九州大学大学院 システム生物学 細胞制御工学研究室

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機能水・機能性食品・エネルギー寄附講座

連絡先

〒812-8582 福岡市東区馬出3-1-1
 九州大学大学院 農学研究院 生命機能科学部門 機能水・機能性食品・エネルギー寄附講座
   准教授 富川武記 (TOMIKAWA, Takekii) E-mail:takeki★agr.kyushu-u.ac.jp
   ※メールアドレスの★を@に変更してください

 日本は超高齢化社会化を目前に控えそれに伴う医療、保障や介護等の問題に直面しています。アメリカなどではこの問題に対応する手段として相補・代替医療を取り入れた統合医療が導入され20年前から始まっていますが日本では代替医療に取り組む政府機関がなく、欧米に比し遅れています。機能水・機能性食品・エネルギー講座は水及び食品の研究を通じて生命現象の基盤を明らかにするとともに、水、食物を用いた酸化ストレス関連疾患の予防及び改善に役立つ臨床食品機能学の確立及び機能水・機能性食品を用いた統合医療、代替医療及び予防医療学研究の確立に貢献することを目的としています。この目的を実現するための教育・研究の拠点として、本講座は疾病予防・改善効果を期待できる機能水や機能性食品の探索、効能実証及び作用機序の解明を含む総合的研究を行っています。

 特に私たちは機能水について精力的に研究を行っています。機能水とは、通常の飲料水とは違い生体にとって有用な機能を持っている水を指し、当研究室ではこの不思議な水の科学的検証と証明を試みています。いくつか機能水をご紹介します。

超・亜臨界水

 超臨界水は高温と高圧条件下の水の事で、水なのに有機溶媒(アルコールやアセトン)と同じ性質になってしまい、有機溶媒にしか溶けないような物質がすべて溶けるようになります。またイオン積(水がH+とOH-に電離している量、10-14 mol/L)が通常の水より3ケタも多くなり、加水分解反応が混でるだけで起こるようになり、この水を応用した研究を試みています。

電解水

 家庭用にも市販されている水の電気分解によりできる水で陰極にアルカリ電解水、陽極に酸性電解水ができます。アルカリ電解水は胃腸改善効果、酸性電解水は除菌殺菌効果が証明されており、厚生労働省から認可を得ています。また、虫歯予防、美肌効果等が証明されています。当研究室ではこの水がさらに酸化ストレス関連疾病(ガン、糖尿病、動脈硬化症、アルツハイマー等)を予防、改善することを明らかにし、その機構と効果を解明するための研究を行っています。

溶存水素水

 電解水にも含まれる水素には最近生体酸化ストレス軽減効果を示すことが明らかとなっていますがその理由がわかっていません。例えば、水素を含んだ水を脂肪肝誘発マウスに食べさせると普通の水を飲ませたマウスと比較して明らかに脂肪肝の少ないマウスができます。私たちは水素が新たな生体ガスメディエーターとして機能する事を証明しようとしています。

天然還元水

 ある特殊な場所で採取される天然水に機能水様の効果を示す天然還元水が存在することを明らかになっています。そしてこの天然還元水が持つ効果について科学的エビデンスを持って研究に取り組んでいます。先に書いた水の超臨界状態を人工的に作り出すのは大変ですが、熱水噴出孔の下や地殻深部では簡単に条件がそろいます。そのためそのような環境下の水では通常考えられない化合物が溶け込み特殊な形状になると推測されます。私たちは天然還元水がこのような機序で作られているのではないかと考えその証明を試みています。

 また、この水研究から派生して金属ナノ粒子の生体に対する効果について研究を行っています。その一つが白金ナノ粒子の研究で、金属ナノ粒子の持つ新たな機能及び生体有効利用を目的として研究を行っています。金属ナノ粒子の一つである白金ナノ粒子は水素の分子結合を容易に解離し原子状様水素になることが知られています。私たちはこの原子状様水素が強力にガン細胞死を誘導することを明らかにしました。そのため現在ではこの水素と白金ナノ粒子を用いた新しいガン治療法の開発を試みています。
 当講座では機能性食品・機能水の既知、未知の優れた効果を細胞及び分子生物学的手法によって明らかにすることで機能性食品・機能水が広く普及し、たくさんの人たちが健康でいられるようになるため日々研究を行っています。

健康に良い水に関する研究とナノ医学への応用

 水は生命体にとって最も重要な物質であるが、いまだにその機能が充分に解明されていない不思議な物質でもある。我々は食物を摂らなくても一ヶ月以上生存することができるが、水を飲まないと3日で生命が危機にさらされ、1週間程度で死亡する。人体からは絶えず一定量の水が失われていくため、毎日新鮮な水を摂取する必要がある。このことから、人体は水が入っては出ていく一種の川であると考えることができる。人体の中の水は心臓のポンプ作用により激しく流れている。最近、この水の流れや分子レベルでの動きが臓器の形の維持や細胞機能の活性化に重要な働きをしていることが明らかになってきた。水の機能は以下に示したように主に3つに分類できる。

