心をお持ちでしたら、比較検討の一環としてもお気軽に研究室にお越しください。