主要研究項目
□ 老化・寿命制御の分子機構の解明とアンチエイジング創薬への応用(片倉)
最近の研究から、老化・寿命を制御する分子基盤が徐々に明らかとなり、抗老化・延命を実現する分子メカニズムについての報告が相次いでいる。当研究室においてはこれまで、ヒト培養細胞を用い細胞老化誘導因子およびシグナル経路に関する解析を進め、細胞老化研究という観点から老化を制御・誘導するシグナル・因子群の分子基盤を明らかにしてきた。そこで今後は、これら因子群の機能性およびクロストークを明らかにすることで、抗老化・延命実現のためのターゲット分子としての検証を行っていく予定である。さらに抗老化・延命を実現するアンチエイジング活性を有する因子の探索とアンチエイジング食品開発に向けた研究を行う予定である。具体的なテーマは、1)ガン細胞の無限寿命性を保証しているテロメラーゼの制御機構の解明、2)細胞老化誘導シグナルの分子基盤の解明、3)寿命制御の分子基盤の解明、4)老化に依存した疾患発症の分子機構の解明とその予防・治療に向けた試み、5)アンチエイジング活性を有する因子の探索、6)アンチエイジング食品の開発、等を予定している。
□ 抗酸化ストレス疾患因子の探索と臨床食品機能工学への応用(照屋)
私たちの体は毎日飲む水と食べ物の成分によって作り変えられています。水分とともに取り入れられた食物成分は体内で分解され、自身の構成成分として作り変えられます。取り入れては排出する動的平衡状態にある私たちの体は毎日摂取する水と食べ物の質に大きく影響されています。病気を防ぐ予防医学の基本は良い食べ物・適度な睡眠・適度な運動であるとされています。近年、活性酸素が老化やガン、糖尿病、動脈硬化症、神経変性疾患などの酸化ストレス疾患に密接に関連していることが明らかになりました。健康を維持するには体内で発生する過剰な活性酸素を適切なレベルに制御することが必要です。ビタミンC・E・A、ポリフェノール類、カテキン類などの従来の食品中の抗酸化物質は水素原子(活性水素)または電子を放出した後は酸化剤として働いてしまうために、その効果が限定的であることが問題になっています。私たちは安定な還元力を示し、酸化剤になりにくい海藻由来フコイダン及び発酵乳ケフィアの成分に注目しています。また還元力のみを主として示し、酸化剤になりにくい新しい抗酸化物質として、水の電解分解で生成する水素及びミネラルナノ粒子にも注目しています。こうした有用な機能性食品成分を利用して、老化防止及び難治性の酸化ストレス関連疾患の予防・改善に役立つ臨床食品機能工学の確立を目標に研究を行っています。