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キイロスズメバチ

和名 キイロスズメバチ
学名 Vespa simillima xanthoptera Cameron, 1903
英名 Japanese yellow hornet
原産地 日本(記載は『Michzusawa』。日本のどこでしょう?)
原名亜種 V. simillima simillima Smith, 1868(ケブカスズメバチ)

分類

キイロスズメバチは、まず独立種として記載され、その後はケブカスズメバチの亜種とされてきました。しかし、両者の形態差は分布の境界付近では曖昧になることと、個体変異もかなりあることから、明確な区別が困難な場合があるようです。

ここでは、日本に産する本種を、北海道産は原名亜種ケブカスズメバチ V. simillima simillima Smith, 1868 とし、本州以南産はキイロスズメバチ(ケブカスズメバチ亜種) V. simillima xanthoptera Cameron, 1903 としておきます。

北海道産のケブカスズメバチ

ランタナの実をかじるキイロスズメバチ

キイロスズメバチはケブカスズメバチの亜種扱いなのに独立した和名を持ちますが、これは両者が長らく独立種扱いされていたことにもよります。またキイロスズメバチという名称を大多数の昆虫関係の人が使用してきたという歴史もあります。

ここではあえて混乱を招くようなことをせずに、従来通りの和名と分類基準を使用します。なお、『xanthoptera』は『黄色い羽』の意。種名の『simillima』は『似た』という意味です。

分布

原名亜種 V. simillima Smith は、原産地が北海道で、分布圏は北海道、ロシア(沿海州、サハリンなど)、朝鮮半島、中国北部です。大陸(中国)での南限は中国北東部の遼寧(りょうねい)省あたりです。英名は、単に yellow hornet と呼ばれるようです。黄色の斑紋が少なく、やや小振りです。

一方、ssp. xanthoptera Cameron は、本州、四国、九州(と周辺の島々)に分布し、日本での南限は屋久島です。

最近(2006年)、台湾からも記録されましたが、斑紋パターンは日本の本州産(中部低地産)に一致するとのことで、日本(?)からの移入種と考えられています。

スズメバチの中では分布圏が狭く、東アジアに限定された種になります。なお、カナダのブリティッシュコロンビア州に導入されたことがあるようですが、定着はしなかったと考えられています。

形態

体全体的にオレンジ色味の強い黄色です。飛んでいるときは縞模様のハチというよりは、ほぼ濃い黄色一色のハチに見えます。その特徴的な色彩から他のスズメバチとは一見して区別ができます。

小型のスズメバチで、女王蜂は2.5センチからせいぜい3センチ弱、働き蜂は2センチから2.5センチ程度です。

攻撃性

体は小さいですが、オオスズメバチに次いで攻撃的です。『次いで』と書きましたが、巣に近づいただけで攻撃してくることがあるほど、攻撃性が強い蜂になります。

秋の行楽シーズンには本種とオオスズメバチに対する注意が特に必要ですが、キイロスズメバチの方が都市部や近郊の人家に近い環境に多い種類であるため、オオスズメバチよりもはるかに人と接触する機会が多くなります。事実、刺傷件数が最も多いスズメバチの1つで、最近ニュースになった刺傷事件のほとんどが本種による被害です。

また、巣は大型化し、働き蜂が千匹を超えることも珍しくない種であるため、うかつに本種の巣を刺激した場合には、多数の働き蜂から一斉攻撃されることになりかねません。人との距離が近づきすぎると思われる場所にある巣は、なるべく早い時期に駆除するのが良いでしょう。

習性

巣は、樹木の茂みや木の洞の中、岩の割れ目、といった自然にある環境に作られるだけでなく、軒下、屋根裏、橋の下、看板の裏、ゴミ箱の中など、我々の身近に存在する人工的な場所にもよく営巣します。

秋に羽化した新女王蜂は交尾後、十分な栄養を蓄え越冬体制に入ります。越冬場所は主に柔らかめの朽ち木の中です。

越冬女王の活動開始時期は5種のスズメバチの中では最も早く、3月の終わり頃に既に活動を開始した女王蜂を見かけたことがあります。一方、営巣活動が終了するのは最も遅く、11月に入っても活動中の巣が見られます。

営巣開始当初は閉鎖的な空間に巣を作りますが、働き蜂が増えてくると、より広い空間を求め巣の引っ越しを行うことが非常に多いです(引っ越し率は7割を超えるらしい)。したがって、いきなり多数の蜂が現れ、みるみるうちに蜂の巣が作られることがあります(例えば軒下などに)。

新女王の産出ができる巣は、少なくとも働き蜂が300匹は必要で、巣の規模が大きく、働き蜂の個体数が多い巣ほど、新女王(と雄バチ)の産出数が増加します。1つの巣で誕生した新女王の数がなんと1,600匹を上回っていた事例も報告されています。

食性

キイロスズメバチは空中を飛翔している昆虫を頻繁に狩ります。ハエ目の昆虫(成虫)を好みますが、それ以外の昆虫も狩ります。例えばミツバチの巣の入り口周辺で飛翔しながら待機(ホバリング)し、帰巣してきたミツバチを空中で捕獲するのです。

ホバリングしながら帰巣するニホンミツバチを狙う個体(ミツバチ側は警戒態勢)

飛翔中のニホンミツバチを捕らえた個体
 

スズメバチは目が良く、動く物に対しては特に敏感です。そもそも獲物を狩るときには飛翔している昆虫に狙いを定め、それを空中で捕獲するという習性があるわけで、動きの速い物に対して敏感な理由が分かります。

ヤブガラシに訪花した働き蜂

なので、知らずに巣に近づき蜂から警告を受けた場合、うかつに蜂を手で追い払ったり、走って逃げるなど急な動きをしたりするのは、蜂を刺激するので止めた方が良いわけです。

また、飛んでいる昆虫以外の獲物もよく狩りますし、死んだ魚や蛙の肉をあさることもよくあります。

甘いものも大好きで、果実、花蜜、樹液を好んで摂食します。

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