 
  1. 水分子そのもののもつ機能  
      水の流れ、生体分子への水和、水のブラウン運動によるゆらぎ、水のクラスター構造など、水は人間の意識とも関わっている。
  2. 水分子に由来する物質の機能  
      水素、活性水素、酸素、活性酸素
  3. 水に溶解した物質の機能  
      ミネラルナノ粒子、ミネラルイオン、抗酸化物質、酸化物質、栄養物質など
 

 飲料水の電気分解によって陰極側に生成される電解還元水(アルカリイオン水とも呼ばれている)は医療用の水として厚生労働省が認可しており、胃酸過多、腸内異常発酵、食欲不振、消化不良、慢性下痢、便秘などの胃腸症状に効果があるとされている。電解還元水の安全性と医療効果については医薬品と同様なインビトロ試験、ラットやサルを用いた安全性試験、ヒトでの2重盲検臨床試験などで確認されている。

 当研究室では1996 年にガン、糖尿病、動脈硬化症、神経変性疾患、アレルギー症など酸化ストレス関連疾患の患者が電解還元水を日常的に飲用することにより症状が改善されたという一部の病院からの報告に注目した。多くの疾病に共通する原因あるいは増悪因子が活性酸素であること及び電解還元水は分子状水素を多量に含むことに注目し、電解還元水中の不活性な分子状水素が何らかに機構により活性化されて生成する活性水素により体内の過剰な活性酸素が消去されるために、様々な酸化ストレス関連疾患が改善されるという「活性水素還元水説」を提唱した。その後、電解還元水が電極由来の白金ナノ粒子を含有することが明らかとなり、白金ナノ粒子の触媒作用により水素分子から活性水素が発生するだけでなく、白金ナノ粒子自体が活性酸素種を直接的に消去する作用をもつという「活性水素ミネラルナノ粒子還元水説」を提唱した。

   

 水道水由来の電解還元水は様々な無機及び有機化合物を含むことから電解還元水モデル水としてNaOH 水由来電解還元水を用いて、インビトロでの還元力及び抗酸化力、動物培養細胞や実験動物レベルでの抗腫瘍効果、抗糖尿病効果、抗動脈硬化症効果、抗神経変性疾患効果などを明らかにしてきた。また、天然水の中にも、大分県日田市の地下水(商標日田天領水)、ドイツのノルデナウ水、フランスのルルド水なども還元力を持ち細胞内の活性酸素を消去する天然還元水であり、抗糖尿病効果を持つことを明らかにした。日田市天然還元水については実際に中国吉林省長春市の市民病院や福岡市の福岡徳洲会病院で臨床試験がなされ、ヒトで抗糖尿病効果を持つことが実証されている。また、ドイツ・ノルデナウ水については医師Z. Gadek 博士との共同研究を行い、411 人の2 型糖尿病患者を対照にした臨床試験で症状が改善されることを報告した。広島大学大学院医歯薬総合研究科で2008年11月~2009年9月に実施された100名のボランティアを対象にした抗メタボ効果無作為二重盲検臨床試験でも、日田市天然還元水を一日約2リットル飲用することにより、血圧の低下、便秘の改善、総コレステロール値の低下、LDLコレステロールの低下、アディポネクチン(善玉サイトカインの一つ)の増加、GOT・GPT・γ-GTPの低下、空腹時血糖値の低下、中性脂肪の低下、動脈硬化指数の低下、レプチン(善玉サイトカインの一つ)の増加、尿酸値の低下、尿中8-OHdG(遺伝子の酸化ストレスマーカー)の低下などの有意な効果が認められた。

 一方、2007 年に分子状水素がヒドロキシルラジカルなどの活性酸素を直接消去し、脳梗塞モデルラットの症状を改善するという論文が報告されて以来、水素分子の酸化ストレス関連疾患モデル動物における改善効果に関する論文が多く発表されている。我々は任意の混合ガス雰囲気下で細胞培養できるガスインキュベーターを開発し、水素分子の培養細胞に及ぼす効果を詳細に検討した。その結果、分子状水素が細胞内の抗酸化酵素群を誘導するレドックス制御機能を有し、間接的に細胞内活性酸素を消去するという機構を明らかにした。また、線虫の寿命に及ぼす電解還元水の効果を明らかにするために、新しい水培養法を開発し、水道水由来の飲用可能なTI-9000 電解還元水及びNaOH 水由来のTI-200 モデル電解還元水がともに線虫体内の活性酸素を消去し、線虫の寿命を延長させることを明らかにした。

   

 これらの還元水研究に関連して、白畑教授は2001 年韓国学術会議特別講演、2002 年米国NIHセミナー、2007 年及び2009 年にカロリンスカ研究所招待セミナー(スウェーデン生理学会後援)を行った。また、2009 年よりカロリンスカ研究所神経科学科神経毒性学研究室との間で、電解還元水による神経変性疾患の抑制に関する共同研究が開始された。

   

 


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