現在、日本人の3人に1人ががんで亡くなっています。やがて2人に1人ががんになるであろうといわれています。要因のひとつは食生活にあると考えられています。本来、日本人の食生活は野菜および大豆などの植物性脂肪が中心であり、バランスの取れた食生活でした。ところが食の洋風化で動物性脂肪の摂取量が増え、食材の大量消費が進むにつれて化学合成された農薬や肥料、着色料や防腐剤といった添加物が使われるようになってきました。こうした化学物質を私たちは今、恒常的に体内に取り込んでいます。

また、過剰なストレスによる活性酸素の増加も人の免疫力を低下させ、がん発現の大きな原因になっていると見られています。

現代医学は外敵に対して特効薬を開発し、悪い部分は切除するという考え方で進歩してきました。しかし、原因が特定できず、予測不能な変化をする病気に対しては手詰まりです。なぜなら、がんをはじめ、治療困難な現代病の多くは生命システムの本質に関わる病気であり、今日の科学ではまだ生命システム自体が完全に解明されていないからです。

現代病の対抗手段として期待されるのはモズクという生命体から抽出したフコイダンですが、未知の部分が多く、研究は始まったばかりです。世界各国の研究者が取り組んでおり、まだ解明の半ばにあります。

しかし、臨床的にはすでに明確な結果が出ています。一例を挙げれば、和歌山県のある病院で2003年3月からフコイダン療法を始めました。低分子化フコイダンを飲用した患者さん82人(うち末期がん47人)の約80%に容態の改善が認められました。数あるサプリメントの中でも約80%という有効率はかなりの数値です。また、内容的にも多くの臨床例で低分子化フコイダンの飲用により、腫瘍免疫が顕著に増強されること、そしてQOL(生活の質)の改善、延命・治癒効果などを明らかにしています。

結果は私たちの手元にあっても、医学的なメカニズムの完全解明まではまだ何年もかかるでしょう。

がん細胞を自然死に導く成分の特定に向けて

「低分子化フコイダンの三大作用」ページで、がん細胞に対する低分子化フコイダンの三大作用をご紹介しました。これらの作用は研究室においても、臨床的にも明らかになっているわけですが、その活性本体や作用機序は十分に解明されていません。

現在、私たちが着目しているのは低分子化フコイダンのアポトーシス誘導活性成分です。がん細胞を自然死に導くこれらの成分が特定もしくは限定することができれば、腫瘍に対し何倍も効果的にアポトーシスへ誘導することができ、患者さんの負担を大幅に減らすことができます。

実験では、まずフコイダンを70%のエタノールで2回抽出しました。すると高分子の画分が沈殿し、上清部分のアポトーシス誘導の活性が高まりました。別の装置で上清部分を評価したところ、比較的低分子の画分により高い活性が認められました。

次にさまざまな種類のイオン交換クロマトグラフィーを使い、活性成分のイオン性による分離を試みました。すると、陽イオン交換クロマトグラフィーのSP FFに活性成分が多く吸着しました。このサンプルを逆相クロマトグラフィーを使い、分子量で分画した結果、活性の非常に高い画分を特定することに成功しました。

以上の結果から、アポトーシス誘導の活性成分は低分子量かつ陽イオン性で極性の高い画分に大量に含まれると考えられます。この画分を質量分析等の分析にかければ活性成分を特定することができるという段階にまで到達しています。

次に低分子化フコイダンががん細胞を自然死に導くメカニズムの解明を試みました。生体に作用する仕組みがわかり、科学的に実証できれば、より多くの医者や患者さんに安心して低分子化フコイダンを使用してもらうことができるからです。

白血病細胞株HL-60を使った実験の結果、低分子化フコイダンはデスシグナルのみでなく、サバイバルシグナルをも介する複数の経路を刺激し、アポトーシスを誘導する可能性が高いことがわかりました。また、細胞内のシグナル伝達因子であるJNKおよびp38のリン酸化、がん遺伝子Bcl-2の抑制がアポトーシス誘導に関与しているという可能性が示唆されました。

