九州大学大学院 システム生物学 細胞制御工学研究室

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エッセイ 「水のこころ」

第28話 科学と合理的な死生観

 筆者が高校生の頃、人間は死んだ後どうなるのだろうか、死んだらすべてが終わりになるのであれば、努力する意味はないのではないかという疑問が頭に浮かびました。生死の意味を知りたいと思い、大学に入学した後もキリスト教、仏教、心理学、哲学などを学びました。27歳の頃、72歳の恩師山藤一雄先生に師事して、人間の脳の記憶、思考、意識などの高次脳機能を解明しようとする研究に取り組みました。
 私たちが住んでいるこの宇宙には自由に制御できる縦、横、高さの3次元のものさしと自由にはならない時間というものさしがあります。物理学者はこの3次元世界に重なって、4次元、5次元、6次元という高次元の宇宙が存在すると考えています。4次元の世界は時間が自由に制御できる世界であり、1000年後に生まれる人と1000年前に生まれた人が話をすることができる、あるいはテニスボールを破らずに表と裏がひっくり返せるような空間がゆがむ世界であると考えられています。最新の物理学では地球は10次元世界であり、私たちの3次元の空間に多次元の宇宙が小さく折りたたまれて存在していることを素粒子衝突実験で証明しようとしています。  
 私たちの3次元宇宙では永遠に安定な構造物はありません。何も努力しなければすべてが無秩序の方向、自由エネルギーが低下する方向に進んでいきます。私たちはこうした宇宙の法則に逆らって高度に秩序だった構造物である体を毎日飲む水や食べ物のエネルギーを使って作り上げています。しかし、その体も次第に老化し、力を失って死を迎えるようにあらかじめプログラムされているように思われます。その一方で、心あるいは魂とも呼ばれる私たちの意識エネルギーは老化しないのではないかと考えられます。小さいときから現在までの知識や経験が最終的には意識エネルギーに蓄えられ、成長し続けるように見えます。
 てんかんなどの発作で一時的に意識がなくなる病気があります。しかし、そうした場合でも車を運転して自宅に帰り、車庫入れをして家に中に入っていくぐらいのことは平気でできる極めて精巧なロボットが私たちの肉体であると考えられています。そこで、筆者は人間の体は肉体と肉体に出入りする意識エネルギーからできており、肉体が死を迎えると意識エネルギーは肉体から離れ高次元の世界に戻っていくのではないかという仮説を立てています。仏教の輪廻転生の思想に近い考えですが、そう考えることで、この世で起こるできごとを合理的に理解することができます。人々の環境や運命は様々であり、一見この世は極めて不公平な矛盾に満ちた世界のように見えます。しかし、意識エネルギーが様々な経験をして成長していくためにこの3次元世界が存在し、この世での生き様のつけがあの世で精算されると考えるとこの世の存在意義が理解できます。科学がこうした宇宙の存在様式を解明できれば、私たちはもっと善い合理的な死生観を持って生きていくことができるようになるのではないかと考えています。
 私たちが研究している水は意識エネルギーが宿るのに最も良い物質なのかもしれません。人々を救いたいという高い意識を持ったエネルギー水が実は還元水なのかもしれないと考えています。

(2014年4月15日火曜日)

第27話 液晶水と水の記憶

 2013年10月22日から25日までブルガリアの首都ソフィアに世界中の水の研究者が集まり、第8回「水の物理学、化学、生物学会議」が開催されました。会議の中心議題は水の持つ記憶作用でした。最近、ワシントン大学のジェラルド・ポラック教授らが電気を帯びた物質の周りの水が数百マイクロメートルにわたって液晶化することを明らかにしました。氷の水、液体の水、蒸気の水に続く第4番目の相である液晶水は通常の水に比べてより高い秩序を持った水であると考えられています。液晶水は電気エネルギーを蓄えることができ、液晶水の層とその外側の層に電極を差し込むと電気が流れます。水に光、とくに赤外線を照射すると、液晶水の層が数倍に増加することから、水が環境中の微弱エネルギーを吸収することによって液晶水を生み出すことが推測されています。水は光のエネルギーを電気エネルギーに変換する働きを持っています。
 液晶カラーテレビモニターでは薄い板の間に封入された液晶物質の向きを電気信号によって変化させることで3原色の光の通過度を変えることによりカラーを表示しています。テレビの静止画像から分かるように液晶物質はある瞬間の情報を長く記憶することができます。私たちの体を作っている細胞の大きさは数マイクロメートル程度です。液晶水の層のサイズは溶解しているイオンの濃度が高くなるにつれて減少し、生体内のイオンの濃度ではわずかに数ナノメートル程度になります。一方、細胞の中はタンパク質などの電気を帯びた高分子がひしめいている状態になっており、高分子の間には水分子が平均7個程度しかなく、水の大きさが0.3ナノメートルですので、その距離は2ナノメートル程度であると推測されています。このことから、生体内の水はほとんどが液晶化していると考えられています。 
 エイズ(後天性免疫不全症)に関する研究で2006年にノーベル生理学・医学賞を受賞したLuc Montagnier博士は会議の中でエイズウイルスの感染に関係する短い配列の遺伝子DNAの作用によって創られた特有の構造の液晶水がエイズ感染を助長する電磁波を発信するという驚くべき発見について話をされました。水に「ありがとう」と声をかけると美しい結晶ができ、「ばかやろう」という声をかけるときたない結晶ができるという江本勝氏の研究結果がロシアの科学者らによって確認され、会議では水が人間の意識を反映するという江本氏の水の霊性に関する先駆的業績に対し深い敬意が寄せられました。
 一方、液晶水は通常の水の中にも存在しており、電気分解で作成する高い還元エネルギーを持った電解還元水では液晶水の存在比率が高まっていると推測されています。正常細胞では秩序だった水の割合が約60%であるのに対し、ガン細胞では約20%であると言われています。電解還元水は液晶水の存在比率が低いガン細胞に作用して、細胞内の水をより秩序の高い水に変化させることによりガンの悪性の性質を抑制するのかもしれません。生命の源である水の驚くべき性質が次第に明らかにされつつあります。

(2014年4月15日火曜日)

第26話 高機能水とカロリンスカ研究所セミナー

 筆者は27才のときに、72才の山藤一雄九州大学名誉教授に直接師事し、脳の意識、記憶、思考のメカニズムを解明する研究に4年間取り組みました。山藤先生はウイルスという生命体が遺伝子という物質から産生されるというプレウイルス説を世界で初めて提唱し、Nature誌に10報論文を発表され、九州大学の100年の歴史の中でも最も独創的な研究者であったと評価されています。山藤先生からカロリンスカ研究所を訪問したときのことや、ノーベル賞授賞式に参加したときの話をよくお聞きしました。
 2007年に筆者はカロリンスカ研究所にSten Orrenius名誉教授(元医学部長、元環境医学研究所長)により初めて招待され、健康に良い還元水に関する研究を紹介しました。セミナー終了後、毒性学研究室のBoris Zhibotovsky教授と共同研究者のSandra Ceccatelli教授を紹介していただきました。Zhibotovsky教授から、Orrenius名誉教授はノーベル生理学・医学賞候補者選考委員会(Nobel Committee, 定員5名)の委員を15年間も務められた先生であると教えて頂きました。Orrenius名誉教授は筆者をご自宅に招待して下さり、奥様といっしょに夕食をご馳走になりました。2009年6月にスウェーデン生理学会後援の第2回目の招待セミナーがCecatelli教授の主宰で行われました。このときも、多くの教授の先生方が参加して下さり、1時間半にわたって熱心な討議が行われました。翌日、たまたまお会いした教授の先生がわざわざ寄って来られ、期待しているので頑張りなさいと励まして下さいました。第3回目のセミナーは2009年5月にZhibotovsky先生の主宰で行われました。このときはがん治療に利用されているフコイダンの作用についても話をしました。Orrenius教授は「4年前に比べて研究が大変進んでいる。特に活性水素の働きが興味深い。フコイダンのがん抑制作用の研究もがん治療において重要だ」と講評して頂きました。2013年6月28日にCeccatelli教授主宰の第4回目の招待セミナーを開催しました。このセミナーでは水素と還元ミネラルの作用機構の話をした後、活性水素還元水説に続く挑戦的な仮説として液晶水—意識エネルギー相関仮説を提唱しました。これは山藤先生のときに研究した意識の実態を脳の液晶水と意識エネルギーとの相互作用により説明する新しい仮説です。この仮説の証明により水がエネルギー物質であり、生命エネルギーと密接に関連することが明らかになるとともに、その研究成果は健康に良い高エネルギー水の開発にも役立つものと思っています。Ceccatelli教授のご主人は腎臓内科の医師です。セミナーの翌日は土曜日でしたので、午後からヨットでのセーリングに招待され、夜はご自宅で液晶水—意識相関仮説についてご夫妻と熱心な議論を交わしました。
 日本では超党派の国会議員により2013年5月に「高機能水を普及する議員連盟」が創立され、医療費削減に向けて、健康に良い水を世界中に広めていく動きが始まっています。 

(2014年4月15日火曜日)

第25話 活性酸素を消去する微量の白金ナノ粒子

 私たちが生きていくためには空気中の酸素が不可欠です。ではその酸素は何に由来するのでしょうか。答えは水です。植物が太陽の光を利用して水を分解して水素を取りだし、空気中の炭酸ガスに付加することでデンプンのようなエネルギー物質を作り出します。一方、植物は水の中にあった酸素を空気中に吐き出します。私たちはその酸素を体内に取り入れて、もともと水の中にあった食物成分中の水素を引き抜いて、酸素と反応させて水にしています。その過程で出てきた水素のエネルギーをATP等のエネルギー物質に蓄えることで様々な活動を行っています。水は身体の6~7割を占める大切な構成成分ですが、それだけでなく、私たちの生きるエネルギーの源となっている根源的なエネルギー物質であると言うことができます。
 呼吸で取り入れた酸素を用いて食べ物の成分を体内で燃やすときに数%が激しい酸化力を持つ活性酸素になってしまいます。この活性酸素による障害が蓄積すると、体の老化が早まり、がん、糖尿病、動脈硬化症などの様々な酸化ストレス関連疾患が発症します。電解還元水はこうした酸化ストレス関連疾患の予防と症状緩和に効果があることが明らかにされています。私たちは電解還元水の作用機構を明らかにする研究において、電解還元水整水器で使用している白金電極から微量の白金ナノ粒子が溶出することを見出しました。白金は高価な希少金属ですので、電解装置ではチタン電極の表面に白金を電気メッキした電極を使用しています。白金電極の表面を電子顕微鏡で観察するとでこぼこしています。おそらくでこぼこした白金電極表面で電流の不均一な流れがあり、白金が微量ながら溶出してくるものと思われます。その量は0.2から2.5 ppb(10億分の一量)程度のごく微量です。
 私たちは白金ナノ粒子が活性酸素を消去するSOD酵素様活性、カタラーゼ酵素様活性、最も激しい活性酸素種であるヒドロキシルラジカルを消去するビタミンCなどの抗酸化物質様活性を合わせ持つ多機能抗酸化物質であることを明らかにしました。さらに、白金ナノ粒子は活性の弱い水素分子を活性水素に変換する作用を持っています。水素分子と白金ナノ粒子が共存する場合には白金ナノ粒子表面に常に活性水素が存在する状態になり、水中に安定的に活性水素が存在するのと同じ状態を生み出すことができることを確認しました。さらに、2 ppbの白金ナノ粒子が線虫の寿命を有意に延長させることや、1 ppbの白金ナノ粒子が線虫体内の活性酸素を有意に消去できることを明らかにしました。最近、私たちは筋肉細胞に対して白金ナノ粒子が10 ppm(百万分の一の量)でも細胞毒性を示さない安全なナノ粒子であることや、1 ppbから10 ppbの極微量の白金ナノ粒子が細胞内活性酸素消去作用、抗酸化酵素遺伝子の発現誘導作用、重要な抗酸化物質である還元型グルタチオンの濃度も増加させる作用などを持つことを明らかにしました。   
 電解還元水中に豊富に含まれている水素分子も細胞に酸化ストレスに対する耐性を賦与する作用があります。作用機構が明らかになってきた電解還元水が世界中に広まり、健康な人たちが増えることを願っています。 

