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福岡市とその近郊でも確認!営巣の可能性は?[2022年5月]

2022年4月末および5月上旬に、福岡市東区ならびに福岡県久山町の2ヶ所で確認された特定外来生物「ツマアカスズメバチ」に関する5月6日までの調査結果です。

[2022年6月14日追記]環境省緊急調査の結果を「福岡県久山町で再発見」にまとめました。

ツマアカスズメバチの活動開始時期は土着種より早い

久山町で見つかったツマアカスズメバチ女王

4月末に本種1頭が福岡市内で発見されたのに続き、久山町においても本種女王蜂1頭を確認しました。いずれも養蜂家の方が管理するミツバチ(福岡市ではニホンミツバチ、久山町ではセイヨウミツバチ)の巣に飛来したものです。

土着スズメバチ類は女王蜂が営巣を開始したくらいの時期ですが、ツマアカスズメバチの場合は活動開始が早く、おおよそサクラ(ソメイヨシノ)の開花期には本種女王蜂の多くが越冬から目覚め活動を始めます

今年は、福岡市では3月の中旬頃、久山町ではもう少し遅れてサクラが開花し始めていますので、そのころに目覚めた女王が営巣している時期で、そろそろ創始巣から羽化した最初の働き蜂が見つかるかもしれません。

営巣開始から時間が経っていないので、働き蜂がまだ羽化していない巣や、羽化していても数が少なく、女王蜂自身も狩りをするなど巣の外に出て活動している時期でもあります。そのような個体が福岡県で発見されました。

営巣の可能性

このように福岡市とその近郊の2ヶ所でツマアカスズメバチが見つかりましたが、両地点は直線距離にしておおよそ6km離れています。ツマアカスズメバチの巣は少なくとも2つはあるということになります(ただし、すでに女王蜂が駆除されているので、その巣は短期間で消滅します)。

福岡への侵入時期

現時点では福岡への侵入経路は不明です。元々の生息場所である中国本土、侵入・定着先である韓国あるいは長崎県対馬、からの侵入が考えられます。しかし、侵入元がどこかは問題ではありません。問題は侵入時期です。

1頭のみの発見であれば、巣が1つである可能性をまず考えます。その場合、侵入時期は今年になってからかもしれません。侵入してきた個体はせいぜいごくごく少数でしょう。

しかし、現時点で女王が2頭いたとなると、去年(あるいはそれ以前)の段階ですでに侵入し、どこかで気が付かないうちに営巣に成功し、そこから次世代の新女王蜂たちが分散した、という可能性が高くなります。この場合、越冬に成功し営巣を開始したツマアカスズメバチの数は2匹どころではない、というあまり考えたくもない状況を想像しなければなりません。

定着・拡大を回避するために

5月6日までの調査の結果、ツマアカスズメバチの個体数は極めて少なく、定着後の分布拡大期には入っていない段階だと考えます。つまり侵入定着過程のごくごく初期の段階です。今なら定着を阻止することが十分可能でしょう。急ぎ拡散状況の確認調査に加え、本種の駆除作業を行う必要があります。

なお、巣は小さい状態にあり攻撃性は低いので恐れる必要はありませんが、とにかく数がとても少ない段階なので、調査しても見つけ出すのが大変な時期に当たります。本種と思われるスズメバチを見つけた方は、私か福岡県に連絡をいただけると助かります。

私(上野)宛ての連絡は「お問い合わせ」をご参照ください。

参考

ツマアカスズメバチの形態や習性などの解説は、「九州・沖縄地方のスズメバチ」内の「ツマアカスズメバチ」をご参照ください。

長崎県の対馬や壱岐に侵入したツマアカスズメバチの調査結果などは、「スズメバチ事典」内の「対馬に侵入!ツマアカスズメバチ」の項をご覧ください。

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