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対馬の現状[2013年9月]

ツマアカスズメバチの亜種 nigrithorax
(上県町仁田産/2014年4月撮影)

対馬に侵入したツマアカスズメバチについて、現在の状況を確認するため実際に対馬へ行き、調査してきました。

地元の方の案内でツマアカスズメバチの巣の場所まで行き、巣の様子や、巣に近づいたり、巣に刺激を与えたときの蜂の反応なども観察しました。

また、密度はどの程度かを確認するための視認調査(一定時間内に発見した種と数を記録)や、ミツバチの巣(蜂洞)に飛来する種構成と数についての調査なども、短い時間内ですが、行いました。

分類

長崎県対馬へ侵入したツマアカスズメバチは、中国南部原産の nigrithorax と呼ばれる亜種で間違いありませんでした。ヨーロッパや韓国に侵入している亜種と同じものです。対馬には韓国の釜山経由で侵入したと考えられます。

対馬・岬町産

韓国・大邱市産

ぱっと見た目に黒っぽいというのが特徴的なスズメバチです。亜種名の nigrithorax は『黒い胸』を意味します。

分布

地元の方の情報通り、本種は既に定着していました。分布の範囲は想像していたよりもはるかに広範囲であり、その活動範囲は対馬の中部(豊玉町)に達していました(ただし中部では巣は確認できませんでした)。

本種は分散のスピードが速いことが知られています。ヨーロッパでは、単純計算すると1年間で100キロメートルのスピードで拡散したとの報告もあります。自然度が高く、山の多い対馬でも、あっという間に広がっているようです。数年を待たず、厳原町など対馬南部に達するのではないでしょうか

つまり、ほどなく厳原港や対馬やまねこ空港もツマアカスズメバチの分布圏に入ることになり、そうなれば、そこから博多はもちろんのこと、日本各地へと拡散していくリスクが激増することになります。

ツマアカスズメバチを対馬から根絶できるかどうかは、ここ1~2年が勝負となるでしょう。

習性

ツマアカスズメバチの女王蜂は、初め茂みや土中の閉鎖的な環境に巣を設けますが、その後、巣の拡大のため、樹上の比較的高い場所に引っ越しをします。

下図は、桜の木の比較的低い場所に作られたツマアカスズメバチの巣です。このような感じで樹上に大きな巣を設けるスズメバチは、これまで日本にはいませんでした。

高さ6~7mくらいに営巣

 

巣の拡大図

巣上に働き蜂が多数いる

[2014年5月16日追記]
ツマアカスズメバチの営巣場所について調査した結果を「営巣を確認」にまとめました。

攻撃性

少なくとも、木の上に作られた(引っ越し後に作られた)巣に関しては、木の真下に行っても蜂から警告を受けることはまったくありませんでした。巣が普通の状態であれば、知らず知らずのうちに巣のそばを通って攻撃されるという可能性はないと言えます。

巣の駆除が地元で行われたとき、ツマアカスズメバチによる抵抗はさほどなかったため、『あまり攻撃的でない』との話もありました。しかし、同行したテレビ局の取材班が巣の撮影をしていると、カメラや撮影者に対して激しく攻撃してきました。また10メートル以上離れた場所にいたスタッフも刺されました(私の方へも偵察隊がやってきたのですが、速攻で網ですくったので問題ありませんでした)。

このように、一度攻撃し始めた対象に対しては執拗に食らいつきますので、他のスズメバチ同様に注意が必要です。

さらに、スズメバチの攻撃性は新女王蜂や雄蜂の羽化によって激増します。今回の調査中はツマアカスズメバチの新女王や雄蜂は確認できませんでしたので、それらが登場するこれからの時期(夏の後半~晩秋)、蜂の攻撃性がどうなるかを見極める必要があります。

また上述の通り、春に活動を開始する新女王蜂は、まず茂みの中などの低い場所に営巣します。働き蜂が増えてくると引っ越しを開始するのですが、巣が低い位置にある期間、気がつかずに巣を刺激してしまい、刺されてしまう事例が出てくるかもしれません。

[2014年5月7日追記]
ツマアカスズメバチの女王蜂について調査した結果を「女王蜂を確認」にまとめました。

ミツバチ狩り

ツマアカスズメバチはミツバチを好みます。対馬にはニホンミツバチしかいませんので、それが獲物です。以下は岬町津柳の蜂洞と、蜂洞前でのスズメバチの狩りの様子です。

巣の前でホバリング(飛翔しながら待機)して待ち伏せし、帰巣してきたミツバチを空中で捕獲します。

基本的には、静止しているミツバチには興味を示しません。

中には待ち伏せ型ではなく、積極的に巣周りにいるニホンミツバチを攻撃する個体もいるようです。このようなパターンの捕獲法を採用する個体が稀ですが見られました。

対馬ではニホンミツバチを利用した養蜂が盛んです。ツシマハチミツは対馬固有の伝統的自然養蜂によって得られ、500年近い歴史があります。

下図のように蜂洞を山林に設置し、中に巣を作ったニホンミツバチから蜂蜜を採取します。

蜂洞のミツバチを狩るため、土着のオオスズメバチやキイロスズメバチが頻繁に飛来しますが、これらに加え、ツマアカスズメバチも外来天敵として登場したことになります。

 
 
ミツバチは、キイロスズメバチやツマアカスズメバチに対しては、巣の外に出て防戦体制を取ります。

オオスズメバチは強力すぎるので、攻撃を受けるとむしろ巣の中に引きこもります。

ツマアカスズメバチによる伝統的養蜂巣への影響については、今後明らかにしていく必要があります。

謝辞

最後になりましたが、貴重な時間を割いてとても親切に案内してくださった境良朗さんに感謝します。境さんの案内がなければ巣を見つけることはまずできなかったでしょう。本当に助かりました。

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