(2014年4月15日火曜日)

第24話 科学における簡単な問題と難しい問題

 生とは何か?死とは何か?いま思考している自分という意識とは何か?心や魂は存在するのか?人間が死んだ後も意識(魂、心)は残るのか?死後の世界は存在するのか?こうした問題は科学の対象としては通常取り上げられない。科学は証明可能な事柄を取り扱い、客観的方法を用いて宇宙の諸現象を明らかにする学問であるので、主観的な活動である心や意識の働きを科学的に証明することは難しいと考えられているからである。
 これまでの科学の手法を使えばやがては解決できるだろうと思われる問題を「科学における簡単な問題」と呼ぶ。これに対して、心とは何か、意識とは何か?記憶とは何か、想起(思い出すこと)とは何か、意識と高次脳機能との関係はどうなっているのかなどの現代科学を持ってしてもすぐには解決の見通しが立たない問題を「科学における難しい問題」と呼ぶ。この難しい問題に果敢に取り組んだのがDNAの2重らせん構造を発見したフランシス・クリック(1916~2004)である。クリックは意識を物質的に解明しようと試み、視覚に関係する脳の回路を詳細に調べた。その結果、視るという高次脳機能の一つの機能だけでも莫大な数の神経回路が関与していることが明らかとなった。遺伝子と同様に部品である神経回路の働きをいくら詳細に調べても統合的な脳機能は分からないではないかと思われる。
 しかし、最近の分析技術の進歩によりかつては科学の対象となりえないと思われていた意識の研究も状況が変わりつつある。MRI(核磁気共鳴画像解析法)は組織の中の水の働きを水素の状態の違いを調べることで解析できる。脳においては部位によって機能が異なる「機能局在」があることが古くから知られている。機能MRIと呼ばれる画像診断法を用いて、意識活動と連動して脳の組織の血流、すなわち水の流れが瞬間的に変化する現象を解析することができる。応答がまったくないために意識があるかどうかも分からない植物状態の患者に「あなたがテニスをしているところを思い浮かべて下さい」と問いかけると、健常人と同じ脳の部位の活動が活発になることが2004年に機能MRIで明らかにされ、脳の中の水の動きと意識活動が密接に関連していることが示唆されている。脳に損傷を受けたために片目が見えなくなった患者が半年くらい経つと見えないはずの目で対象物を追えるようになる「盲視」という現象がサルやヒトの実験で明らかにされている。また、物をつかもうとすると脳に手を動かすための準備電位が発生する。被験者が物をつかもうと決意して実際に手を動かすまでに0.2秒かかるが、脳の準備電位は0.5秒前に発生していることが明らかにされた。行動は自分が決めていると思っている感覚は実は幻想であり、自分の本当の意識は意識されていない潜在意識(本意識)にあるのかもしれないとも推測されている。
 近年、水がレーザー情報を発信する情報伝達物質として極めて重要な働きをしていることが明らかとなってきた。水・意識・脳機能との相関を明らかにすることで、水に意識エネルギーが宿るという現象を解明し、細胞・組織の統合的な働きを支えている意識(生命)エネルギーの存在を明らかにしていきたいと考えている。

(2013年5月7日火曜日)

第23話 遺伝子増幅法を発明したケリー・マリス博士

 2004年5月23日にサンフランシスコで開催された世界インビトロ生物学会議で、PCR法(DNA合成酵素連鎖反応法)という遺伝子増幅法を発明して1993年にノーベル化学賞を受賞されたケリー・マリス博士にお会いしました。同氏はその会議であらゆるウイルスや病原菌の脅威に対抗できる新しい「化学制御免疫法」に関するアイデアについて熱心に講演されました。会議終了後、著者は同会議を共同主催する日本動物細胞工学会の会長として、同氏と話をする機会がありました。同氏は自分のアイデアのすばらしさをとうとうと話されました。著者はアイデアは面白いけれども技術的に実現可能かどうか疑問を感じると質問しました。マリス博士はその年の夏には良い実験結果が得られるだろうと話しておられましたが、特にセンセーショナルな報道はなかったため、その後の業績の追跡は行わなわずにいました。しかし、同氏は着々と研究を進めておられたようで、最近、Altermune社を設立され、マウス実験で炭疽菌による死を完全に防ぐことができたことを発表されたようです。
 ウイルスは非常に早く変異するため、生体の免疫系の対応が間に合わず世界的なウイルス病の流行をしばしば引き起こします。また、抗生物質の出現は劇的な感染症の減少をもたらしましたが、最近では抗生物質が効かない多剤耐性菌の出現が脅威をもたらしています。現在のやり方では近い将来感染症が抑制できなくなるではないかと危惧されています。マリス博士は豚の心臓弁には何百万ものα-GAL抗原があるため、ヒトの体内で強力な免疫排除反応が起こることに注目しました。一方、PCR法ではあらゆる配列をもった短いDNA鎖のライブラリー(遺伝子集団)を迅速に作製することができます。DNA鎖は一定の形を取ることができるため、特的の抗原に結合することができます。これをDNAアプタマーと呼びますが、非常に大きなライブラリーを予め作製し、未知の病原菌やウイルスと反応させることにより、特異的に結合するDNAアプタマーを選び出すことができます。この特異的DNAアプタマーにα-GAL抗原を結合させたDNAアプタマーを医薬として利用すると、特定のウイルス、病原菌やガン細胞を免疫系の細胞が強力に攻撃し排除することができると考えられます。実際に、非常に強い毒性を持つ炭疽菌を感染させたマウスにα-GAL-DNAアプタマーを投与したところ、マウスは100%生存したという実験結果を発表しています。
 マリス博士は大の女好きでPCR法の発想も恋人とのデート中にひらめいたという話は有名です。そのほか、宇宙人に出会った話や時空間旅行をする女性と出会った話なども同氏の著書「マリス博士の奇想天外な人生」(福岡伸一訳、ハヤカワ文庫)に詳しく書かれています。生物学を専門とする同氏が学生時代に「我々の宇宙のどこかでは時間が未来から過去に流れているかもしれない」という物理学に関する論文をネーチャー誌に投稿したところ受理されたという話もまた奇想天外なことだと思います。マリス博士のお話は既存のワクにとらわれずに自由に発想することの大切さを感じさせます。

(2012年10月15日月曜日)

第22話 人間の欲望と水のこころ

 人間は何かをしたいという欲望があるから生きています。人間の最も基本的な欲望は「生きたい」という欲望です。しかし、それと同様に「死にたい」という欲望も心の中にあります。死への欲求が生への欲求よりも勝ると人は自殺してしまいます。生きたいという欲求は生まれた時に、両親や回りの方から生まれてきたことを喜んでもらい、さらに成功体験を積み重ねることによって培われていきます。
 欲望を心理学的に分類すると、まず、生存のために必要な食欲、睡眠欲、敵から身を守る本能、性欲、集団欲などの生物学的な欲望があります。この欲望には快・不快の感情が伴います。その上に、攻撃欲、依存欲、自己主張欲、逃避欲、名誉欲、権力欲、所有欲、便利さ・速さ・安価さなどを求める人間的な欲望があります。この欲望には喜び、悲しみ、恥じらいなどの人間的心情が伴います。さらにより上位の欲望に精神的な欲望があります。知りたいという欲望は学問を進歩させ、文明を発達させる原動力になっています。美への欲求は音楽や絵などに感動し、崇高さ、優美さといった一種の美の意味を見出そうとする人間の欲望です。同情心は他の人々の生命に生起する感情に波長を合わせつつ、しかも、自分の中にそれと同じ感情を引き起こして、相手の生命との融合を求め、共に悲しみ、共に喜びたいと願う欲望です。そして、愛は人生において最も重要な欲望と言ってもよいもので、自己の全存在を相手にかけ、相手の生の発展と幸福を第一義とすることに愛の本質があります。これには兄弟愛、母性愛、自己愛、神仏の愛などがあります。ただし、愛には自己主張的な愛(人に求める愛)と自己放棄的な愛(人に与える愛)があることを知る必要があります。人に求めるばかりの子供の愛から人に与える愛の喜びを知ることで人は大人になります。
 さらに、生物学的欲望、人間的欲望、そして精神的欲望の底にあって生命的感情をひきだす本源的欲望があります。生命的感情とは、さわやかで生き生きとした活気に満ちた生命状態からわき出る感情であり、活力にあふれた生命状態を求める欲望から出てきます。本源的欲望には生命の充実感を求める欲望、未来に向かって創造的なことをしたいという欲望、自由への欲望、生存の意味を問う欲望などの生きがいへの欲求があります。人間の心には様々な欲望が強弱の変化を繰り返しながら渦巻いていますが、より高次の欲望ほど長続きする傾向があるようです。
 私たちの体の60-80%を占めている水は激しく動き回りながら、良いものも悪いものも区別することなく受け入れ、エネルギーを与えて生かし続けます。どのような容器にも自分から合わせ、形を変えます。自分を一番下におき、何も自分からは要求せず、じっとしていなさいと言われたらいつまでもじっとしていますが、動けと言われたら岩をも砕く力を発揮します。どんなに汚れた水でも水自身は汚れていません。水は純粋にして無垢、あらゆるものを純化して甦らせ、傷を癒して力づけ、再生して浄化する能力をもっています。私たちはこの水の素直な心に学び、自分の欲望を浄化して多くの人々を生かす働きをしていくべきではないでしょうか。

(2012年10月8日月曜日)

