活性酸素の消去作用

最近、よく耳にするのが「活性酸素」という言葉です。活性酸素とは、通常の酸素よりも激しい反応性を持つ酸素のことをいいます。

この活性酸素とがんとの因果関係が非常に注目されています。活性酸素の発生ががんの悪性化に関係しているのではないか、あるいはがんそのものの発生に関係しているのではないかといわれています。

活性酸素は本来、ウイルスや病原菌を殺したり、不要になった細胞や物質を分解したりするなど、体内で重要な働きをしている物質です。しかし、過剰に活性酸素が発生すると、炎症を起こし、遺伝子が傷つけられてがんや糖尿病など、さまざまな病気の発症や悪化の原因になります。

また、活性酸素は老化の促進にも大きく関係しています。動物実験でも、活性酸素の発生を適度に抑制すると、寿命が確実に延びることが知られています。人間の細胞は他の動物に比べ、大変寿命が長いわけですが、それは細胞の中に二重三重に活性酸素を消す仕組みが備えられているからです。ただし、活性酸素の分子種の一つであるヒドロキシルラジカルを消去する酵素は存在しません。対抗策としては、植物性の食べ物をできるだけ摂って抗酸化物質を補う必要があります。

もっとも、その前に活性酸素の発生をできるだけ抑えることが大切です。無理をしすぎたり、悩みを抱えたり、ストレスを溜めることにより、体内に多くの活性酸素が発生します。もしも、日常的にストレスを感じているようであれば、ふだんの心の持ち方、生活習慣から見直していく必要があるでしょう。

最近の研究では活性酸素による過酸化水素の蓄積が悪性のがんの性質に極めて密接に関係していることがわかってきました。

遺伝子が傷ついた細胞が活性酸素の働きを受け続けることで、不死化細胞になり、やがては悪性のがん細胞に変化します。活性酸素ががんをがんらしくしているともいえます。つまり、転移・浸潤を起こすのも、血管新生によりがんが大きくなっていくのも、抗がん剤が効かなくなるのも、がんの遺伝子の活性化やがん抑制遺伝子の不活性化を起こす染色体異常を起こしやすい性質も、すべて活性酸素が関与しているといわれています。

ガン細胞と活性酸素との関わり

もし、こうした活性酸素をフコイダンが消すことができれば、悪性がんの良性化ということも期待できます。

そこで、悪性の肉腫細胞で、転移の頻度も非常に高いヒト線維肉腫HT1080細胞に対し、10%、20%の濃度で培地に低分子化フコイダン抽出液を加えてみました。

最も高いピークを示しているのはコントロール(何もしていない状態)ですが、低分子化フコイダンを入れてみたところ、あきらかに濃度依存的に活性酸素が消えていくことがわかりました。

また、悪性の細胞は細胞のまわりに過酸化水素を放出して、まわりの細胞に悪影響を与えますが、低分子化フコイダン処理をした細胞では細胞外に放出する過酸化水素の量も明らかに減少しました。

低分子化フコイダンに活性酸素を消すという働きが明らかになると、さまざまながん形質の良性化が期待できます。

がん細胞の浸潤プロセスというのは、まず基底膜にがん細胞が接着する際にはインテグリンという糖タンパク質やPセクレチンが関係します。低分子化フコイダンが基底膜への接着部分をブロックするということは、研究者たちの多くの実験で明らかになっていますが、私たちが調べたのは、分解時に分泌されるMMP(マトリックス金属プロテアーゼ)とよばれるプロテアーゼ(タンパク質分解酵素)の働きです。MMPはがん細胞を取り巻くコラーゲンなどのタンパク質を分解するため、がん細胞が動きやすくなります。低分子化フコイダンはMMPの遺伝子発現や活性化を阻害することがわかりました。

酵素消化低分子化フコイダンによる細胞内活性酸素消去と過酸化水素放出能の抑制効果
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