モンスズメバチ
和名 | モンスズメバチ | |
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学名 | 原名亜種 | Vespa crabro Linnaeus, 1758 |
日本亜種 | Vespa crabro flavofasciata Cameron, 1903 | |
英名 | European hornet | |
原産地 | 原名亜種 | ヨーロッパ |
分布
本種はユーラシア大陸に広く分布し、日本列島は分布域の東端にあたります。我が国では、北海道、本州、四国、九州の平野部から低山帯に棲息します。
地域ごとに特徴的な斑紋パターンを示すため、多数の亜種が記載されており、日本産は亜種 flavofasciata Cameron(『黄色い帯のある』の意)に属します。
学名
休息する雄蜂
モンスズメバチ Vespa crabro Linnaeus は、リンネにより18世紀に記載されました。世界で初めて学名が付けられたスズメバチ属(Vespa)の種です。同時に V. tropica も記載されており、順番でいえば tropica の方が早いのですが、こちらの種は別属で記載されていました。それ以外では、クロスズメバチ属の2種が同時期に命名されています。
その学名である Vespa crabro ですが、世界で最初に命名されたスズメバチゆえ、なんと『Vespa』は『蜂』の意で、『crabro』は『スズメバチ』の意です。学名的には、これこそスズメバチってところでしょうか。
ヨーロッパを代表するスズメバチであり、かつ同地域最大の社会性ハチ目昆虫となります。
形態
女王蜂は3センチ前後、働き蜂は2.5センチ前後の大きさで、スズメバチとしては小型~中型の種類です。
腹部の波を打った黄色い模様が特徴的なスズメバチとなります。キイロスズメバチの黒化程度の強い個体と区別がつきにくいことがあります。
攻撃性
雄蜂には針がないため、
手で捕まえても刺されることはない
ヨーロッパでは、本種に3箇所刺されると死ぬと信じられていたそうです。実際にはそんなに毒性は強くありませんが、過度の恐怖心から巣を片っ端から除去した結果、個体数の著しい減少を引き起こしてしまった地域があり、ヨーロッパの一部では絶滅危惧種となっています。
現在では、国によって保護種となっています。ドイツでは、本種を殺すと最大で5万ユーロ(500万円以上!)の罰金だそうな。
習性
広葉樹の樹洞に作られた巣
里山的な環境で見かける種類で、夏期にクヌギなど広葉樹の樹液を見て回れば、その棲息を確認することができます。個人的には、里山の環境レベルを反映する指標種として利用できると考えています。
自然環境下では、岩と岩の隙間、木の洞など、人為的な環境としては天井裏、壁の隙間などに営巣します。引っ越しをするタイプのスズメバチです。
多くのスズメバチは夕方には活動を止めますが、モンスズメバチだけは辺りが暗くなっても活動を続けることが知られています。夜間、クワガタムシを採集していた人が本種に刺された事例があります(ちなみに、東南アジアにはヤミスズメバチという夜行性の種が3種知られています)。
食性
夏の時期、広葉樹の樹液に集まってくる個体をよく見かけます。また熟した果物や花の蜜を餌とします。
落ちた柿に飛来した個体
落ちた柿の果汁を舐める新女王蜂
柿の果汁を舐めにきた雄蜂
ヤブガラシの花に訪花して蜜を舐める働き蜂
日本のモンスズメバチも節足動物の捕食性天敵となりますが、特にセミを好みの獲物とすることが知られています。
我が国では多くの場所でむしろ数が急激に減ったスズメバチになる思うのですが、その理由の1つに、ハルゼミ(他のセミとは異なり、春から初夏にかけて成虫が出る)の個体数減少が挙げられています。
獲物(昆虫)を探索する働き蜂
セミ以外では、クモ、バッタ、チョウ、ミツバチなどを狩ることが知られています。図の獲物を探している個体は、ツマグロヒョウモンを追いかけ回していました(結局、獲物には逃げられましたが)。
一方、ヨーロッパでは様々な昆虫を狩るとされています(ユーロ圏はそもそもセミがいないか、いても少ない)。
あれほどの広大な分布を有している以上、それぞれの地域に適応した性質を進化させているのでしょう。
亜種
本種はユーラシア大陸に広く分布します。10亜種程度が知られていますが、個体変異があることと地域によっては中間型が出るので、亜種の区分はしばしば明確でないようです。私もこの辺の分類はよくわかりません…。
- ssp. crabro Linnaeus(原名亜種)
分布:ヨーロッパ北部~シベリア (スカンジナビア、ロシア、シベリア南東部、満州北部、サハリン、スウェーデン、ウスリーなど)
- ssp. vexator Harris
分布:イギリス、ヨーロッパ南部産(頭部が黄色)
- ssp. vulgata Birula
分布:朝鮮半島?、北米(アメリカとカナダにも侵入)
- ssp. germana Christ, 1791
分布:ヨーロッパ西部(ドイツ、フランス、スイス、スペイン、イタリア北部、ポーランド、ハンガリー、オーストリアなど)
19世紀、北米に導入されました。また、オーストラリアやニュージーランドにも侵入定着しています。
- ssp. crabroniformis Smith, 1852
分布:アジア南東部?(上海、南京、四川やタイなど)
- ssp. borealis Radoszkowski
分布:ロシア(レニングラード近郊)
- ssp. oberthuri du Buysson
分布:中国中部~南部(四川、雲南、極端な型の可能性)
- ssp. altaica Perez, 1910
分布:シベリア南西部(ウラル~バイカル湖)、アルタイ山脈、モンゴル西部
- ssp. caspica Perez, 1910
(= meridionalis, transcaucasia, transcaspia)
分布:カスピ海周辺、イラン北部
- ssp. chinensis Birula, 1925
分布:中国
- ssp. gribodoi Bequaert
(= ssp. vexator?)
分布:イングランド南部、ウェールズ
- ssp. birulai Bequaert
(= chinensis?)
分布:中国北東部、朝鮮半島?
四川省では crabroniformis と共存? あるいは中間型?