第21話 清めの水

 2012年の年が明けました。2011年は東日本大震災をはじめ世界中で大地震、大津波、大洪水など多くの災害があいついだ年でした。古来、日本人はどのような災厄があっても、大晦日から元旦を境にして,1年のすべての災厄を祓い、新たな気持で再スタートをすることを習わしとしてきました。正月には多くの人が神社にお参りをして1年の幸福を祈願します。神社では鳥居と神殿までの間に距離があります。鳥居から先は神様の住む聖域であり、そこに入るには人間は俗世間での穢れを払う必要があります。木々の間の小道を歩き、静寂な雰囲気の中で心も次第に落ち着いてきます。そこで、お清めの水で手を洗い、口に含み、そして飲み込みます。清浄な水は身も心も洗い清めてくれます。お清めの水は自然の湧き水が良いとされています。さらに、神殿では大きな太鼓がなり響き、邪気を追い払ってくれます。人間の心には生きたいという欲望と死にたいという欲望がともに存在します。つらい人生のなかで心が折れて死にたいという欲望が強まれば自殺してしまうこともあります。人はなぜ自分は生きているのか、生きる価値はどこにあるのかを常に心の奥底で問い続けています。人の人生は愛を学ぶことにあるのではないかと思います。愛には優しさ、思いやり、厳しさという3つの面があります。優しさと思いやりだけで、厳しさが足りないとひ弱な人間になってしまいます。これらの3つの要素をバランスよく持っている方が人格者であり、多くの方から尊敬を受けてリーダーシップを発揮できる人ではないかと思います。どのような苦難であっても自分を鍛えるために現れているのだと前向きに捉え、絶え間なく努力して向上していく方は素晴らしいと思います。
 水には汚れを落とす力があります。水分子はわずかにマイナスの電荷を帯びた1個の酸素原子とわずかにプラスの電荷を帯びた2個の水素原子からできています。そのため、水は食塩のように電気を帯びた物質をイオン結合によってよく溶かすことができます。さらに、水素原子を間に挟む水素結合によって、砂糖のように電気を帯びていない物質もよく溶かすことができます。溶液中の水は水分子同士の結合により氷のようなかたまり、すなわち、クラスターをところどころに作っています。水が水滴をつくるのもこの水どうしが結合する力、すなわち表面張力のためです。洗剤は表面張力を低下させる界面活性化剤です。クラスターの大きな水は水分子どうしの結合力が強いために、汚れを落とす力が弱くなると推測されます。電解還元水や天然還元水のような疾病改善効果を持つ水は表面張力が低く、汚れを落とす力もより強いことが明らかにされています。ラットに脂肪の多い食餌を与えると血中の中性脂肪が増加し、動脈硬化症を起こしやすくなります。電解還元水を飲ませたラットでは血中の中性脂肪が有意に低下しました。電解還元水には過剰な中性脂肪を排泄する力を強める働きがあることが推測されました。動脈硬化症は高血圧症、がん、糖尿病、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こします。界面活性化効果を持った還元水を毎日飲むことで体の汚れを落とし、若々しい体を維持していきたいと思います。

(2012年4月20日金曜日)

第20話 科学が明らかにした宇宙の姿と水

 私たちは視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚など五感と呼ばれる感覚で住んでいる世界を認識しています。しかし、私たちが五感で捉えることのできる世界は実際の世界のごく一部にしかすぎません。宇宙は光でできています。光のエネルギーが局所に集中すると物質に変化します。電磁波として宇宙を飛び回っている光は情報を伝えることができます。目では認識できない紫外線や赤外線、放射線などの光を機器で測定することで明らかにされた宇宙の姿は私たちの想像を遙かに超えたものでした。私たちが認識できる物質は全宇宙に存在すると予想される物質(エネルギー)の5%にも満たず、見えないけれども星の運行に明らかな影響を与えているダークマターと呼ばれる物質が20%以上、そして宇宙を加速度的に膨張させ、星々を遠ざけているダークエネルギーと呼ばれるまったく未知のエネルギーが75%を占めていると言われています。また、2011年9月に発表された欧州合同原子核研究機構の実験結果ではニュートリノと呼ばれている質量のある素粒子が光速を超えて飛び回っている可能性が示唆されています。さらに、ブラックホールを作り出す実験や重力波の検出によって地球が10次元世界であることを証明しようという研究も進められています。アインシュタインが20世紀初めに光の速度は一定であるという前提のもとに時間と空間を同等とみなす革命的なアイデアを発表して以来の大変革が物理学で起ころうとしていると言われています。
 地球、太陽、銀河、局所銀河団、大宇宙銀河集団と次第に大きなスケールで宇宙は構成されています。私たちの体は細胞からなっていますが、細胞は分子や原子からなっています。原子は原子核や電子などの素粒子からなっています。電子がスピンと呼ばれる回転エネルギーを持ちながら、原子核の回りをまわっている姿は地球が自転しながら太陽の回りを回っている姿とそっくりです。太陽も自転しながら2億年かけて銀河を回っています。その銀河も渦巻きながら大宇宙を回っています。このように似た世界がスケールを違えて次々に表れてくることを相似宇宙と呼んでいます。大宇宙銀河集団は水の構造とよく似た6角形構造をしており、銀河のない隙間をもった泡状構造をしていると考えられています。さらに、最近の天体望遠鏡を用いた観測結果を元に銀河の回りに存在するダークマターを含めた大宇宙銀河集団の姿をコンピューターで描いたところ、我々の脳細胞そっくりの姿をしていることが分かりました。まるで宇宙という生き物の中に私たちが存在しているかのようです。私たちの体は小宇宙であると良く言われますが、まさにそのように思われます。
 人体の6割から8割は水でできています。水は隙間の多い構造をしており、その隙間に沢山の物質を溶かし生命活動を行わせています。それだけでなく、水分子は宇宙の熱エネルギーを吸収することによって室温で時速2300kmもの速度で動き回り、互いに衝突しています。水はタンパク質などに激しくぶつかることで宇宙エネルギーを与え生命活動を円滑に行わせています。水は宇宙そのものと似た働きをしているようにも思えます。水の研究は宇宙の研究にもつながりそうです。

(2012年4月20日金曜日)

第19話 がんと電解還元水

  我が国ではがんは2人に一人がかかり、3人に一人ががんで亡くなるというごくありふれた病気ですが、現代医学でも根治が困難な難病です。がんの発生には正常細胞の遺伝子が発がん物質や活性酸素などで傷つくイニシエーション、傷ついた細胞が絶え間ない活性酸素の働きでがん細胞に変化するプロモーション、ガン細胞が悪性の形質を獲得するプログレッションという段階があります。がんには6つのやっかいな性質にがあります:①活発に増殖する、②増殖を止めることができない、③危険ながん細胞を抹殺する仕組みであるアポトーシス(自殺死)を起こさない、④無限の寿命を持ち老化しない、⑤血管を新しくつくって栄養を独り占めする、⑥最終段階として、転移・浸潤し体全体にがんが広がっていく。がんになった場合の標準療法は外科的療法、放射線療法、化学(抗がん剤)療法です。しかし、いずれの療法もがんの発生そのものを防ぐ根治療法ではありません。逆に、体にストレスを与え、新たながんの発生を促す恐れがあります。がんはステージⅠからIVに分類され、それぞれさらにa及びbに細分されます。がんが一カ所にとどまらずに、転移すると、ステージはIIIbからIVに分類されます。
 著者は約40年前から食品中の抗酸化物質(ビタミンCやポリフェノールなど)によってがんを抑制する研究をしてきました。多くの抗酸化物質はがん発生の原因となる活性酸素を消去する働きがありますが、酸化されると逆に活性酸素の発生剤に変化するという両刃の剣的な性質を持っています。現在行われているビタミンCの大量投与によるがん治療法はビタミンCが大量の活性酸素を発生させてガン細胞を殺すことを利用した治療法です。正常細胞にも影響するため、抗ガン剤と同様に副作用があります。食品中の抗酸化物質の単独投与による寿命延長の試みはこれまでほとんど成功していません。
 約15年ほど前に活性酸素する電解還元水の研究を始めた頃に注目したのは電解還元水の多量飲用によりがんが消失するという臨床報告でした。調べてみますと、確かに電解還元水により様々ながん細胞の増殖や転移・浸潤が抑制されることが分かりました。白血病の細胞を正常細胞に変化させる作用も見出されました。免疫系細胞を活性化して腫瘍免疫を増強する働きも認められました。
 がんの抑制にもっとも有用なのは正常細胞には作用しないでガン細胞だけを殺す選択性です。モズク由来のフコイダンはガン細胞表面の糖鎖に変化を起こし、アポトーシスを誘導しますが、正常細胞の表面糖鎖には変化をおこしません。副作用のない還元水にも同様な効果が期待されます。
 ガンは多数の遺伝子異常を持つ細胞です。がん細胞は強靱なように見えて、ある意味では大変弱い細胞かもしれません。還元水によりがんの悪性の性質を良性に変えることにより、アポトーシスを誘導したり、腫瘍免疫で排除されやすくしたり、いぼのように生体と調和できる良性腫瘍に変化させたりすることができるかもしれません。がんを敵とみなして殺す従来の医療の限界が明らかになったいま、がんを休眠させる新たな治療法が望まれています。還元水の研究はこうした医療の進歩に貢献することが期待されます。

(2011年9月13日火曜日)

第18話 ストレスと生命

 2011年が明けましたが、政治及び経済における先行きの不透明さは相変わらずで、地球が人類に警告しているかのように世界各地で異常気象による災害が起こっています。人類はかつて神を信じ、自然現象に畏敬の念を持って接していました。しかし、科学技術文明の発達とともに、自然を思いどおりにコントロールできるかのようなわがままな心を増長させてきたように思います。医学においても人の死を前提にして治療を行う臓器移植など科学技術は神の領域にまで足を踏み入れてしまったかのように思います。しかし、私たちは毎日食物を食べ、水を飲んで生きています。この体の仕組みについてどれほど私たちは知るようになったでしょうか。病気一つとっても、ガン、糖尿病、動脈硬化症、神経変性疾患など多くの病気の克服に人類は成功していません。人類が大自然の前にもっと謙虚にならないとかつて滅びた多くの文明の二の舞になるかもしれません。
 さて、予測不能な状況は生体に大きなストレスを与えますが、多少のストレスは生物にとって望ましいものであることが分かってきました。生体には2つのエネルギー系が備わっています。一つは生命が発生した36億年も昔から利用していたといわれている解糖系のエネルギー系です。解糖系ではブドウ糖をピルビン酸に分解する過程で2分子のATPというエネルギー物質をすばやく作ります。解糖系は酸素を必要としないので短距離競走のように一気に多量のエネルギーを発生させるのに適しています。一方、ミトコンドリアは酸素を利用してピルビン酸を炭酸ガスと水に酸化する過程で36分子ものATPを作りますが、解糖系に比べてエネルギー物質を生み出すのに時間がかかります。新潟大学の安保徹教授は人がストレスを感じると血液がどろどろ状態になるのは生体の自然な応答であると言われています。赤血球の大きさは7.5μm程度ですが、毛細血管の大きさも同じ位であるため、赤血球が凝集した状態では末梢血管を血液が通りにくくなり、その結果周辺の組織が酸素不足になります。そうすると、解糖系のエネルギー系が優位になり、危機に対処できる瞬発力が準備されます。一方、リラックスした状態では血液がさらさら状態になり、酸素が十分組織に供給されてミトコンドリア優位な状態になります。ミトコンドリアは大量の活性酸素を発生させますが、細胞に十分なエネルギーがあれば活性酸素を効率良く消去することで、細胞は障害を受けることなく活発に活動することができます。心臓の細胞はたくさんのミトコンドリアを持っており、大量の酸素を消費しているにもかかわらず、一生涯止まることなく元気に活動してくれます。ミトコンドリアが元気だとたくさん食べなくても効率良くエネルギーを生み出してくれます。長生きの秘訣は腹7分目程度に食べ、散歩などの適度な強度の有酸素運動をしてミトコンドリアに適度な酸化ストレスを与え鍛えることが大事だと言われます。年をとっても元気でエネルギッシュに生きることができるということが分かってきました。血液をさらさら状態にするためには基礎体温を上げ、血液のpHを弱アルカリ性に保つことが大事です。還元水を飲んで毎日元気に活動したいものです。

