個性的なカイコたち

 当研究室で保有しているカイコ系統の一部をステージごとにご紹介します。
 カイコといえば幼虫期は白色の体色で繭も真っ白というイメージですが、実は、形質で雌雄が分かれる系統や見た目がユニークな系統など多様なカイコがいます。分譲可能な系統に関する遺伝子情報などはNBRPカイコのサイトをご覧ください。

≪ 幼虫 ≫

体色や斑紋、体形などの特徴が見た目にはっきり現れるためユニークなカイコ形質を楽しめる時期です。
NB1、NB2、NB3、p50は、病気に強く扱いやすいので研究者の方はもちろん、学校教材や初心者の方の飼育にもおすすめしています。

NB1

標準的なカイコの形質を有しており、まずカイコを飼ってみたいという方におすすめ。赤卵遺伝子を有しており、雌雄の交配で得られた卵は黒色と赤色に3対1で分離するため、遺伝の教材として適している

NB2

雌の性染色体Wに形質マーカーが座乗しているため、幼虫の段階で、容易に雌雄を見分けることができる。NB1と同様に赤卵遺伝子をヘテロに持つため、NB2の卵も3対1に分離する 写真:黒色が雌、白色が雄

NB3

NBRPが飼育しているカイコの中で最大級のサイズになる大型系統。大型で扱いやすいため解剖実験や注射による薬剤の毒性実験など幅広い利用が期待されている 写真:上の2頭がNB3、下の2頭は比較対象のNB2

p50

病気に強く年間を通して安定的な利用が可能な系統。カイコゲノム情報の標準型として、日本と中国で共同でゲノム解析が進められ、非常に高品質なゲノム情報を利用することができる

油蚕

油紙のように皮膚が透けているため体内の器官が動いている様子を見ることができる。写真はH46系統

姫蚕

真っ白な体色がお姫様のようということで名付けられた。写真は姫蚕でこぶの形質も併せ持つn51系統

虎蚕

黒い縞模様が体節に現れる。レモン色の体色と縞模様を併せ持つものはまさに虎のよう

モザイク

体の左右や上下で模様が異なり愛好家に人気の形質のひとつ。写真はm03系統

レモン(黄体色)

皮膚全体がレモン色となる形質。写真はかすりの形質も併せ持つxs09系統

黒縞

黒色の皮膚に白の縞模様で人気が高い

褐円

褐色の丸い斑紋をもつ。写真は「褐円」「こぶ」「縞」の3つの形質が発現するxs03系統

チョビヒゲ

第2体節の眼状紋がチョビヒゲ状に現れるユニークな形質。写真はf38系統


≪ 繭 ≫

実は、カイコの中には、黄色やピンク色などのカラフルな繭をつくる系統もあります。
繭色は桑の葉に含まれる色素に由来しますがシルクをつくる工程で色繭も白色になります。
複数の蚕がひとつの繭をつくるもの(多蚕繭/同功繭)もあり、九州大学では26個体がひとつの繭をつくったという記録があります。

白繭

一般的な白色。大きさや形は様々

濃山吹

濃くはっきりとした山吹色 写真はs01

紅繭

写真はイタリア在来種のローザ(c44)。内層も黄色

紅繭

濃いピンク色の繭 写真はc41

多蚕繭

薄い黄色の多蚕繭 写真はi02

多蚕繭(ボカ繭)

毛羽がふわふわしているボカ繭でかつ多蚕繭 写真はb22系統

薄皮

中の蛹が透けて見えるほど薄い繭層 写真はr50


≪ 蛹 ≫

繭の中にいるので外からは見えない蛹。通常、体色は茶色ですが、黒色や煤色、翅の部分のみが白くなるなど変異を持つ系統もあります。

茶色

標準的な蛹

煤色

u30系統。蛹期は全体的に黒色の体色だが幼虫期は標準的な形蚕で白色の繭をつくる

ざりがに蛹(よう)

翅の部分が膨張して突出しざりがに状になる。写真はu20系統


≪ 成虫(蛾)≫

カイコガのほとんどはふわふわした白色の蛾ですが翅の形成や紋様、体色に変異のある系統や
翅が部分的に退化するなどの変異体、眼の色が赤色や白色になる系統などもあります。

標準的な形質

一般的な白色の蛾。蛾は変異形質が少ないのでほとんどがこのような白色の蛾となる

白帯黒翅

u40系統。体節部に近い翅の基部と周辺部が明瞭な黒褐色となる

黒蛾

蛾の翅や胴体が黒褐色となる。写真はu41系統

暗化型

体色が黒っぽくなる。写真はw18系統

しわ翅

翅の伸展が不良で縮翅状になる(羽化不全ではない)写真はn92系統

透明翅

翅の鱗粉が薄く翅が透けて見える。写真はu50系統

赤眼

写真のw05系統は淡赤眼と黒眼に分離する

白眼

写真はr01系統


≪ 卵 ≫

繭と同様に卵色も様々です。ほとんどが黒色か藤鼠色ですが白赤、ピンク、黄土色の卵もあり、大きさや形にもバリエーションがあります。
当研究室では蛾輪(がりん)※という道具を使って雌蛾を産卵させます。産みつけ方に個体それぞれの個性が出るのも観察して面白いポイントです。

g60

e03

e28

黒と赤に分離

e40

※蛾輪(がりん)

混入を防ぐため雌蛾を1頭ずつ入れて産卵させる道具です。当研究室には戦前から使用されているものも残っています。