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外来生物と戦う

生物的防除による環境と生態系の保全に配慮した外来害虫の抑圧

近年、外来生物が引き起こす様々な問題が注目されています。多くの場合、既に分布を広げ数を増やしてしまった外来生物を根絶することは困難です。薬剤の使用などにより力ずくで根絶しようとすると、環境や生態系に多大な悪影響を与えかねません。

また、外来生物はその土地が誰の所有か(国有地なのか私有地なのか、など)に関係なく侵入していきますから、彼らを追跡し防除するにも、いちいち土地の所有者に許可を得る必要があるという法的な問題もあります。

これらの問題に有効な害虫の防除法として「生物的防除」という考え方があります。生態系に悪影響や負荷を与えることなくターゲットの外来昆虫(しばしば害虫)だけを問題ないレベルにまで減らすというものです。

分かりやすく言うと、自然界に普遍的に存在する「食う者と食われる者」の関係に注目し、原産地(外来生物の故郷)に棲息する外来害虫だけを餌あるいは寄生対象とする有用生物(ここでは天敵昆虫類)を利用しようというアイデアです。

天敵昆虫および害虫のフォトギャラリー

天敵昆虫や害虫について、所属研究室である天敵昆虫学研究室のウェブサイトにも画像とともに概説しています。ご参照ください。

生物的防除に欠かせない基礎研究

天敵昆虫(寄生蜂や捕食性昆虫)には、特定の種類だけを攻撃するものがいます。防除したい侵入害虫だけをやっつけてくれる、逆に言えば、それ以外の生物には影響を与えない種類を探し出し、それを日本に定着させることで、天敵に害虫をやっつけさせようというわけです。

極端な話、我々人間が何もしなくても、「食うものと食われるもの」の関係を新たに構築してやれば、増えたい放題に増えた害虫を減らすことが可能です。

ゾウムシの幼虫を探す寄生蜂
ヨーロッパトビチビアメバチ

現在、マメ科牧草とレンゲの侵入害虫アルファルファタコゾウムシを防除するため、本種幼虫に寄生するヨーロッパトビチビアメバチの導入・定着促進を進めています。この蜂はタコゾウムシだけを攻撃するため、他の固有の昆虫類に対しては全く影響がありません。

春の風物詩であるレンゲ畑はゾウムシの被害により壊滅状態になることがあったのですが、この蜂が増えた地域ではゾウムシ数が減少し、レンゲへの被害が著しく低減されるようになりました。

さらにアメバチの生態や行動を詳しく研究することで、より効果的な利用法を探っています。

このように、有用な天敵昆虫を利用し、対象害虫だけをうまく抑圧しようというわけですが、このような研究は大学単独でできるものではありません。農林水産省門司植物防疫所と鹿児島県農業開発総合センターと共同して研究を進めています。

参考データ

タコゾウムシの天敵寄生蜂を放飼した地域では寄生率(=タコゾウムシ被寄生死亡率)が上昇した。

前の年に蜂が多い場所ではタコゾウムシの発生が抑えられ、レンゲの被害も減った。