(2011年4月15日金曜日 )

第17話 電解還元水と電解水透析

 体の中で腰のやや上にこぶし大でそら豆のような形をした腎臓が2つあります。腎臓は一日に約180リットルもの血液を浄化し、水代謝を正常に保つための大事な臓器です。腎臓にはその他にも次のような大切な働きがあります。①血液中の老廃物や体内の余分な水分をろ過し、尿として排泄する。②ナトリウムやカリウムなどの電解質の量を調節する。③血液を弱アルカリ性に保つ。④造血ホルモンや血圧を調節するホルモンを作る。⑤骨の健康を保つビタミンDを生産する。糖尿病などが原因で腎臓の機能が30%以下になると「腎不全」であると診断され、体内の老廃物や余分な水分を排泄できない状態になります。腎不全は尿毒症などの命に関わる重大な症状を引き起こしますので、血液透析をして人工的に血液を浄化する必要があります。腎不全には急性腎不全と慢性腎不全があり、数ヶ月から数年かけて腎機能が徐々に低下する慢性腎不全ではじわじわと症状が進行し、腎機能が回復することはないと言われています。
 腎不全の第一位の原因は糖尿病です。糖尿病患者及びその予備軍は現在2200万人もいると言われており、年々増加しています。糖尿病腎症が2009年の透析導入患者の約45%を占めると報告されています。透析治療を始める平均年令は現在67.3歳ですが、年々高くなっており、腎不全以外にも高血圧や糖尿病など他の病気も持っていることが多く治療を難しくしています。透析治療では小さな穴が多数持つ細管が束ねられた透析器の中を血液が通過する間に、老廃物が細管の外側にある透析液中に拡散することで血液を浄化します。浄化された血液は透析器を通過した後、体内に戻されます。1回の透析で約120リットルもの透析液を使用すると言われています。問題は血液がチューブ、透析器、透析液といった異物に触れるため好中球などが活性化され、大量の活性酸素が発生して炎症が起こることです。この慢性的な炎症のために、体が徐々に酸化して糖尿病や動脈硬化症が進行し、患者の死亡率を著しく高めてしまいます。血液透析には一人の患者あたり年間約600万円の医療費がかかると言われています。我が国の全医療費の約3%を占めており、保険医療を圧迫する原因の一つになっています。
 最近、透析液に電解還元水を使用する電解水透析が新しい治療法として注目されています。透析患者はかゆみ、血圧の変動、頭痛、吐き気、筋肉のけいれん、足のつりなどの副作用にしばしば悩まされます。電解水透析では、まだ症例数は少ないものの、かゆみの減少、手足の冷えの改善、透析後の疲労感の軽減、炎症や酸化ストレスの軽減、高血圧の改善などが確認されています。一方で、電解水が原因と考えられる有害な副作用は認められていません。腎不全ラットも用いた実験で症状改善効果が得られています。今後、血液透析患者の症状改善だけでなく、透析予備軍と呼ばれている慢性腎不全症患者が電解還元水を日常的に飲用することにより、症状が改善され結果的に透析開始時期を遅らせることできる可能性があります。このように、体内の過剰な活性酸素を消去できる電解還元水は従来の治療法では治療が困難な病態に対する新たな治療法となることが期待されています。

(2011年1月24日月曜日)

第16話 寿命を延ばす電解還元水

 カスピ海に近いグルジャ共和国のコーカサス地方には長寿村がたくさんあり、100歳になっても元気で活動されているお年寄りがたくさんおられるそうです。それらのお年寄りが寝込んで亡くなるまでの平均ベッド日数は約10日だそうです。長寿研究の目標とされる亡くなる直前まで元気でコロッと亡くなる「ピンピンコロリ」の例として良く挙げられます。世界の長寿村の食の研究をされている家森幸男京都大学名誉教授はケフィアと呼ばれる発酵乳(以前、ヨーグルトキノコという名前で流行ったこともあります)を毎日沢山飲んでいることとその地方の水が良いことが長寿に関係している可能性を指摘しています。人間は120歳程度までは生きることができると考えられています。人間の細胞には老化や病気を引き起こす活性酸素を消去する仕組みが二重にも三重にも備わっているからです。しかし、食べ過ぎ、運動不足、ストレスなどの不健康な生活習慣は体内で大量の活性酸素を発生させ、寿命を短縮させると考えられています。実際、2009年7月に米国のサイエンス誌に発表されたサルのカロリー制限の研究はそのことを裏付けています。サルを10歳の時からカロリー制限をした場合としない場合に分けて20年間飼育したところ、カロリー制限をしないサルでは半数が死亡し、生きているサルも老化してよぼよぼの姿になりました。しかし、70%のカロリー制限をしたサルは8割が生存しているだけでなく、若々しい姿で免疫力も維持されており、老化関連疾患(ガン、糖尿病、動脈硬化症など)も少ないことが分かりました。
 電解還元水は健康に良い水として普及しています。電解還元水の呼び名には、アルカリイオン水、アルカリ性電解水など様々な名称があります。アルカリイオン水はカルシウムイオンやアルカリ性が体に良いという考えから名付けられた通称です。これに対し私たちは飲料水の還元力や活性酸素消去能力が重要であるという観点から電解還元水という呼称を好んで使用しています。マウスの寿命は数年ですが、電解還元水をマウスに飲ませると浄水を飲ませたマウスに比べて生存日数が約100日伸びることやガンなどの老化関連病の発症も抑制されることが報告されています。最近の私たちの研究で電解還元水が線虫の寿命を延長させることが明らかになりました。線虫は体長数ミリメートルの虫ですが、寿命が20日程度で実験室での飼育が容易なために老化や寿命の研究に良く使われています。電解還元水の培地で線虫を培養すると、超純水の培地に比べて線虫の寿命が長くなること、パラコートという線虫を殺す農薬は線虫体内の活性酸素濃度を高めて寿命を短縮しますが、電解還元水はパラコートにより発生する活性酸素を消去しました。電解還元水のモデル水でも、また飲用可能な水道水由来の電解還元水でも同様な結果が得られました。電解還元水の寿命延長効果に電解還元水に含まれる水素と白金ナノ粒子などの金属ナノ粒子がどのように影響するのかについて研究を続けています。
 電解還元水に関する研究が様々な角度からなされ、健康に良い水が世界に普及することを願っています。

(2011年1月24日月曜日)

第15話 水と宇宙フラクタル構造の謎

 ひらひらと降ってくる雪の結晶を顕微鏡で眺めると六角形あるいは五角形の複雑で美しい形をしています。また、水を凍らせてつくる氷の結晶も同様にもとの水の性質を反映して複雑な形をしています。雪も氷も水分子が規則的に配列した結晶ですが、大気圧下では結晶構造が六方晶型をとるため、巨視的に見ても六方対称になりやすい性質があります。しかし、もとは同じ水なのになぜ極めて複雑で多様な形を作り出せるか不思議です。
 雪や氷の結晶と同様に、人体、花、海岸線、雲、川、山、宇宙の銀河の形など自然界には複雑な形がたくさんあります。自然界の形・自然現象・社会現象を問わず、さまざまな複雑な現象を調べると全体と部分との間に非常によく似た相似性が見つかる場合が少なくありません。このような特徴は、「自己相似性」あるいは「フラクタル性」と言われます。つまり、大宇宙から素粒子の世界まで眺めると、スケールは違うものの、そっくりの世界が次々と現れてきます。フラクタルという言葉は、1975年にフランスの数学者によって作られた造語で、ラテン語のフラクタス(fractus、破壊された)という意味の形容詞を語源としています。
 これまで科学は複雑な形や現象を細かく分析することで理解しようとしてきました。しかし、それによって情報量は多くなったのですが、結局全体像はよく分からないというのが現状です。それに対し、複雑な形や性質を複雑なものとして全体を理解する「複雑系の科学」あるいは「フラクタルの科学」が現れてきました。「複雑系の科学」は20世紀の終わりに突如として現れたばかりの新しい科学です。これまでの科学が複雑なふるまいに関わる個々の要因を分析し、細分化し、調べていたのに対し、複雑なふるまいの特性を集約・統合(集め、まとめる)して定量化します。「複雑」とは、見方を変えれば、「単純明快」であると考えることができます。私たちの回りの局所空間に広大な宇宙のすべての情報が詰まっているのかもしれません。
 フラクタル理論は複雑な形は初期条件(最初の状態)で決まることを教えてくれます。単純な構造が積み重なって複雑な構造が作られますが、初期条件が変わることで最終的な形も変わってきます。この自己形成の原理を説明するのがマルコフ連鎖理論と呼ばれるものです。マルコフ連鎖では現在の置かれた状態から次の状態に移行することだけを考えます。過去は問いません。同じことを何度も繰りかえすことで複雑な形ができあがってきます。私たちの体は毎日取り入れる水と食物によってできています。水の流れ、食物の成分の流れによって体は毎日造り変えられています。私たちは生きていく過程で病気になることもあります。現在の健康は過去の食事や生活習慣の結果として創られたものですが、現在の状態が変われば確実に明日の状態が変わります。その時、遠い過去のことを考える必要はなく、昨日、今日、明日の健康状態だけを考えれば良いことをマルコフ理論は教えてくれます。今日、良い水、良い食物を摂り、良い生活習慣を実践する。それを一日一日続けていけば確実に健康になっていくと思います。水の研究から学ぶことが多い毎日ですが、まだまだ先は永いと思う今日この頃です。

(2010年7月14日水曜日 )

