悪性のがん細胞が出現するメカニズムをかんたんにご紹介しておきましょう。

人間の体には約60兆個の細胞が約200種以上の細胞群に分かれ、各臓器の一員として、極めて精妙に調節されながら全体のために働いています。これらの細胞は一定の周期で新陳代謝します。組織でいえば、皮膚なら約28 日、骨なら約4カ月で新しい組織に再生しています。

細胞が古くなれば死んでいくという現象は、一見、当たり前のように思われるかもしれませんが、じつは遺伝情報の中に「自滅」という指令が組み込まれており、どの細胞も一定の期間を過ぎると「自ら死を選び自滅していく」という仕組みになっています。

また、細胞に異変が起こった場合も、自滅するスイッチが働きます。 こうした細胞が自然死していく現象を医学用語で「アポトーシス」といいます。身近な例でいえば、オタマジャクシがカエルに成長していく過程で尻尾をなくしたり、人が胎児の状態であった水かきがなくなっていったりするのもアポトーシス誘導によるものです。

さて、細胞が生まれ変わるには、以前とまったく同じ遺伝子をコピーする必要がありますが、さまざまな原因で遺伝子のミスコピーが起こる場合があります。その結果、寿命により、死滅するはずだった細胞が無限の寿命を得て、増殖を開始します。これが、がん細胞です。

じつは、健康な大人でも1日5,000個程度のがん細胞が生まれているのですが、生体の腫瘍免疫機構という自己防衛システムが働くことによって、生体はがん細胞を異物とみなし、排除してしまうわけです。

ところが、加齢やバランスの悪い食生活、喫煙習慣、ストレスなどによって免疫力が低下していくと、がん細胞は生き残り、次第に悪性のがん形質を獲得していきます。

悪性のがん細胞には6つのやっかいな力があります。

  1. 勝手に増殖していく力
  2. 異なる細胞が接触したときに発せられる分裂停止信号を無視する力
  3. アポトーシス信号を無視する力
  4. 老化せずに無限に生きていく不死性
  5. 栄養を独り占めするために血管新生をする力
  6. 転移・浸潤を起こして全身に広がっていく力

とくに最後の転移・浸潤力の獲得は最も悪性の形質で、そうしたがんに変身した場合はステージ3または4と診断されます。

現代医学では悪性のがんに対し、手術、化学療法(抗がん剤)、放射線治療が三大治療とされています。

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