このように低分子化フコイダンはがん細胞に対し、あらゆる刺激を与え、自然死に導きます。結論として、非常にアポトーシス誘導効果の高い機能性食品であることは間違いなく、今後さらに注目されていくことでしょう。将来的に特定した活性成分を用い、HL-60以外の細胞株でも同様の効果を確認することができれば、さまざまながんに対しアポトーシス誘導が効果的に作用することを実証できると考えています。

カロリンスカ研究所の提案

フコイダンに関する研究は故白畑實隆名誉教授が始めた研究でした。

先生は九州大学で長年、抗がん物質の研究を続けてこられました。抗酸化作用の強い物質を含む飲み物、食べ物ががんの予防や治療に役立つのではないかと考え、とりわけ活性水素を多く含む「電解還元水」に関心を寄せられました。「1日4~6リットルの電解還元水を飲むとがんが消える」。そんな報告がたくさん先生の元に届きました。しかし、その有効性が基礎研究レベルではわかっていても、人間の体内でどう作用するのかというメカニズムを解明するのは容易ではありません。また、現実問題として体力の弱った患者さんが毎日大量の還元水を飲むのは困難であり、臨床への応用に難点が残りました。少量で副作用のともなわないものはないかと、より完全なものを求め、研究を続けておられました。そんなとき、「フコイダンを飲んでがんが消えた」という信じられない報告があったのです。

今の日本では「食べ物や水でがんが消えることなどありえない」と断言する医師たちが圧倒的多数です。現実にサプリメントでがんが消えたとしても医師たちはあまり関心を示しません。
先生は低分子化フコイダンの研究を進めるうち、がんに対抗するサプリメントとして大きな可能性を持っていると感じられました。

低分子化フコイダンは、学術的研究よりも臨床での改善例が先行していました。作用機序が解明されていないのに、結果だけが先に出ている。現代医学を信奉する医師からは「眉ツバの代替医療のひとつ」と思われてしまうのです。患者さんはもちろん、統合医療を志す医師たちも歯がゆい思いをしていると思います。そんな方々のためにも低分子化フコイダンの研究を進めることはきわめて有意義なものと思われました。

2008年、白畑先生はスウェーデン国カロリンスカ研究所の毒性学研究室の先生を九州大学にお招きしました。カロリンスカ研究所は生物医学の分野において世界最高水準の研究機関であり、ノーベル医学・生理学賞の選考委員会を有する権威ある研究所です。そうした研究所の先生方と低分子化フコイダンの抗腫瘍効果について議論しました。すると「正常細胞に影響を与えず、がん細胞の表面連鎖だけに作用し、アポトーシスを起こすという話は聞いたことがない。そのメカニズムを研究したら優れた論文ができるのではないか」との提案をいただきました。

また先生は2011年5月12日にはカロリンスカ研究所の招待により、同研究所環境医学研究所において還元水と低分子化フコイダンの研究成果を発表されました。講演後、ノーベル生理学医学賞候補者の選考委員を永年務められた、元医学部長及び元環境医学研究所長のSten Orrenius名誉教授より「還元水の研究が4年前に比べて大変進んでおり興味深い。フコイダンの研究も現実的ながんの治療という観点から大変重要である」とのご講評をいただきました。

先生は、同月9日に北京市にある中国農業科学院農業食糧研究所機能性研究室において低分子化フコイダンのアポトーシス誘導効果等についての講演を行いました。研究員からは「機会があれば共同研究をしたい」と興味を持っていただきました。同月15日にはオーストリア・ウイーン市の「欧州動物細胞工学会2011 大会」に参加し、アポトーシス誘導機構を発表。23日には中国・大連市の「第4回世界癌会議」において「酵素消化低分子化フコイダン抽出物による癌細胞特異的細胞死及び糖鎖合成経路の改変誘導」というタイトルで研究発表を行いました。講演後、アメリカの学者より「大変興味深い。自分が携わっているジャーナルに総説を書いてもらえるとありがたい」との申し出がありました。

白畑先生の低分子化フコイダンの研究を引き継いだ私を含め、世界中のさまざまな学者たちが低分子化フコイダンの抗腫瘍効果に着目し研究を進めています。

難攻不落に思われていた「がん」という病。その頂がようやく雲間から顔を出し始めています。頂上への道を見つけ出すのは、並大抵ではありませんが、ようやく今、5合目に達したのではないかと考えています。

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