九州大学農学部附属農場高原農業実験実習場



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  研究の背景




 研究の背景

 高原実習場では、次世代型の牛肉生産システムについて、現在の問題点を踏まえ、日本の草で肥育するという哲学に基づいたシステムの開発を目指しています。


1. 牛肉生産におけるわが国の深刻な問題

   日本の食料自給率は約40%と世界の中でも極めて低く、有事の際には国の存続は困難となり、
今後は異常気象や伝染病の発生等で食料が輸入できなくなることは容易に想像される。
 何よりもまず、自分たちの食料は自分たちでつくれる基盤は残しておかなければならない。
 日本の農業全般において農業従事者の高齢化、後継者不足、あるいは外国からの安価な農作物の流入により経営を放棄された多くの農地が荒廃しているが、そこには植物が繁茂している。基盤的に日本は、降水量の多い亜熱帯温帯気候であり、植物が繁茂する気候をもっている。この有利な気候条件を畜産に活かし、持続的な畜産システムの確立をめざすべきである。
 日本は、このような状況を強く認識し、先進国として世界的な食料バランスを考慮し、少しずつでも輸入飼料依存型の牛肉生産システムからの脱却を図り、国内の草資源を活かした安全で良質かつ持続的な牛肉生産システムにシフトする必要がある。(図1)

(図1) 反芻獣の物資循環的役割

2. 新しいマーケットの必要性

 現在の農業総産出額は、約8兆円である(2007年度)。それに対して、飲食料品小売業売上高および農畜産物・水産卸売業の売上高はそれぞれ約40兆円および約35兆円である(2007年度)。
 わが国の畜産経営は、特に輸入飼料に過度に依存しているため、ウシの販売価格の80%以上が飼料代等のコストであり、人件費等の入る余地が少ない。詳細に見れば、大規模経営にしても利益は非常に少なく、流通にのみ利益が集中しすぎていることがわかる。
 このような利益の少ない農業の典型的マーケットのしくみを改革することも、農産業活性化のために必要不可欠である。また、消費者の中にも、環境保全や食の安全を守る農家を支えるといった意味のマーケットを構築する必要がある。
 わが国の食料自給率の低下を防ぎ、健全な経営に支えられた農家が国民に安全な食料を供給するためには、植物資源の豊富な日本において、その資源を効率的に活用し、食料生産が持続的に可能な環境調和型で全物質循環型の新しい農業システムの開発・構築が必要不可欠である。
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