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ツマアカスズメバチの営巣を確認[2014年5月]

2014年5月11日から13日にかけて対馬へ行き、ツマアカスズメバチ女王蜂の活動状況を見てきました。今回は「スズメバチ類の確認」に集中した調査を行いました。その結果・・・

  • 多数のツマアカスズメバチ女王を確認

    (観察数は70例以上を記録。働き蜂としか思えない大きさの個体も目撃)

  • 営巣場所を2ヶ所確認し、うち1ヶ所で巣を採集

    (ツマアカスズメバチの創始巣は日本ではほとんど観察されていません)

人の気配を察知する能力に優れた女王蜂

ツマアカスズメバチの女王はやはり俊敏で、日本土着のスズメバチの女王蜂たちよりも人の接近に敏感でした。そのため、土着のスズメバチ女王のように簡単に叩き落とすことは困難だと思われます。

蜂洞への飛来

ミツバチを狩りに飛来したツマアカスズメバチの女王蜂は、時にホバリングをしながら帰巣個体を狙います。前回の調査中は1例だけでしたが、今回は数多く確認しました(16例)。今の時期はミツバチ側が油断をしているのか、十分な防衛体制を取っていないため、ツマアカスズメバチによるミツバチ捕獲効率はとても高いものでした。

ホバリング中のツマアカスズメバチ女王

背中に花粉が付着していることも

また蜂洞に頻繁に飛来するのですが、そのうちの少なくとも一部はミツバチを捕獲することが目的ではなく、蜂洞に塗られた蜜を舐めに来ていました。対馬の伝統的養蜂では、ミツバチを誘引する目的で、蜂蜜と焼酎などを混ぜた液を空の蜂洞入り口や内部に塗ります。

ミツバチ誘引用の蜜を舐めにやってきた
ツマアカスズメバチ女王

ミツバチの巣から流れ出た蜜を舐める
ツマアカスズメバチ女王

そのほか、訪花する女王蜂も確認しました。ミツバチは幼虫の餌として捕獲しますが、自らの餌源として蜜を吸うために訪花もします。

隠れた場所に営巣

それなりの時間を割いて営巣場所に関する調査を行いました。その結果、ツマアカスズメバチが営巣している場所を2ヶ所発見しました。

営巣場所1

ススキの株元(モグラが作ったと思われる穴の中)

営巣場所2

植物が生い茂った場所

ツマアカスズメバチをはじめとして、全てのスズメバチは越冬から目覚めた新女王蜂が1匹で巣を立ち上げます。巣作りはもちろん、子育て、掃除、獲物集めなど、全ての仕事を女王蜂が単独で行います。働き蜂たちが羽化し出すと、徐々に仕事を分担してもらうようになります。

働き蜂がいない今の時期は防衛力がほとんどないため、女王蜂たちは営巣場所として目立たない隠れた場所を選びます。ツマアカスズメバチも同様です。

見つけにくい場所にある上に、巣を出入りする個体は女王蜂1匹なので、創始巣の発見は容易ではありません。今回は幸運にもそのような創始巣を発見できたわけです。

ツマアカスズメバチの創始巣

巣はススキの株元にあり、おそらくモグラが作ったと思われる穴の中に営巣していました(営巣場所1)。

とても薄い素材でできていて、柔らかい触り心地でした。大きさは野球のボールより2周りほど小さいものでした。

巣があることを確認したもう1ヶ所(営巣場所2)では、藪が深かったことと飛行機の時間が迫っていたこともあって、女王蜂の往来は確認したものの、巣そのものを確認するには至りませんでした。

ツマアカスズメバチは土着種より早く活動を開始する?

巣ではまだ働き蜂は羽化していませんでしたが、すでに3個体が繭を紡いだ状態となっていました。程なく働き蜂が羽化する段階に進むことでしょう。これは、土着スズメバチがまだ本格的に活動を開始したばかりで、働き蜂が羽化するのはまだ少し先になるのとは異なっているように思えます。

4月上旬には女王の目撃情報があるようで、ツマアカスズメバチの越冬女王蜂は春の早い段階から活動を開始している可能性があります。

また、女王蜂にしてはずいぶん小ぶりの個体も目撃したのですが、もしかしたらすでに働き蜂が羽化した巣があるのかもしれません。残念ながらその個体は採集し損ねたので、本当に働き蜂なのかどうかを確定できませんでした。

やがて働き蜂の数が増え、巣をどんどん大きくする必要が出てくると、ツマアカスズメバチは巣の引っ越しをします。対馬でどの時期に引っ越しをするのかは不明ですが、おそらく初夏以降になるのではないでしょうか。何度引っ越しを繰り返すのかも不明ですが、引っ越し先は木の上など目立つところとなりますので、巣が人の目に触れやすくなります。

蜂洞に飛来したその他のスズメバチ

蜂洞に飛来した大多数のスズメバチはツマアカスズメバチでしたが、オオスズメバチも時にやってきました。キイロスズメバチも蜂洞に塗られた蜜の匂いに誘われたのか、1例だけ蜂洞に飛んできたのを目撃しました。

オオスズメバチ

キイロスズメバチ

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