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壱岐の現状[2017年10月]

長崎県の壱岐で発見されたツマアカスズメバチ

壱岐産のツマアカスズメバチ

2017年9月27日付けの環境省プレスリリースにあるとおり、長崎県の壱岐市においてツマアカスズメバチと思われる種が養蜂家により2匹採集され、ほどなく本種で間違いないことが確認されました。

九州大学においても直ちに調査を実施したところ、ツマアカスズメバチを追加確認すると同時に、壱岐北部に本種が営巣している状況証拠も得ました。

一方、ツマアカスズメバチは壱岐のごく一部のみで確認され、侵入後のごく初期の段階であろうことも確認しました。

以下に2017年9月29日から30日にかけて実施した壱岐の現地調査について、もう少し詳しく解説します。

営巣している可能性大

壱岐市芦辺町において、ツマアカスズメバチを追加確認できました。追加確認した場所は、最初にツマアカスズメバチが採集された地点と、そこからごく近い地点(前地点からは数十メートル程度離れた場所)です。各地点それぞれ1匹ずつのツマアカスズメバチ(働き蜂)を発見し、うち1匹はニホンミツバチの巣に飛来していました。

ホバリングしながらミツバチを狙う

壱岐のニホンミツバチを襲う
ツマアカスズメバチ

ミツバチの巣に飛来した個体にマーキング(同一個体であることを確かめるため印をつけること)し、行動観察したところ、典型的なミツバチ狩り行動をしていることに加え、同じミツバチの巣へ繰り返し飛来することも確認しました。これはツマアカスズメバチが自分の巣と狩り場(今回はミツバチの巣)を往復していることを示すもので、ツマアカスズメバチが壱岐に営巣している証拠でもあります。

往復に要した時間からして、ツマアカスズメバチの巣は発見場所から数百メートル以内にはないと判断されましたが、調査できた個体数が1匹のみで距離の推定には至りませんでした。また時間の制約もあり、巣の確認もできませんでしたが、営巣していることは確実です。

ミツバチの巣に飛来したツマアカスズメバチ

クリックすると、ミツバチの巣の周辺でホバリングしながらミツバチの帰巣を待ち伏せしているツマアカスズメバチの動画(約36MB/MP4形式)をご覧いただけます。

壱岐への侵入はごく初期段階

壱岐市内の各地でもスズメバチ類の調査をしました。調査地域には、対馬との定期便が往復している郷の浦港と芦辺港周辺(芦辺港は今回の最初の侵入先として最有力候補となる港)を含みますが、いずれの調査地点でもツマアカスズメバチの発見には至りませんでした。

葉上で休息する壱岐産のツマアカスズメバチ

したがって壱岐市の4つの町のうち、今回の現地調査で本種が発見されたのは芦辺町のみで、郷ノ浦町、勝本町、石田町からは確認されませんでした。このことから、現時点では、ツマアカスズメバチが壱岐に広く拡散した状況にはなく、侵入後の非常に初期の段階にあり、ツマアカスズメバチの営巣もごくごく少数にとどまる範囲ではないかと推定されます。

今後も調査を継続し、ツマアカスズメバチの拡散状況を確認すると同時に、営巣場所の発見に努める予定です。行政各機関はもちろん、壱岐にお住まいの住民や養蜂家の協力を得ることで、侵入初期段階のツマアカスズメバチを根絶することは十分可能であると思われます。外来種対策においては初動を速やかに行うことが重要です。

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