がんの栄養補給路を断つ新生血管抑制作用

がん細胞というのは非常にタフであり、したたかです。増殖していくためには細胞自身、多くの栄養が必要になります。これを得るために、がん細胞は自ら新しい血管を作らせます。これを「血管新生」といいます。

がん細胞は新しい血管を伸ばさせることで、増殖のための栄養補給路を確保していくわけです。クモと同じように、がんも大きくなればなるほど、たくさんの新しい血管を伸ばし、貪欲に栄養を吸収していきます。

結果的に、体の中に悪性腫瘍というポケットができた状態になり、患者さんの体に十分な栄養が行き渡らなくなります。いつもどおりに食事をしていても、やせ衰えていく場合が多々あります。体力がなくなっていけば、がんの増殖に対する抵抗力も奪われていきます。

がんの増殖を防ぐためには、栄養の補給路である新しい血管を作らせないことです。栄養が運ばれなくなれば、自ずとがんの勢いも弱まり、「壊死」の状態に近づいていきます。

血管新生を抑える作用を持つサプリメントとしてはサメ軟骨の成分が知られていますが、フコイダンの成分中にも同じような作用があることを私たちは実験で明らかにしました。

これはヒト子宮がんHeLa 細胞(以下、子宮がん細胞)に低分子化フコイダンを作用させるという実験です。

血管新生はがん細胞が血管の成長を促進するVEGF(血管内皮細胞増殖因子)を分泌することによって起こります。しかし、低分子化フコイダンをがん細胞に作用させると、VEGFの発現を明らかに抑制している働きが確認できました。

酵素消化低分子化フコイダンはヒト子宮がんHeLa細胞による血管新生を抑制する

図は子宮がん細胞に10μg/mLの濃度の低分子化フコイダンを加えて、VEGFの量を調べたものですが、低分子化フコイダンを加えないものと比べ、有意にVEGFの発現を抑えていることがわかりました。

さらに、低分子化フコイダンはVEGFの抑制だけでなく、血管の形成を抑制することもわかっています。

これらは「海藻モズクCladosiphonnovae-caledoniae kyline由来の酵素消化フコイダン抽出物は、腫瘍細胞の浸潤及び血管新生を阻害する」と題した論文にまとめ、国際学術雑誌『Cytotechnology』に発表しています。

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