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  1. スズメバチ事典
  2. 生垣や庭木にスズメバチがやって来る理由
  3. 花外蜜腺が誘う -花以外の場所から出る甘い蜜-

花外蜜腺が誘う -花以外の場所から出る甘い蜜-

モッコウバラの花外密腺

モッコウバラは、初夏の頃、大量の淡い黄色の花を一斉に咲かせるので見応えがあり、庭木として植えられます。このモッコウバラには花外蜜腺という分泌腺があって、そこから蜜を出します。その名の通り、花の外、つまり花以外の場所にある蜜腺で、新芽や若い葉っぱの部分に花外蜜腺が集中しています。

この花外蜜もスズメバチにとってほどよい炭水化物源になるようで、秋の頃、モッコウバラの新芽にスズメバチたちが飛来しているのを見かけます。スズメバチ以外では、アリやアシナガバチもやってきます。

庭のモッコウバラのキイロスズメバチ

新興住宅地で最も良く見かけるスズメバチ。早朝から飛来していた。

キイロスズメバチが止まっている新葉の下側に
花外蜜腺からしみ出た蜜が見える。
 

なお、モッコウバラはほどよく葉が生い茂っていて、この茂みの中にコガタスズメバチが巣を作ることが稀にありますので、それにだけは注意してください。

その他の花外密腺

花外蜜腺は身近なところで見かける他の植物にもあります。意外と知られていないところではソメイヨシノ、つまり桜ですが、これにも花外蜜腺があります。ただ、蜜が出るのは春から初夏の頃に集中します。桜の木にアリが多いのは、この花外蜜腺が理由であることがあります。

下の写真は、ソメイヨシノの花外蜜腺から出た蜜を舐めにやって来た蜂たちです。

ホソアシナガバチの女王蜂

キボシアシナガバチの女王蜂

他には、カラスノエンドウ、アカメガシワ、シンジュ、イタドリ、それからソラマメや緑豆などの家庭菜園で植えられる植物にも花外蜜腺があります。

花もないのにやたらとハチやらアリやらがやってきて葉っぱや芽の部分にいるなら、花外蜜腺から出た蜜を舐めている可能性があります。それ以外だと、アブラムシなどが出した甘露が目的であることが多いです。

家庭菜園の緑豆に飛来したツマグロスズメバチ(亜種 indosinensis

芽の下に縦に4つ並んだ黄色い部分が花外蜜腺。(ベトナム中部のフエ市にて撮影)

カラスノエンドウの花外蜜腺から分泌される蜜

蜜にはショ糖や果糖などの糖分が含まれる。
 
 

いずれにしても、目的はあくまで蜜であって、人を攻撃することではありません。すぐ近くに巣がない条件では、単独で餌探しをしているスズメバチは捕まえでもしない限り、いきなり人を刺すことはありません。そっとしておけば問題なしです。

ちなみに植物が花外蜜腺という器官を進化させた理由の1つに、アリなどの天敵をボディーガードとして利用するというのがあります。植物は動けません。逃げることは出来ない代わりに、防御物質やトゲなどで武装したり、アリや寄生蜂のような天敵生物を誘引してボディーガードにすることで植食性の昆虫から身を守っていると考えられています。

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