上野高敏 Takatoshi UENO

九州大学大学院農学研究院 生物的防除研究施設

危険なスズメバチが我が国に侵入

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ただちに駆除すべきツマアカスズメバチ

危惧していたことが現実になりました。攻撃的なスズメバチであるツマアカスズメバチ Vespa velutina (ssp. nigrithorax du Buysson, 1905) が既に日本に侵入し、定着していることが確認されました(2013年9月9日付Yomiuri Online「気流に乗った?船に便乗?海越えてきた外来バチ」)。

対馬に侵入したツマアカスズメバチと同じ
亜種 nigrithorax(2012年、韓国・大邱市)

定着したのは長崎県の対馬。現時点(2013年9月)では対馬の北部ですが、何の手も打たなければ今後、急激に対馬全域に広がる可能性が非常に高いです。そして対馬で増えると、今度は九州本土へ分布を広げてしまうリスクが劇的に高くなるでしょう。

外来のツマアカスズメバチによる刺傷被害や生態系への悪影響など、ヨーロッパや韓国で起きていることが日本でも起ころうとしています。まだ個体数の少ないうちに本種を駆逐するべきです。

下記にもう少し詳しくツマアカスズメバチについて解説します。

現在の状況を確認するため実際に対馬へ行き、調査した結果を「対馬の現状」にまとめました。[2013年9月27日追記]

ツマアカスズメバチの女王蜂について調査した結果を「女王蜂を確認」にまとめました。[2014年5月7日追記]

ツマアカスズメバチの営巣場所について調査した結果を「営巣を確認」にまとめました。[2014年5月16日追記]

対馬に侵入したツマアカスズメバチ

マスコミやインターネット上の情報によると、2012年には対馬に侵入していたようです。

亜種名などについての記述はありませんでしたが、掲載されている画像は中国原産の nigrithorax に該当します。この亜種はヨーロッパや韓国に侵入しているものと全く同一です。

ツマアカスズメバチ原名亜種
頭部は黄色、胸部にも黄色紋を持つ
(インドネシア・バリ島産)
ツマアカスズメバチ亜種 nigrithorax
頭部と胸部が黒いのが特徴
(2012年、韓国・大邱市)
カシ類の樹液を舐めに飛来した個体
(2012年、韓国・大邱市)

筆者が2012年に韓国の大邱市を訪れたとき、既に本種が数少ないながらもクヌギの樹液に飛来しているのを観察し、とても驚きました。

ヨーロッパに侵入し大問題となっていることは随分以前から知っていましたが、どちらかというと日本にはあまり関係のない話かなと考えていました。ところがそれは大きな間違いで、近い将来、福岡市に侵入してくるリスクがとても高いと大邱市のクヌギ林の中で感じたのです。

2012年の夏に九州沖縄地方のスズメバチについて簡単にまとめたのですが、そのとき、今後日本への侵入を警戒すべき種としてリストに挙げました。しかし、それを書いていた時期には既に対馬へ侵入していたわけです。

攻撃性

本種は非常に攻撃的で、巣を一度刺激すると、執拗に人間を追尾することが知られています。東南アジアでは精度の高いデータはないものの、刺傷例が多数知られており、死者も出ているほどです。また対馬でも、既に本種による刺傷例が出ているようです。

韓国では中国から侵入したと思われる本種が爆発的に個体数を増やし、現在も分布を拡大中です。都市部で最も刺傷例の多いスズメバチになっています。しかし、この外来種の持つ潜在的な危険性について、我が国ではあまり認識されていないようです。

韓国のツマアカスズメバチ

2003年8月に初記録となる標本が採集されています(Kim et al. 2006)。まず貿易港である釜山に侵入し、その後、韓国の南西部に急激に分布を拡大しています。釜山の都市部では個体数が激増し、発見から7年後の2010年の調査では、捕獲されたスズメバチの4割近くを占めるに至っています(Choi et al. 2012)。

Choiらが発表したデータによると、2010年には、それまで釜山市で最も多く見られたケブカスズメバチ V. simillima が激減しており、代わりにこのツマアカスズメバチが、外来種であるにもかかわらず最優占種になっていることが明らかにされています。さらに釜山市の都市部に限ると、発見されたスズメバチの7割以上がツマアカスズメバチであったこと、同時に、スズメバチ刺傷例の4割以上が本種によるものであることも記述されています。

リスク回避のために

自然環境的に日本に近い韓国で起こっていることは、日本でも当然起こり得ることです。一度日本本土に侵入してしまえば、我が国の都市部でもツマアカスズメバチが増え、本種に刺される人が激増するリスクが高いわけです。また生態系への悪影響も出るでしょう。

現時点では対馬という島での話ですが、もはや猶予などなく、すみやかに外来スズメバチの駆逐に取りかかるべきです。

生態

インドネシア・バリ島産の原名亜種

ブラシノキの花に飛来した個体。

甘い蜜を舐めにしばしば訪花します。

インドネシア・バリ島産の原名亜種

ミツバチの働き蜂は好みの獲物です。

ミツバチの巣の入り口付近でホバリング(空中で待機)し、帰巣してきた飛翔中のミツバチを巣前で捕獲します。

インドネシア・バリ島産の原名亜種

帰巣してきた飛翔中のミツバチのみを狙い、巣の入り口付近に静止している個体は襲いません。

ベトナム・ダラット産の亜種 varians

ヌルデの花に飛来する各種昆虫類を物色中。

捕獲した獲物は幼虫の餌(タンパク源)として巣に持ち帰ります。

ベトナム・ダラット産の亜種 varians

ヌルデ花上でハナバチの仲間を捕獲した瞬間。

ベトナム・ハノイ近郊産の亜種 varians

花上(樹種不明)で昆虫を捕獲し、噛み砕いている個体。この後、巣へと持ち帰ります。

形態や習性などの詳しい解説は、「九州・沖縄地方のスズメバチ」内の「ツマアカスズメバチのページ」に記載しています。

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