統合医療で注目される海藻由来酵素消化低分子フコイダン

第9回日本代替・相補・伝統医療連合会議 第5回日本統合医療学会

褐藻類(コンブ、ワカメ、モズクなど)にはミネラル類が豊富に含まれるほか、アルギン酸などの食物繊維や酸性多糖類であるフコイダンが多く含まれている。フコイダンはフコースを主構成糖とする多糖類であり、硫酸化フカンを多く含有している。フコース以外に、ガラクトース、マンノース、キシロース、ウロン酸などを含む。フコイダンの構造およびレオロジーに関する研究は古くから行われているが、近年ではフコイダンの生理活性に関する研究が盛んに行われるようになってきた。

これまで知られているフコイダンの生理活性は、抗酸化作用、免疫増強作用、抗腫瘍効果、抗ウイルス作用、胃潰瘍防止作用、抗糖尿病作用、抗動脈硬化症作用、抗アレルギー作用、抗血液凝固作用、肝障害軽減作用など極めて多彩である。とりわけ、抗腫瘍性機能性食品の一つとしてガンの統合医療においてモズク由来酵素消化低分子フコイダン抽出物が注目され、臨床において顕著な効果が期待されている。

正常細胞にも強い毒性を示す多くの抗ガン剤に比べて、フコイダンは正常細胞よりもガン細胞に強くアポトーシスを誘導することが知られている。また、マクロファージのToll-like receptor-4の活性化を介して、インターロイキン-12の発現を誘導し、インターフェロン-γの誘導やNK細胞の活性化などを介して腫瘍免疫を活性化することが推測された。

近年、ガン細胞内の高い酸化ストレスがガンの悪性の形質に関与しているという仮説が提唱されている。酵素消化低分子フコイダン抽出物が強い細胞内過酸化水素消去活性を示したことから、活性酸素種が関与するガン細胞の転移・浸潤及び血管新生を抑制することが期待された。実際、酵素消化低分子フコイダン抽出物はMMP-2や-9の遺伝子発現、分泌、活性化を抑制することにより、マトリゲルを用いたin vitro浸潤を抑制した。また、ガン細胞のVEGF遺伝子の発現および分泌を抑制することにより、血管新生を抑制した。担ガンマウスを用いた試験では酵素消化低分子フコイダン抽出物は、ガンの増殖を抑制し、延命効果を示した。

生活習慣病においては多数の病因が重なって発症している場合が多く、近代医療の考えでは処置しにくい場合が多い。その点、多彩な機能を持つフコイダンは、全身状態を改善し、患者自身の治癒能力を高めるための有用な治療補完剤となる可能性があると思われる。

※第9回日本代替・相補・伝統医療連合会議 第5回日本統合医療学会 にて掲載されました。

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