蛍光変換タンパク質のバルク光変換
蛍光蛋白質を用いた解析は、現在細胞機能の解析に多用されています。その中でも、蛍光変換蛍タンパク質の利用や、光褪色後蛍光回復法は、細胞中におけるタンパク質の移動や拡散の解析に使われている手法です。しかし、顕微鏡下での光刺激や蛍光変換の場合、多数の細胞についての解析が困難であるという欠点があります。そこでこの欠点を克服するために、私たちは、蛍光変換タンパク質の一つであるKikume Green Red を融合させたタンパク質を発現させているタバコ培養細胞BY-2中のKikume Green Redの蛍光をバルクで変換する方法を開発し、この方法を用いて細胞増殖過程におけるゴルジ装置の増加が、どの程度既存のゴルジ装置の分裂により、どの程度新規のゴルジ装置の形成によるかについて解析しました (Abiodun & Matsuoka, PCP 54 541-554, 2013) 。 |
このページでは、その際に用いた,バルクでの蛍光変換に関する手法及び装置について、詳細を紹介します。
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<蛍光変換装置の作成>
ここで作成する簡単な装置は、恒温室に設置することを想定しています。ブラックライトから熱が出るので、恒温室が無い場合は、冷却機能を持つ恒温チャンバー内に装置を組み立てる必要があると思います。
材料
・ブラックライト 東芝 H100BL-L (ランプの出す光スペクトルは,ここを見て下さい)
・投光器 ブラックライト用 東芝ライテック キャドミラー HT-4051X
・ロータリーシェーカー バイオクラフト BC-740
・投光器取り付け用スチールラック(巾90cm):実験台でも問題無いと思われます
・クランプ 2個
・クランプでの設置の際に厚さを調節するための木の板: ラックの板の厚さによっては、必須ではありません
・網ラック(枠作成用、フラスコ固定用):100円ショップで買ったもの
・針金(適当量、網ラック組立用)
・アルミ箔,ガムテープ
組立て方法
網ラックを、ロータリーシェーカーの架台に乗るように,正面と下面を開けた状態に箱形に曲げます。この際、フラスコの固定ができるように、中間に網ラックの穴を大きくした段を設けます。今回使うシェーカーを用いると、2本の300 mlフラスコが同時に震盪可能です。
曲げた網ラックの内側(上、横、後)に、光を乱反射するようにしわを付けたアルミ箔を貼付けmす。外側にも、破れにくくするために貼付けていますが、必須ではありません。
スチールラックの片側に、アルミ箔付きラックを置きます。
反対側に、木の板とクランプを用いて,ランプをセットした投光器を取り付けます。
投光器の先端とシェーカーの間が10 cm以上離れていることが、ランプ由来の熱を逃がすために必須です。
完成品は、次のようになります。
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<蛍光変換>
光をあてているときは、次のような様子です。下の写真は、ブラックライトの光を強調するために部屋を暗くして撮影したものですが、蛍光変換の際に、蛍光灯の光があっても問題ありません。
ブラックライトを照てる時間は、発現させている蛍光蛋白質と発現量により異なります。BY-2細胞で発現させたNtP4H1.1-mKikGRの場合は、震盪しながら3時間の照射が必要でしたが、別のKikumeとの融合タンパク質の場合、1時間でも十分なものもあります。従って、どの程度の照射時間が必要かは、個々の実験においてそれぞれ決める必要があります。 また、寒天培地上のカルス等に照射する場合は、シャーレを斜めから垂直にセットし、震盪せずに照射しています。
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