2. ニワトリ胚を用いた平滑筋組織の発生分化研究

私たちが食用としている筋肉には三種類あります。
焼肉やステーキなどに利用される骨格筋、心臓を構成する心筋、そしてモツ鍋や焼き鳥の砂肝(砂ずり)として食べられる平滑筋です。骨格筋と比較し、平滑筋の利用は限定的で、家畜の内臓は畜産廃棄物として処理されてしまいます。
骨格筋と平滑筋を細胞レベルで比較すると多くのタンパク質は類似しています。タンパク質は分解されると呈味性アミノ酸が遊離されることからも、平滑筋の食肉としての価値は本来もっと高い可能性を秘めています。

生物学的にも平滑筋は消化管のみならず血管や子宮、肺等で生命維持に重要な役割を持っています。一見、消化管は物理的に結合する一本の管ですが、食道から直腸まで複数の臓器により構成される複雑な臓器群です。その中で、全ての消化管臓器において共通かつ最大の機能である、「収縮、蠕動運動」を一手に担うのが平滑筋層です。消化管内腔の分泌細胞層を覆う様に環状に張り巡らされた平滑筋細胞は協調的かつ持続的に収縮する事で円滑な消化吸収と不要物の排出が行われます。食物の消化吸収能力低下による胃もたれや便秘・下痢等、ストレスによる潰瘍、ガン等、消化管のトラブルは幼児から成人まで未経験の者は皆無と言えます。このような重要な役割を担いながらも、平滑筋細胞はどのような経路をたどって発生し、寿命を全うするまで維持されているのか未だに不明な点が多くあります。

動物生命科学研究室ではニワトリ胚筋胃をモデルにして、平滑筋細胞の発生分化機構解明に取り組んでいます。