研究内容

植物生産生理学研究室では主に以下の研究を行っています。

・C3植物ヘのCAM型光合成の付与

 近年顕著に見られる地球温暖化等の環境変動は、耕地環境の悪化を促し、食糧生産性を低下させます。これは早急に解決すべき課題です。主要作物の多くはC3及びC4植物ですが、世界の耕地面積の約40%はこれらの生育に十分な降水量を満たしていません。
 そこで、乾燥や高温といった環境ストレスに対して高い耐性を示すCAM型光合成をC3植物に付与することによって、環境ストレス耐性の高い作物の作出を目指しています。

(担当)M1齋藤, B4近藤, 友田, 宗岡.


・低窒素条件下でのイネの高収量品種の作成

 作物の収量を上げるために必要な化学肥料に含まれる窒素化合物は、河川に流出し水質汚染を引き起こすことが問題視されています。また、今後人口増加が予想される発展途上国などでは肥料は高価で十分に使えないために作物の増収が見込めないのが現状です。
 収量を維持しつつこれらの問題を解決するには、肥料が少ない環境でも光合成能力を維持できる新品種の開発が必要です。そこで、低窒素条件下で高収量が得られるイネ品種の作出を目指し、窒素による光合成関連酵素遺伝子のエピジェネティックな発現制御機構について研究しています。また、形質転換技術の1つとしてゲノム編集を用いた実験も行います。

(担当) M2宮本, 馮, M1髙倉, 余, B4宇都宮, 脇.

成果

2020年度中間発表

宮本史也(イネRubisco小サブユニット遺伝子OsRBCS3の窒素に対する発現応答におけるヒストン脱アセチル化酵素OsHDA713の役割)

馮世程(イネにおけるヒストンアセチル化酵素OsGCN5を介した窒素によるRubisco遺伝子の発現制御)


・新規機能性野菜としてアイスプラントの利用

 アイスプラント(Mesembryanthemum crystallinum L.)は南アフリカ原産の1年生草本です。本種はプロリンやピニトールといった機能性成分を持っています。この植物は様々な商標で全国で販売されていますが品種は野生のものと私たちが開発したKA-i243のみです。
 機能性を高めた品種の開発や機能性成分を高める栽培方法を確立することで新規機能性野菜としてアイスプラントを作成することを目的としています。

(担当) M2大林.

成果

2020年度中間発表 

大林拓司(アイスプラント高機能性品種の育成および有用成分を高める栽培法の確立)


・シュロガヤツリを用いた水質浄化

 シュロガヤツリ(Cyperus alternifolius L.)は、カヤツリグサ科カヤツリグサ属の植物です。下水処理の際に殺菌に用いられている次亜塩素酸ナトリウムをシュロガヤツリを用いて除去する手法を開発する研究を行っています。その一環で、シュロガヤツリが耐えられる次亜塩素酸ナトリウムの限界濃度を調査しています。
 また、養分吸収能力が著しく高く、富栄養化の改善にも役立つ植物であるため、富栄養化した水に浮かべた稈でシュロガヤツリを栽培し水質調査及び生長量を調査しています。

(担当) M2佐野.

成果

2020年度中間発表 

佐野孝晟(シュロガヤツリCyperus alternifolius L.の光合成、物質生産、 及び水質浄化能に関する研究)


・環境要因の変動に伴う光合成変換機構の解明

 C4植物およびCAM植物はC3植物から進化する過程でCO2濃縮機構を獲得しました。大気CO2濃度の低下が光合成型を進化させた主要因と考えられていますが、不明な点が多く残されています。
 種々のストレスで光合成型をC3からCAMに変換させるアイスプラントや、水中でC3型、陸上でC4型光合成を行うエレオカリス(Eleocharis vivipara)を用いて、光合成変換機構の解明に取り組んでいます。

(担当) M2吉田.

成果

2020年度中間発表 

吉田侃生(CO2濃縮機構による活性酸素の発生制御に関する研究)


・アイスプラントの地上部再分化の制御要因

 アイスプラントには有効な形質転換体作出技術が確立されておらず、遺伝的な解析が困難です。この原因の一つに培養細胞から地上部が再分化しないことがあげられます。
 この問題を解決するために、根外植体由来のカルスから地上部を再分化させる培養条件を検討しています。また再分化に関するに遺伝子の発現解析を行っています。これら二つの側面から、地上部が再分化しない原因を明らかにし、再分化法を確立させ、形質転換体の作出を試みています。

 (担当) M1大串.


・アイスプラントの形質転換技術開発

アイスプラントの安定した形質転換技術を確立するために、フローラルディッピング法を応用した手法の開発をしています。アイスプラントは12葉齢程で開花するため、開花部にアグロバクテリウムを感染させることで遺伝子を導入する手法を検討しています。


(担当) B4 Ginger.


・アイスプラントの好塩性機構の解明

 アイスプラントはNaCl処理によって生長が促される「好塩性」を示す植物です。これまでにはキノアやスベリヒユなどで好塩性の研究が行われてきました。しかし、そのメカニズムにはわからない点が多いのが現状です。
 そこで、NaClがアイスプラントの生長にどのように関わっているかを、光合成やミトコンドリアのATP合成、細胞周期などに着目して研究を行っています。  

 (担当) M2佐藤, M1吉田, 党.

成果

2020年度中間発表 

佐藤稜真(RNA-Seqを用いたアイスプラントにおける好塩性に関わる遺伝子の網羅的解析)

第251回日本作物学会講演会ポスター発表

吉田和貴(塩生植物アイスプラント(Mesembryanthemum crystallinum L.) の光合成における好塩性機構の解明)