第14話 水と生命

 物質は様々な原子からできていますが、その原子の結合体を分子と呼びます。宇宙の中で最も小さな原子は水素であり、その大きさは約0.1ナノメートルです。水は2つの水素原子と1つの酸素原子が結合した最も小さな分子の一つであり、その大きさは約0.3ナノメートルです。水分子は大変小さいので、宇宙空間の熱エネルギーを吸収して激しく動き回っています。水は回りの温度によって固体、液体、気体という3つの状態をとります。水は0℃以下では氷という固体ですが、0℃で融解エネルギーを吸収して液体となります。100℃を越えると水は大量の気化エネルギーを吸収して水蒸気となり空気中に拡散していきます。液体の水分子の中には高いエネルギーを持った水とそうでない水が一定の割合で存在するために、室温でも一部の水は蒸発して気体になります。洗濯物が室温でも乾くのはそのためです。ちなみに水素原子が2つ結合した水素分子の大きさも約0.3ナノメートルですが、水素は-294℃で固体から液体に変わり、-253℃で液体から気体に変わります。水の融点や沸点が非常に高いのは水分子が水素結合という特殊な結合で互いにくっつきあいやすい性質をもつからです。これは人間が2本の手を持ち、隣の人と握手することで小さな集団を作ることができるようなものです。こうした水分子の小さな集団をクラスターと呼びます。水の溶液の中は小さなクラスターがあちこちに分散した構造をしており、10-12秒ごとにクラスター構造が変化しています。水のクラスター構造は水に溶けている物質によっても変化します。1cm3あたりの重さを密度と呼びますが、水の密度は、3.98℃で最大密度0.999972 g/cm3となります。この密度から計算すると、液体状態の水の約6割は隙間であり、その隙間に様々な物質を溶かすことができます。水は溶液の中で激しく動き回り、溶解した物質にぶつかることで物質の化学反応を促進したり、タンパク質に細かな揺らぎを与えることで酵素反応を促進したりします。
 こうした水の物理化学的な性質は地球上で生命が生きていくために大変重要です。水が0℃から100℃という大きな温度範囲で液体状態をとれるために、海の中にたくさんの生物が生まれ、私たちも体の中に大量の水を保持して生きていくことができます。水の大きな融解熱及び気化熱のために水は熱しにくく冷めにくいという性質を持ち、地球の気候を温暖にするのに役だっています。また、氷は液体の水よりも隙間の多い構造を作るために密度が小さく、そのために氷は水の上に浮くことができます。北極や南極のような寒い地方でも氷が浮くために海の水がすべて凍ってしまうことなく、生物が生きていくことができます。私たちの体においても食物を食べた時に肝臓で発生する大量の熱を血液中の水が体全体に運ぶことで体温を一定に保ってくれます。雑巾を水に浸すと水が速やかに浸透していくように、毛細血管の狭い隙間であっても水は血管壁の原子と水素結合することによって浸透していくことができます。生命の源とも言うべき水の働きの秘密を解き明かし、健康に良い新しい水を開発するために私たちは研究を続けています。

(2010年3月11日木曜日)

第13話 不思議なことへの科学の挑戦

 言葉は現象を表現するために使われている。不思議という言葉は理解を超えたものに対する言葉である。そこには自然に対する畏敬の念が内在しているように思われる。言葉には実体がある。古くから使われている言葉は実在するから残ってきているのではないかと考えられる。神、幽霊、天国と地獄、天使と悪魔、守護霊、あの世、UFO、宇宙人、テレポーション、ワープ、超能力、予知能力など様々な現代科学の理解を超えた言葉がある。以前、某誌に我々の水の研究を批判する記事が掲載されたことがある。その記事の著者は水に機能があるはずがない。水の機能は水に溶けた物質の働きにすぎないと書いていた。しかし、それは明らかに間違っている。血液という水の流れによって血管を構成する細胞の機能が制御されていることは明らかである。軟骨の形成にも水の圧力が大きく影響している。そして、最近は水そのものの機能が最先端の科学によりつぎつぎに明らかにされている。脳が少ないエネルギーで働けるのも水のお陰である。体の形が維持できるのも体の中を猛烈な勢いで流れている水の働きのお陰である。我々の高度な脳機能でさえも水によって調節され、水そのものが人間の意識に深く関与している可能性が指摘されている。では、なぜ某誌の著者は水の研究を批判したのであろうか。その方は自分自身で水の研究をする気はないと言っておられた。既存の物理学や化学の理論では説明できないから、そうした不可解な現象は事実であるはずがないと決めつけ、疑似科学(にせ科学)よばわりをしたと思われる。時代を切り開く科学を推進するには分からないことを素直に認める謙虚な姿勢とそれに果敢に挑戦する心、そして批判をもろともせずに研究を進める勇気を必要とするのではないだろうか。
 不思議なものという点では水ほど不思議なものはないと思う。クラゲは99%水でできているが生きている。ということは水そのものが生きているということではないだろうか。では、生きているとはどういうことであろうか。クラゲの中の水は様々な物質を溶かしながら、自律的に動いている。外界から餌になる物質を取り込んで、体内の水の中で分解し、不要なものを外に排出する。そして、新しい細胞を絶えず再生しながら、一定の形を維持しつつ、しだいに大きくなっていく。いったいどうしてそのようなことが可能なのだろうか。クラゲにも心(意識)があるのだろうか。現代の生物学では生物の形も動きもすべて遺伝子によって制御されていると考えている。しかし、限られた数の遺伝子で生物が制御され形が維持される仕組みは不思議な謎である。
 人間の肉体は生きていく内に老化し、若々しい体はやがてあちらこちらにシミができた醜い体に変わっていく。しかし、その中に宿る精神ははたして老いるのであろうか。私のこれまでの経験から考えると、自分という意識は老いるどころか、ますます成長し成熟してきているように思われる。精神は老いることなく、死ぬまで成長しつづけるのではないだろうか。愛とは優しさ、思いやり、そして厳しさを包含している。自然界にも人間界にも愛が充ち満ちている。水の研究を通じて、水の素直さに学び、愛を深めたいと思うこの頃である。

(2009年12月16日水曜日 )

第12話 カロリンスカ研究所との電解還元水の生理機能に関する共同研究

 スウェーデン国ストックホルム市にあるカロリンスカ研究所(カロリンスカ医科大学)はノーベル生理学医学賞を決定する機関として良く知られています。ノーベル生理学医学賞は7名の委員で構成される選考委員会(Nobel committee)が候補者を決定し、55名のノーベル会議(Nobel Assembly)における投票で受賞者が最終決定されます。カロリンスカ研究所の教授の多くはノーベル賞候補者の選考に深く関わっていると言われています。筆者は大学院生の頃に師事した山藤一雄名誉教授からノーベル賞学者の奮闘記、カロリンスカ研究所の話やノーベル賞授賞式に出席した思い出などをよく聞かせてもらいました。機会があれば一度訪問してみたいと思っておりましたが、2007年6月15日に「酸化ストレス関連疾患の予防及び改善効果を持つ還元水の作用機構」という演題のセミナーに招聘して頂きました。筆者は1997年にBBRCという雑誌に電解還元水が活性酸素を消去し、DNAの酸化障害を防止するという論文を発表しましたが、その時に編集者として論文を受理して下さったのがカロリンスカ研究所環境医学研究所のステン・オレニウス名誉教授でした。その先生を2006年9月に京都で開催された国際会議に招聘したのがきっかけで、交流が始まり、上記のセミナーに招聘してもらいました。初めて訪問したカロリンスカ研究所は大変きれいな大学で、ノーベル賞候補者を選定するNobel Forumの建物やノーベル博物館を案内してもらいました。セミナーには沢山の方が出席し、電解還元水の疾病改善効果について強い関心をもって頂くことができたと思います。
 2008年2月にオレニウス教授がおられた毒性学研究室の後継教授であるツボトフスキー先生を九州大学に招聘しセミナーをして頂きました。そして、2009年6月4日に再びカロリンスカ研究所神経科学部門でスウェーデン生理学会の後援で「酸化ストレス関連疾患を抑制する分子状水素及び白金ナノ粒子を含む還元水」という演題のセミナーを再び開催させてもらいました。セミナーには多くの教授の先生が出席され、研究員の方も交えて午後5時から6時半まで熱心な討議が交わされました。Nature Medicineという一流の学術雑誌に水素ガスが活性酸素を消去するという論文が発表されて注目されていますが、セミナーに出席されたある名誉教授の先生が「私たちがNature Medicineの論文に注目しているのは、それが新たな研究の始まりを示しているからです。Nature Medicineに発表された論文の内容自体が間違っている場合もあることは良く知っています。頑張って下さい。」と親切に励まして下さいました。セミナーに招聘して頂いた神経毒性学研究室のサンドラ・セカテリ先生の研究室に電解還元水整水器のトップメーカーである日本トリム社の電解還元水整水器を設置し、白金ナノ粒子も提供して共同研究を開始する準備を始めました。カロリンスカ研究所の水道水は軟水で大変おいしい電解還元水を作製することができました。電解還元水研究の重要性に鑑み、九州大学、日本トリム及びカロリンスカ研究所の共同研究を開始するとともに、早急に参加する研究室数を増やして迅速に成果を挙げるとともに、提携しているカロリンスカ病院での臨床試験も視野に入れた研究を行うことになりました。医学分野では世界で最も権威がある教育研究機関の一つであるカロリンスカ研究所で電解還元水の優れた効果が確認されれば、健康に良い水を世界的に普及するのに役立つだろうと期待しながら帰国の途に着きました。

(2009年8月21日金曜日)

第11話 水と希望

 2009年が明けましたが、昨年来のサブプライムローン問題に端を発した米国発の不況が世界中に押し寄せています。今年は失業や企業の倒産がますます増えることが予想されています。これまで経験したことのない経済不況であるとも言われます。それでも、私たちを取り巻く自然環境が特に変わったわけではありません。太陽はいつもと同様に昇り、四季は移り変わります。そして、過去たくさんの試練を乗り越えてきた私たちです。日本人は大晦日から元旦に変わったとたんに、新しい年に希望をかけ、過去の不浄を洗い清め、真っ白な心で新しく再出発を誓います。そこには希望に満ち溢れる人生が待っています。人は生きている限り希望を持つことができるものです。遠い未来を憂い地に足をつけることのできない人生も、また、過去を悔いていたずらに心を引きずる人生も必要ありません。今を精一杯生き抜くこと、昨日、今日、明日、考えることはそれだけで十分です。今日命を頂いて生きていけることに感謝し、愛する家族や仲間とともに果たすべき仕事があることを喜びとして、一日一日を積み重ねていくうちにすばらしい未来が開けてくるのではないでしょうか。
 奇跡という言葉があります。奇跡とは、常識では起こると考えられない、自然法則を超越していると思われる不思議な出来事を言い、しばしば神の御業と結びつけられます。人は苦しいときに時として奇跡を望みます。たとえば、水の働きにより常識では治るとは考えられない病気が治ったとき、人々はその水を奇跡の水と呼びます。奇跡という言葉の英訳はミラクルがふさわしいと思います。奇跡の水のことを欧米人に話すと、よく「ああ、マジックウォーターのことだね」といわれることがあります。しかし、マジックウォーターは魔法の水という意味で、魔術の力で病気を治すというようなイメージになります。私たちが研究している水は魔法の水ではありません。大宇宙・大自然の力、善なる想いを表す水だと思います。水の力を信じることが大切です。信ずることで水も大いに働いてくれると思います。ひょっとしたら水にも意識があるのかもしれません。喜んで飲んでくれる人には水は生きて働きかけますが、そうでない人には「仕方がない」と時期を待つのではないでしょうか。この「仕方がない」という考え方は大切だと思います。病気で亡くなる方、事故でなくなる方、会社が破産して苦しむ方もたくさんおられます。こんなに善い人がどうして苦しむのかと不思議に思うこともあります。しかし、すべての人を救うことはできませんし、また、そうする必要もありません。様々な困難はその人が乗り越えるべき試練であり、それを除いてしまったら、修行にならないと思います。困難なときほど自分が変わり飛躍するチャンスだと真摯に受け止め、自分の力を知り、それを超える事柄は仕方がないと流していくことが肝要ではないでしょうか。
 どんなに不況でも人々は健康によい水を求め、価値のあるものにはお金をかけることを惜しまないものです。奇跡の水、希望の水、繁栄の水。それを信じてお互いがんばっていきたいものです。

