腫瘍に対する免疫の活性化機構

人の体には約60兆個の細胞があると前述しました。正常な細胞ががん細胞へと変異するのを防いでくれるのは、アポトーシス機構に関わっている「がん抑制遺伝子」です。しかし、喫煙習慣やかたよった食生活、運動不足などによって、危険因子は増え、対抗するがん抑制遺伝子も次第に破壊されるようになっていきます。

また、過剰なストレスによる活性酸素の増加も人の免疫力を低下させ、がん発現の大きな原因になっていると見られています。

免疫力という防衛システムが衰えた状態で、1個の正常な細胞が悪性のがん細胞に変異すると、増殖は際限なく繰り返されていきます。

したがって、がん細胞の発生とその後の増殖においては免疫力の有無が深く関わっているといえます。

ここで研究によりわかった低分子化フコイダンによる腫瘍免疫活性化機構を図で紹介します。免疫細胞のひとつであるマクロファージは、外敵の侵入を警戒するパトロール隊長のような存在です。フコイダンのような多糖類を体に取りこむと、隊長が持っている「アンテナ」を刺激します。アンテナとは、専門的にいうと、糖の基本構造を認識するTLR4(トールライク・レセプター4)というレセプター(受容体)です。TLR4を刺激されたマクロファージは外敵を攻撃するための物質を分泌します。これは抗腫瘍サイトカインともよばれるIL-12という物質です。IL-12は免疫細胞を活性化するよう働きかけ、インターフェロンγといった、がん細胞を攻撃するタンパク質を分泌させることができます。

酵素消化低分子化フコイダンによる腫瘍免疫活性化機構

マクロファージについては近年、「がん細胞も自分の体の一部なのに、それを異物と見なして排除にかかる」という性質がわかってきました。

このように低分子化フコイダンには体内の免疫細胞を刺激し、数も増やして活性化させる作用があります。そのメカニズムについて、詳しい解明はまだなされていませんが「フコイダンに多く含まれている多糖体が菌類の細胞壁の材料と似ているため、それを体内で発見した免疫細胞が病原菌と勘違いし、活性化するのではないか」といった推測が現段階では最も可能性が高いと思われます。

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