上野高敏 Takatoshi UENO

九州大学大学院農学研究院 生物的防除研究施設

九州・沖縄地方のスズメバチ

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オオスズメバチ

和名 オオスズメバチ
学名 原名亜種 Vespa mandarinia Smith, 1852
日本亜種 Vespa mandarinia japonica Radoszkowski, 1857
英名 Asian giant hornet
(日本のオオスズメバチは Japanese giant hornet とも呼ばれる)
原産地 原名亜種 中国(浙江省寧波)
日本亜種 日本(詳細な産地は不明)

分布

夏の暑い時期は特に、
水を集めに来る個体を見かける

オオスズメバチは、インドから東アジアにかけて分布する大型種です。4亜種からなり、日本産は亜種 japonica Radoszkowski, 1857。

なお、日本産に対して ssp. latilineata Cameron をあてたことがあったようですが、現在では japanica のシノニムとされ、この亜種名は使用されていません。

日本本土に広く分布し、北海道、本州、四国、九州と周辺の島に見られます。我が国における本種の南限は屋久島と種子島になり、南西諸島(トカラ列島以南)には分布しません。韓国南部産も日本亜種とほとんど変わらないように見えます。

形態

撮影者(私)を威嚇する個体。
ヤブガラシに訪花したオオスズメバチの雄

世界最大のスズメバチ(そしておそらく世界最強のスズメバチ)であり、性格はとても攻撃的です。

強力なアゴと毒針を持っています。毒性は強く、おまけに毒液の量も多いため、何カ所も刺された場合に受ける打撃はとても大きなものとなります。

女王蜂は5センチに達することがあります。

働き蜂(ワーカー)で3〜4センチくらいと、大きさにかなりの個体差があります。腹部は伸び縮みが激しいせいもあります。また、乾燥標本と生きているときでは、大きさに違いが出ることもあります。

雄ではしばしば胸部前半部に黄色の紋が発達します。

その大きさと荒っぽい性格から、ヨーロッパでも非常に有名な種類です。向こうには蜂がとても好きな人が結構いて、日本産のでかいオオスズメバチは人気です…。

攻撃性

排他的な性格だが、同じ巣仲間同士は仲がいい

非常に攻撃的で獰猛なスズメバチです。秋に集団で人を襲うことがあり、非常に危険な種類です。

目が良く、動く対象に対して敏感です。毒も日本産の蜂の中では最も強いとされます。

実際には、マウスを使った毒性試験により、セイヨウミツバチの方が毒性が強いという結果が得られているようです。この結果は、『同じ量で比較した場合の毒の強さ』の話になるのですが、『刺された場合にどれくらいのダメージを受けるか』は、単純に毒性だけでは決められません。毒性の強さと打ち込まれた毒液の量との兼ね合いで決まってきます。

スズメバチの場合、毒液の中に痛みを感じさせる成分が多く、また、ミツバチなどよりも多くの毒液が入るため、刺された場合の症状がより激しくなると考えられます。

習性

巣は主に土中や木の根元の洞に作られます。それ以外では、地面に面した壁の割れ目や放棄されたタンスの中など。基本的に地面周りに営巣し、樹上など目線より高い場所には巣を作りませんが、巣は巨大になります。

土を掘った際にでたペレット状の土を巣の入り口周辺に捨てますので、それが巣を発見するよい手がかりになります。

クヌギの樹液に群がる働き蜂たち

樹液を好み、夏から秋にかけて樹液の出ている広葉樹に集まっている場面をよく見かけます。

同じ巣仲間で樹液の出ている場所を独占している場合があります。秋が近づくと樹液が出る木が減るため、このような餌場を独占しようとする個体が増えてきます。

また、熟した果物や花の蜜を炭水化物源として利用します。

他の蜂類同様、甘いものも大好き しばしば花にも集まる

単独で狩りもしますが、同じ巣仲間と共同で集団攻撃をかける習性を発達させています。

集団攻撃の対象となるのはミツバチ、スズメバチ、アシナガバチといった他の社会性の蜂です。セイヨウミツバチの巣を集団攻撃で全滅させてしまうこともあるため、養蜂業への被害が問題になります。

その一方で、逃げ出したセイヨウミツバチが我が国の野外環境下で定着できない大きな理由ともなっています。外来種セイヨウミツバチが過度に増えすぎると、土着ハナバチ類への悪影響が懸念されますが、それを押さえるというプラスの面があると考えられているわけです。

同様に、都市近郊でキイロスズメバチやコガタスズメバチが増加した理由の1つが、おそらくオオスズメバチの減少にあると思われます。

本種に特異的な集団攻撃ですが、これには3つの段階があります。例えば、ターゲットがミツバチの巣である場合、(1) 偵察蜂による餌場(ミツバチの巣)の確認と餌場マーキングフェロモンの塗布、(2) 抵抗勢力(ミツバチの働き蜂)の除去、そして (3) 餌場の占有(巣内の幼虫をすべて略奪)という過程を経ます。

このような集団攻撃の習性を持つのは、オオスズメバチとその極近縁種である Vespa soror だけです。

亜種

オオスズメバチの亜種は次の通り。

1. ssp. mandarinia Smith(原名亜種)
分布:中国
腹部の黒帯は細め。胸部の色は赤みを帯びています。中国南部(香港など)にも分布しますが、むしろまれで、それは極近縁種である V. soror(南部に行くほど多い)と競合していることと関係しているようです。
2. ssp. nobilis Sonan
分布:台湾
腹部は褐色の部分が広がり、黄色の縞模様は非常に細いです(腹端除く)。
3. ssp. magnifica Smith
分布:インド(北部)、ネパール、中国(西部、雲南)、タイ(北部)、ミャンマー、ラオス、ベトナム(北部)
腹部の黒褐色部が著しく発達した亜種で、ぱっと見た目、あまりにも黒っぽいのでオオスズメバチに見えません。

なお、Vespa soror Buysson はミャンマー、中国、ラオス、ベトナムから知られ、かつてはオオスズメバチの亜種扱いでしたが、ラオスや中国の南部では V. mandarinia と混棲することと、安定した形態差が認められることから、独立種扱いするのが妥当とされます。一見すると、ツマグロスズメバチのような色彩パターンです。

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