(2009年5月28日木曜日)

第10話 水の働きが創り出す心 

 人間は高度な頭脳と心を持った生命体です。心が脳の働きにより生じるのかについては議論がありますが、主な心の働きである意識、記憶、思考に脳が密接に関係していることは間違いないと思われます。たとえば私という意識は夜寝るときに無くなり、朝目覚めるときに不思議によみがえってきます。睡眠は一種の死であると言われるゆえんです。昼間に仕事をしているときでも意識レベルが低くてぼーっとしている時は仕事がはかどりません。逆に、睡眠を十分とることができた朝などは頭が冴えて意識レベルが高いことをよく経験します。自分という意識のある存在はいつも何かを考えています。この思考の働きには記憶が不可欠です。覚えたことを思い出しながら、思考し、外界の問題に対応することができます。人間は生まれてから死ぬまでのすべての出来事を記憶しているとも言われますが、覚えたことの大部分を普段は忘れています。そして今必要な情報だけを思い出して利用しています。これを記憶のフィルター作用と呼びます。覚えたことを忘れられない病気があります。こうした病気の方は過去にあった嫌なことや悲しいことがちょっとしたきっかけで目の前にありありと再現されてしまいますので不幸です。忘れると言うことは覚えるということと同じ位人間にとって大切な働きのようです。良い意味でこうした能力を使える天才的な方がおられるようです。たとえば、元NHKのアナウンサーだった方は「記憶の天才」として名高く、その場でランダムに決められた過去の相撲の場面をビデオ放送と寸分違わずに実況放送できたそうです。
 最近の研究で水の働きと心との結びつきが分かってきました。私たちの体は水の流れによって形ができてくることが明らかにされつつありますが、脳も水が噴水のように吹き出した形をしているそうです。脳は主に情報処理を行う神経細胞と神経細胞に栄養を与えるなどの補佐的な働きを行うグリア細胞からなっています。グリア細胞には水を通す通路(水チャンネル)が無数に存在しており、脳の中に水のある空間と無い空間を創り出していると言われています。グリア細胞の働きによって、精密機械を輸送する際に保護に使われる発砲スチロールのような構造が脳の中にできあがり、外部のショックから神経細胞のネットワークを保護してくれます。脳の中で高次機能にかかわる大脳皮質は六角形のコラムの中に6種類の神経細胞が詰められた同じような構造しています。水のない空間を未知の気体が流れることでできた渦流が、大脳皮質の上層にある水の薄膜に渦の興奮を伝わることで大脳の意識や記憶を働きが行われるという脳の渦理論を機能MRIの専門家である新潟大学の中田力先生が提唱して注目されています。機能MRIという方法は水の動きを磁場の中で調べる方法で、CTやPETとは異なり放射性物質を使わずに心の働きを見ることができます。この脳の渦理論によって、全身麻酔薬の働きやアルコールで意識がかく乱される仕組みをよく説明できます。脳という高度な器官において、水が心の働きに無くてはならない働きをしているということは大変興味深いことだと思います。

(2009年5月28日木曜日 )

第9話 水危機の時代と健康に良い水  

 私たちが生きるために水がなくてはならない大切な物質です。日本は豊かな水に恵まれており、衛生的な水道水も普及しています。そのために水の問題についての危機感が薄いのではないかと思われます。日本では、安全でおいしくて、健康に良い水が求められています。しかし、世界を眺めると、生きるために必要な最低限の水の量すら確保できない国や衛生的な水が得られないために、たくさんの子供が死んでいる国が多くあります。地球上の水は約14億km3で、その約97.5%は海水です。さらに淡水のほとんどが、氷や氷河(1.74%)、地下水(0.76%)として存在しており、人間が使いやすい状態にある河川などの水は全体の0.01%に過ぎません。水利用の最大は農業用水です。しかし、食料生産に欠かせない水が世界各地で枯渇の危機にさらされています。水不足の原因の第一は、人口増に加えて、畜産物の需要の増加が関係していると言われています。たとえば、穀物1kgの生産に必要な水はトウモロコシ1.9トン、小麦2トン、大豆2,5トン、白米3.6トン、豚5.9トン、ウシ20.7トンとされています。日本は食料の6割を輸入に頼っていますので、農畜産物の生産に使われる水を仮想水・間接水として考えると、日本は600億m3もの水を輸入していることになります。最近ではバイオ燃料ブームで穀物をはじめとする食料の需要が高まっており、地下水のくみ上げ過ぎによる水不足が起こっています。米国では乾燥地帯での大規模農業に地下水を利用しています。中西部6州にまたがる巨大なオガララ帯水層は過剰揚水で、地下水が大幅に低下し、大きな問題になっています。水不足の第2番目の主な原因は地球温暖化や森林の減少により、干ばつや集中豪雨が増加し、洪水による水質汚染などが広がっていることです。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2007年にまとめた第4次評価報告書では、21世紀末には地球の平均気温が最大6.4度上昇すると予想されています。森林の伐採や過度の放牧などの人為的な原因も加わって、いったん、砂漠化が進行するとそれをもとに戻すのは容易なことではありません。また、数度温度が上がると世界中に伝染病などの病気が蔓延することが懸念されています。鳥インフルエンザの人での流行はもう時間の問題だと言われています。さらに、環境汚染の進行により、酸性雨による森林被害、飲料水の水質低下、海洋汚染による魚の汚染などが問題になっています。そうした水危機の時代に、海水の淡水化や汚染された水の浄化など水資源を確保する技術ともに、日常的飲用により自分の免疫力や自己治癒力を高め、疾病を予防し、健康を作ることができる還元水に対する需要はこれからますます高まると思われます。

(2009年5月28日木曜日 )

第8話 植物と水

 青々とした木々の緑は人々の目をなごませてくれます。樹木の中には数10メートル、あるいは100メートルの高さにまでなるものがあります。それらの木々はてっぺんまで たくさんの葉を茂らせています。それぞれの葉は地中から吸い上げた水と空気中から取り入れた炭酸ガスを材料に太陽エネルギーを利用してでんぷんを合成しています。人間がポンプで10メートルの高さまで水を汲み上げるのにも、ポンプのモーターを目いっぱい働かせる必要があります。それほど水を高い位置に引き上げるには大きなエネルギーが要ります。木々はどうやって、水を地中から吸い上げているのでしょうか。大きな木の中心は死んだ細胞からなる硬い木部を作っています。その木部の一番外側に死んだ細胞がつながった水の通路である道管があります。樹木はこの道管を通して根から水を運び、道管の外側にある生きた細胞に水を供給しています。水は細胞の中や間を染み渡っていき、葉のすみずみまで供給されます。植物の細胞膜にはアクアポリンあるいは水チャンネルと呼ばれる水の通路が無数にあって、水は植物細胞の中を極めて早く移動していきます。葉にはたくさんの気孔があり、そこから水を蒸散させています。水は水素結合という力で互いに結合する力があり、根から吸い上げた水は空気が入ることなく、てっぺんの葉まで切れ目なくつながっています。したがって、葉の気孔から水が蒸散すると、それにつれて水は根からてっぺんに向けて吸い上げられていきます。たくさんの葉があるお陰で水は非常に強い力で吸い上げられるわけです。また、土の中にある根にも水を道管に押し上げる力があるという説もあります。空気中の成分や土の中の水分が減少して乾燥状態になると、植物は気孔を急速に閉鎖して水分の損失を最小限に抑えるように工夫しています。植物の根が水を吸収して道管に供給する効率を根の通導コンダクタンスという値で表す方法があります。この方法では、圧力容器内に植物のポットをいれ、幹と葉のところは圧力容器の外に出しておき、プラスチックフィルムで覆っておきます。つぎに圧縮空気を入れると、土中の水分が根の中に入っていき、葉のところで蒸散して出て行きますので、出てきた水分量を測ります。以前、切花の長持ち実験をやったことがあります。バラの花は重いので、しおれやすく、そうなると商品価値が落ちてしまいます。還元水のなかでは水道水に比べてバラの首だれ現象が抑制されることを明らかにしました。その原因として、水道水は長く置いておくとすぐにカビなどが増えて白くあるいは緑色に濁ってしまいましたが、還元水はいつまでも透明でしたので、道管がカビなどで詰まってしまうのを還元水は抑制したのではないかと推測しました。植物の70から80%は水ですが、その水が植物の中ですべてひとつながりになっているということを考えますと、植物は水が姿を変えたものと見ることができるかもしれません。水のはたらきの偉大さと神秘さを感じます。

(2009年5月28日木曜日 )

第7話 水の循環と恩の循環 ~ゴードン・サトウ先生の砂漠を緑に変える壮大な夢~  

 地球は水の惑星と言われるように、地表の約2/3が海で覆われ、地球上の水の97.5%は海水です。海から蒸発した水は雲となって地表に雨や雪を降らせます。地表に降った水は川や地下水となって海に戻ります。水は植物や動物の体を流れ、空気や土に湿気を与えながら、太陽のエネルギーによってあたかも無尽蔵に存在するかのごとく循環を繰りかえしています。ところが、こうした精緻でダイナミックな水循環システムが、森林伐採、大規模なダム開発、コンクリートジャングルといった都市開発などの人間活動によって破壊され、地下水の過度の汲み上げは地盤沈下をもたらしています。かつて、4大文明はすべて大河川の流域で興りましたが、森林伐採などにより、文明が衰退しただけでなく、大幅な気候変動をもたらし、豊かな土壌が現在では不毛の砂漠になっています。
 筆者が最も尊敬する師の一人である米国のゴードン・サトウ先生はご自身が第二次世界大戦中に日系人としてカリフォルニアの砂漠の町マンザナールに強制収容された過去の経験から、砂漠のような厳しい環境下でいかにして食料を生産するかという課題を解決するためのマンザナール計画を推進されています。海沿いの砂漠地という厳しい環境でもふんだんにある海水と日光に注目し、「藻類→エビ類→魚」の食物連鎖を念頭におき「砂漠の中で藻類を育てる」研究に取組み、砂漠地での養殖漁業を実現しました。さらに、「飢餓に苦しむ途上国での生態学に基づく食糧生産計画と環境保全」を進め、世界で最も乾燥した地域といわれるエリトリアにおいて海水を利用した新しいマングローブ植林技術を開発し、それを利用した家畜生産技術に発展させ地域住民の生活改善を通して持続可能な地域社会の構築の可能性を示し、食料生産の推進、砂漠の緑化に対しても先駆的な貢献をしました。これは、最貧地域における経済的な自立への一方策を具体的に立証したもので,その功績は極めて高く評価されています。
 サトウ先生は大学を卒業した後、庭師の仕事をしていた頃、たまたま入り込んだカリフォルニア工科大学で、後にノーベル生理学・医学賞を受賞することになるマックス・デルブリュックに話を聞いてもらう機会を得ました。デルブリュックはサトウ先生の入学希望の話を熱心に聞いてくれ、特別生としての受け入れ審査の便宜を図り入学を認めさせた上、数年間経済的にも援助してくれました。サトウ先生はデルブリュックに受けた恩を一生忘れず、「教育こそ人の育成の根源である」との考えを育み、自ら若い人に教育の機会を与えることを実践しています。
 こうしたサトウ先生の業績に対し、環境のノーベル賞と言われるブルー・プラネット賞が授与され、秋篠宮殿下ご夫妻のご臨席のもとで2005年10月に授賞式が行われました。先生は副賞として頂いた5,000万円と大腸ガンの標準治療薬となっている抗ガン剤の特許収入数千万円をマンザナール計画に投入し、つぎはサハラ砂漠を緑化しようという壮大な夢への挑戦を始められています。80才になってなお、高い理想とヒューマニズムに生きる先生のお姿に水の循環と恩の循環の想いが重なって深い感銘を抱かずにはおれません。ぜひとも日本の若者にもこうした生き方をみならってほしいと思います。

(2008年11月8日土曜日)

第6話 尊敬する師に出会って ~報恩感謝~ 

 私は小学校の頃、手塚治虫氏のマンガ「鉄腕アトム」が大好きでした。鉄腕アトムが悪い科学者の手に渡ると悪者になってしまうのが残念で、その頃から自分はお茶の水博士のような善い科学者になりたいと思うようになりました。大学院で食品中のビタミンCやポリフェノール類などの抗ガン物質と活性酸素および遺伝子との関係を調べていた時に、当時名誉教授として大学に残られ、脳の研究をされていた67歳の山藤一雄先生に出会い、大学院を終わってから、4年間無職で大学に残り、脳の働きを明らかにする研究をする機会を得ました。山藤先生は37歳の時に、ウイルス遺伝子が正常なカイコの遺伝子内にもともと潜んでいて、活性酸素によって遺伝子が傷つくことでウイルス遺伝子が飛び出してウイルスができ、病気になるという革命的なウイルス生命起源説を提唱し証明して注目されました。その頃出版された先生の論文は九州大学が創立されて以来現在までの間で、最も影響力の大きかった論文として評価されています。山藤先生から直々に数学、物理学、化学、生物学、心理学などを総合した研究の進め方や独創的な研究のやり方を教えて頂いたのは、真に幸いなことだったと感謝しています。山藤先生はつねづね次のようなことを仰っておられました。「人生は短い。だから、できるだけ重要なインパクトの大きな研究をやりなさい。重箱の隅をほじくるような瑣末な研究をやってはいけない。」「農学の研究はデータを出してから考えるという帰納法的研究になりがちである。それでは研究の進展が遅い。物理学や化学のように、少ないデータから理論を導き、その理論を実験で証明するような演繹的な研究に進化しないといけない。」「年をとったら良い仕事はできないと一般に言われている。でも、私はそれに挑戦したい。」「燃えなさい。先生が燃えなくて、どうして学生に情熱の炎を燃やすことができようか。」「頭脳をいつも良いコンディションにおいて、できるだけ突飛なことを考えなさい。徹底的に考え続けなさい。同じことを証明するのでも人と違ったやり方で証明しなさい。」「日本人にも独創性がある。沖縄から北海道まですべての大学にノーベル賞学者が輩出するようにならないといけない。そのためには研究の核になる人物が出てこないといけない」。
 72歳の山藤先生の情熱と努力に当時27歳だった私は圧倒されて、「63歳の定年後にこれだけの情熱を傾けることができるのだから、若い私が少々のことで弱音を吐いたら恥ずかしい。先生の夢に自分を賭けてみよう」と思ったものでした。山藤先生に師事して2年目からパーキンソン病を発症され、だんだんと歩くのが不自由になられました。そこで、毎朝6時半にバス停まで車でお迎えに行き、バスのステップ前に台を置いて降りてもらい、6階の研究室まで階段をお供させてもらいました。講演をされるときもお供をしてお世話をさせて頂きました。私がアメリカに留学している時に、81歳でなくなられましたが、亡くなる前日まで、研究所を創って次はこういう研究をやりたいと夢を話されていたそうです。師から頂いた数々の恩に感謝するとともに、中間ランナーとして頂いた恩を次の世代に返していかなければと思うこの頃です。

(2008年11月7日金曜日 )

第5話 大宇宙の姿と水のこころ 

 夜に空を見上げると無数の星が見えます。まだ筆者が小学生だった頃、生まれ育った奄美大島で、月のない夜に網を引いて魚取りをするために大人たちと一緒に浜に出て、汐が満ちるのを待ちながら、夜空の星のもとで伯父が色々な話を子供たちにしてくれたのを覚えています。肉眼で見える星の数は限られていますが、それでも星降る夜という言葉がぴったりするほど無数の星に見守られて地球があるような気がしました。天文学の知識によれば、地球は一辺が約104 kmの立方体にすっぽり入ります。さらに辺を大きくすると、太陽系の大きさが1010 km、銀河系宇宙の大きさが1018 km、1020 kmの空間には兄弟銀河である大小マゼラン星雲がさらに大きなアンドロメダ星雲を含む局所銀河団に含まれているのが見えます。それらの超銀河集団はさらに大きな泡構造の大宇宙の一部になっていますが、大宇宙の大きさはよく分かりません。しかし、現代宇宙論によれば、宇宙ができるときに、私達の宇宙だけでなく、無数の宇宙が同時にでき、私達の宇宙はそれらの一つにすぎないと言いますから、想像を絶します。一方、眼を小さく転じますと、私達の体をつくっている細胞、細胞をつくっているタンパク質や遺伝子などの分子、分子を構成している原子、原子を構成している陽子、中性子、電子などの素粒子、素粒子を構成している6つのクォークというように小さく細分化することができます。クォークの大きさが10-16 m程度と言われています。ところが、現代物理学の最先端の理論によれば、宇宙を構成する究極物質は10-35 mのひも状の物質であると言われています。宇宙は相似構造と言われます。原子の中の電子は回転しながら原子核の回りを回っています。地球は自転しながら1年かかって太陽の回りを回っています。太陽もまた自転しながら2億年かかって銀河の中心を回っています。銀河もまた自転しながら宇宙を回っていいます。そして、無数の星の動きは私達が見ることができないたくさんの暗黒物質によって支配され、整然とした法則に従って秩序を保っています。2008年9月から欧州で稼働を始めた加速器は素粒子同士を高速に近い速度で衝突させることにより、新しい粒子やブラックホールを作り出し、暗黒物質の謎に迫っていく計画だと言われています。また、私たちの3次元宇宙の外側に4次元、5次元という多次元宇宙が存在することも証明されるかもしれないと言われています。こうした科学の話に私たちの宇宙観や人生観が変わるもしれないとわくわくした気持ちになります。
 一方、人間の体は約60兆個の細胞からなり、それぞれが特有の仕事を持ちながら、全体に見事に調和して生きています。個々の細胞は私達が親である宇宙に思いを馳せるように、体全体に思いを馳せながら生きているのかもしれません。それぞれの細胞は分を知り、分を守りながら誠実に生きています。人は人生において様々な試練に会い、時には病気になり、生きるとは何か、愛とは何かを問いながら、やがては死んでいく生き物のように思われます。私達の体の中で水は激しい勢いで流れ、体にエネルギーを与え、形を整え、全体としての見事な調和を生み出す宇宙そのものとよく似た役割を果たしているように思えます。水は良いものも悪いものも、きれいなものも汚いものも、あるがままにすべてを受入れ、それらを生かし、浄化しているように思えます。地球の血液として水は循環し、美しくかつ繊細な地球の生命を創造しています。人は人生の様々な喜怒哀楽や試練の中で水の様にたんたんと生きて成長していくものかもしれません。水の研究をしながら、水のこころに迫りたいと思うこの頃です。

(2008年11月7日金曜日 )

第4話 人間の体に良い電解還元水  

 私達の体の約2/3は水でできています。私達は毎日2~2.5リットルの水を飲む必要があると言われています。飲んだ水はどのくらいの速度で体内に吸収されるのでしょうか。ビールを飲んだ時の酔いの周り具合や水を飲んだ時の尿意から胃腸からの水の吸収は早いと推定されます。腎臓内科の専門の先生はおそらく30分もあれば循環系に入るだろうと推測しています。水素には軽い通常の水素と、重たい重水素、三重水素があります。軽い水素からなる通常の水と重水素からなる重水は区別して測定できます。昔の実験で、ネズミに約0.5%の重水を注射し、経時的に脳、心臓、筋肉などの臓器の重水濃度を測定したところ、どの組織も10分後に最大濃度に達し、それから少し減って、約20分後に一定の値になったと言われています。体内の水は心臓の働きで激しく循環しています。腎臓は一日に180リットルもの水をろ過すると言われています。人間は水を飲まないと3日で健康を害し、7~10日で死亡します。水は無味無臭ですので、毎日飲んでも飽きることなく、たくさん飲むことができます。こうした水に特定の機能を付与したものが機能水と呼ばれる水です。厚生労働省、農林水産省や経済産業省などが支援して発足した日本機能水学会では、機能水とは「人為的な処理によって再現性のある有用な機能を付与した水溶液のうち、処理と機能に関する科学的根拠が明らかにされたもの及びされようとしているもの」であると定義しています。とくに、水の電気分解でできる電解還元水は製造原理がはっきりしており、消化不良、腸内異常発酵、慢性下痢、胃酸過多などの胃腸症状の改善に効果があることが臨床試験により確認され、医療用の水として厚生労働省が認可している水です。電解還元水は認可されている効果以外にも様々な効果が期待されており、現在活発に研究が行われています。私達は活性酸素が人間の寿命や老化、様々な疾病と関係していることから、電解還元水が体内の過剰な活性酸素を消去することにより生活習慣病の改善に良い効果を示す水であることを立証するための様々な基礎研究を行っています。他の研究室からも、例えば、胃粘膜障害モデルでの改善効果、腸内発酵の改善効果(糞便中の悪臭代謝産物の減少)、骨形成の正常化、マウスをもちいた実験での寿命延長・老化防止効果などが報告されています。私達も電解還元水が線虫という小さな虫の寿命を延長させることを確認しました。このように電解還元水が安全で、かつ人間の体に良い水であることが示す証拠が沢山集まってきておりますが、まだまだ多くの研究を積み重ねていく必要があります。現在、健康に良い水といううたい文句で様々な水や水の製造装置が販売されています。しかし、健康に良い水かどうかを判別するための明確な基準がまだ十分確立されていません。私達は飲料水の酸化力、還元力、細胞内活性酸素消去能力、細胞機能の制御能力などを調べ、健康に良い水かどうかを客観的に評価できる基準を確立するための研究を続けています。こうした科学的評価に裏付けられた健康に良い水が世界中に広まることを願っています。

(2008年11月7日金曜日 )

第3話 水道水の功罪 

 人が生きていくためには、毎日2リットルから2.5リットルの水を飲む必要があります。また、飲料水以外にも生活には大量の水を必要とします。我が国では一人一日あたり約340リットルの水を消費していると言われています。電気洗濯機、水洗トイレ、自動車の洗車用水などのほか、生活が豊かになれば、入浴回数や掃除、庭への散水量も増加します。大都市では快適な都市生活を保障するための都市活動用水(大病院、空港、駅、ホテルなど)が都市への総給水量の半分近くにも達しています。一方、地球上には約14億Km3もの水が存在していますが、その97.5%は海水であり、陸上の動植物が利用できる淡水はわずか2.5%に過ぎません。しかも、淡水のほとんどは極地の氷であり、利用可能な淡水は1%以下です。古くから人は生きていくために水の確保を最重要課題としてきました。水を人工の水路で導水する水道施設は古くはローマ時代からあり、我が国でも安土桃山時代から整備されるようになったとされています。とりわけ、19世紀以降に導入された緩速ろ過水道はコレラのような伝染病の防止に威力を発揮しました。現在、日本の水道の普及率は1995年3月末で95.3%になっており、蛇口をひねれば水が出るという快適な生活を人々は享受しています。水道は人の飲用に適する水を、豊富に、だれにでも、かつ安価な価格で供給できなければなりません。水道の水源には地表水と地下水があります。地表水は河川を流れる水や、ダムや湖沼に貯められている水であり、我が国では水道水源の約3/4を占めています。山地の多い日本では河川の下流部の平野に大都市が発達していることが多く、下流部の河川水を取水して水道にしていることが多くなっています。下流部の都市の水道水の品質はその地点から上流の都市の下水を含めた生活排水、農業・工業廃水などの影響を大きく受けることになります。さらに、近年の都市部の人口増加に伴う水資源の不足から河口付近で採取し一度使用した水を上流に運び、放水して下流部で再利用することもよく行われるようになりました。大都市では平均5回ほど水の再利用をしていると言われています。当然、水質はこのリサイクルの回数が増えるほど低下し、大量の塩素殺菌をしなければならなくなります。日本で一番長い川は利根川ですが、利根川水系の下流では水道水基準を満たすのも困難な位に水質が悪くなっていると言われています。
 私達の体は水が入ってきては流れて出て行く一種の川だと考えることができます。飲料水の品質低下は即私達の体の水の汚染につながり、知らず知らずのうちに病気になりやすい体にしてしまう可能性があります。水道水は活性酸素の仲間である塩素やオゾンで殺菌された酸化水です。短期的には安全でも長期的に見た場合に本当に安全か再検討する必要があるかと思います。水道水は国が保証する安全な水であると盲信するのではなく、家庭の蛇口まできた水道水を各家庭の責任で体に良い水に変えて利用する時代になっているのではないかと思います。人間の体に本当に良い水とは何かを明らかにする研究と健康に良い水を作ることができる機器の開発と普及が今後益々重要になってくるだろうと思います。

(2008年11月7日金曜日 )

第2話 水のこころと世界  

 いま、世界を見廻してみると親殺し、子殺し、兄弟殺しなどの異常な事件、汚職やいじめ、テロ、戦争などがあちこちで起こっており、調和のとれた世界とはとてもいいがたい状況にあるように思えます。多くの事件や戦争が人々の恨み、妬み、そねみや自分だけの利益を求める不自然な心で起こっているように思われます。また、人々の心に平安をもたらすべき宗教が原因で戦争が起こることもしばしばあります。大昔から、人は富の奪い合いをしてきました。頻発するテロも何百年と続く民族的な恨みが背景にあることも多いように思います。人間はこうしたみにくい争いから逃れられないものでしょうか。
 我が国には昔から「水に流す」という言葉があります。わだかまりを解くという意味に普通使いますが、もともとの意味は罪や穢れを水に託して祓うということからきていると言われています。さらさらと何の執着もなく、流れ来て、流れさる水を見ていると、この水のように様々な想い、金や名誉などへの執着から自由になりたいという気持ちが湧いてきます。
 私達の体の中を水は激しく動き回り、動く水は生きた水となって、細胞を活性化し、細胞に栄養を与え、老廃物を除去してくれます。水はしばらく人間の体内に留まり、人間としての生を歩みますが、やがて、外に出て、植物や他の動物の体内に入り、それぞれの生を生きます。また、あるときは、川や海の水となり、蒸発して雲をつくり、雨や雪を降らせます。このように水は一瞬も留まることなく、変化しながら、地球の血液としての働きをしてくれています。地球も鉄と水素からなる灼熱の核の周りを溶けた岩石であるマントルが循環し、その外側を冷えた岩石である地殻(地面)が覆い、その地殻も地震や火山活動などを起こしながら活発に活動をしています。こうした条件はまさに生き物の条件と同じであり、地球そのものも立派な生き物かもしれません。私達の体に魂という意識が宿っていると言われているように、地球そのものにも高度な意識が宿り、その地球意識は親としての暖かい大きな心ですべての動植物や無生物を育み、その成長を喜んでいるのかもしれません。小さな生物を大きな生物が食べ、その生物はより大きな強い生物に食べられるという食物連鎖の中で生物は生きています。食物連鎖を弱肉強食の原理と見る見方もありますが、より小さな生物が大きな生物に食べられることによって、より大きな働きができるように生まれ変わっていく姿であると見ることもできます。食物連鎖の法則の中で生きている動物は必要以上に餌となる動植物を殺しはしません。餌が亡くなれば自身も滅びるという自然法則をわきまえて節度をもって共に生きているように思えます。
 しかし、人間は科学技術を発達させ、便利な世界を造ってきた反面、節度を忘れて自然を破壊し、水、空気、土を汚した結果、不健康な体となり、また地球温暖化による様々な異常気象に苦しめられています。このままでは、人間はわがままなガン細胞として地球から排除されるかもしれません。水を擬人的に表現した場合、「水の心」とは素直な心ではないかと思います。今こそ、私達は水のもつ素直な心、和する心を取り戻し、互いの存在を認め、生かしあう愛和な共生の世界を築きあげていかなければならないのではないでしょうか。

(2008年11月7日金曜日 )

第1話 水の研究と科学 

 私達の住んでいる世界、すなわち宇宙には分からないこと、不思議なことがたくさんあります。自然科学は宇宙を支配する自然法則を、科学的(合理的)思考方法を用いて探求する学問です。そして最終的に科学的成果を人類の幸福のために役立てることを目標としています。自然科学者は私達の住んでいる宇宙は単純な自然法則に支配されており、合理的な説明が可能であると信じています。科学的思考方法とは、従来の常識では理解できない不思議な現象に直面した時に、その現象を良く観察し、データを集めて、その現象を合理的に説明できる仮説を構築し、その仮説が本当かどうかを実験で確かめ、正しくない場合には新しい仮説を構築し、その仮説が正しいかどうかを再び実験で確かめるということを繰り返しながら、自然法則を発見していく方法です。科学は決して現象の説明にとどまるものではなく、現象の背後に統一的な世界観を作り上げていく人類の思想的な営みの一つであると言えると思います。
 2006年4月に私達が人間の体に本当に良い水とは何かという疑問に対する答えを知るために、健康に良い水・還元水に関する研究を始めて12年が経ちました。水の研究を始める数年前に隣の遺伝子制御学研究室の教授であった故向井純一郎先生からアレクシー・カレルの本「ルルドへの旅—祈り」を読むようにと貸して頂きました。カレルは血管縫合手術および臓器移植法を考案して1912年にノーベル医学賞を受けた優秀な医学者です。筆者が専門とする動物細胞培養技術の祖でもあります。カレルの報告によると、ルルドの水の奇跡は飲んで治るというよりも、治癒はしばしば一瞬にして起こり、長くても数分から数時間で起こるというものでした。科学者としての彼にはそうした奇跡的治癒はとうてい理解しがたいものであったと想像されます。ルルドの水による奇跡的治癒は科学が高度に発達した現代でも合理的な説明が困難な現象であると思います。
 1996年4月から電解還元水整水器メーカーである日本トリムと共同して、電解還元水の疾病改善効果を解明する研究に取り組んだ時、あくまでも現代科学で実証できる仮説に基づいて研究を進めることにしました。始めに、電解還元水中に多量に存在する水素分子が何らかの仕組みで活性水素に変換され、体内の過剰な活性酸素を消去することで疾病が改善されるという活性水素還元水説を提唱しました。その約1年後、大分県日田市に地下からくみ上げられる深井戸水(現在は日田天領水という商標で市販されています)が電解還元水と同様の疾病改善効果を持つことが明らかとなり、ルルド水やノルデナウ水などのいわゆる奇跡の水も含めて天然水の中にも細胞内活性酸素を消去する天然還元水が存在することを明らかにしました。そうした還元水の効果を統一的に説明できる理論として、飲料水中のミネラルが電気分解や地下の岩石のエネルギーにより還元されて金属ナノ粒子となり、水素分子を活性水素に変換したり、直接活性酸素を消去したりするという活性水素金属ナノ粒子還元水説を提唱し、その証明のための研究を続けています。水は大変不思議な物質であり、私達の研究もまだまだ水の持つ機能のごく一部を明らかにしつつあるにすぎないと思います。しかし、一見不思議な現象であっても、数学、物理学、化学、生物学、心理学などの最先端の知識を総動員して取り組んでいけば理解可能だと思います。いつかはルルドの奇跡の水の謎にも迫り、より少量で高い疾病改善効果をもつ奇跡の水に近い水を作れたらすばらしいなと考えています。

(2008年11月7日金曜日 )

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